2011/11/13

業革シンポジウムを終えて

<コラム編4>業革シンポを終えて

日弁連第17回弁護士業務改革シンポジウムで得たことは,今後の原総合法律事務所のマーケティングに生かし,その結果は,このブログでご報告することになると思いますが,まずは取り急ぎの感想です。

第一に,このシンポジウムを通じて,確信したのは,マーケティングは人権課題だということです。
原総合法律事務所の場合,その理念は,「基本的人権の擁護と社会正義の実現」を軸に,「いつでも,どこでも,だれにでも 上質な法的サービスを。」届けようというものですから,そのマーケティング戦略も当然に「基本的人権の擁護と社会正義の実現」を目指すものでした。
しかし,考えてみれば,全ての弁護士が,「基本的人権の擁護と社会正義の実現」を使命としているのですから,そこでまっとうなマーケティング戦略を考えれば,「基本的人権の擁護と社会正義の実現」が軸となるのは当然です。意識的か,無意識的かの違いはあれ,第1分科会の基調報告はもちろん,各パネリストの発言も,「基本的人権の擁護と社会正義の実現」が軸にあったと感じました。
そのことを再認識させられたのが,懇親会での宇都宮日弁連会長とのちょっとした会話でした(ちなみに,そのときの様子は,マネージャーのブログを→「シンポジウム(「ぼんやり振り返り」)のススメ」)。宇都宮会長も,第1分科会を一部ご覧になっていたようで,業務改革やマーケティングの文脈で語られる過払いが,一連の最高裁判決以前の消費者問題を人権課題と位置付け取り組んできた弁護士たちの戦いの成果であることを話しておられました。それは,同じように,当時,困難だった過払事案に取り組んできた原総合法律事務所の思いでもありました。(その関係で,宇都宮会長とは以前から面識があったわけです。)
そこで,これからは,マーケティングが人権課題であることを明確に意識し,打ち出していきたいと思います。

第二に,しかし,依然として,弁護士にマーケティングの意識は薄いということ。それなりの意識を持って参加されたと思われる第1分科会の皆さんにとっても,刺激的を通り越して,衝撃的な内容だったかもしれません。
とりわけ,他の弁護士のパネリストが全員50期代という中で,40期の私には,経験をふまえた原則的な発言が求められていると理解しました(原則的というのは,前で述べた,マーケティングも「基本的人権の擁護と社会正義の実現」の視点で取り組まなければならないということです。)。
しかし,その発言は,「普通」の弁護士の認識とはかなりかけ離れたものになっていたようです。原総合法律事務所の中で業務していると,あまりに当たり前なことで,「普通」の弁護士の認識との違いに気がつかないというのが本当のところです。
このシンポジウムが転機になったといわれれば嬉しいのですが。

第三に,やはり,日弁連のレベルはすごいということ。
第1分科会以外の気になる分科会の基調報告書を読んでいるところですが,まずは第10分科会です。高齢社会対策本部が担当した分科会で,「高齢社会におけるホームロイヤーの役割~高齢者へのトータルな支援を目指して~」というタイトルの分科会です。
その問題意識は,高齢者の財産管理,財産承継(遺言など)に弁護士が十分な対応をしていない現状をふまえ,福祉・医療専門職や専門機関の連携の司令塔的役割を弁護士が担い,高齢者をトータルかつ継続的に支援する「ホームロイヤー」を広めようというものです。
実は,原総合法律事務所でも,同じ問題意識から,新しいマーケティング戦略として,原総合法律事務所を核とした各専門家のネットワークを作ろうと考えていたところでした。「ホームロイヤー」は,まさに原総合法律事務所のいう「かかりつけ弁護士」です。
それをマニュアル化し,弁護士会として広げようという議論が始まっていたことは知りませんでした(長崎県弁護士会の会長に就いた後,日弁連の高齢者の委員会や高齢社会対策本部から離れてしまったもので。)。
また,最後についているケーススタディも使えそうです。

取り急ぎの感想でした。