2011/09/28

新聞にまた掲載されました!

<番外編1> 新聞にまた掲載されました!

06で,事務所の取組みが,広告ではなく,記事として掲載されれば,その効果は広告とは比較にならないことをお話ししました(06タイプⅡ)。

そして,原総合法律事務所では,今年の8月から交通事故専門の相談窓口をスタートし,3回まで相談を無料としましたが,この意義を含めサービスの紹介を各メディアに投げ込んだところ,ある新聞が記事として取り上げてくれたことを紹介しました。そのときは,長崎新聞でしたが,さらに,先日,毎日新聞も記事として取り上げてくれました。
この毎日新聞の記事が,今日は,ウェブ上でも紹介されました。

毎日jpはこちら(リンク切れです)
Yahoo!ニュースはこちら(リンク切れです)

リンク切れする前に,取り急ぎのご紹介です。

なお,記事として取り上げてもらう意味や,どのようにして記事にしてもらうかなどは,改めてまとめる予定です。

09 HPのアクセスを増やすために

09 広報を考える4-HPへのアクセスを増やすために

広報として,もっとも直接的なのが,電話帳やHPです(06タイプⅢ)。
実際に法的なトラブルを抱えた人が,どこかの法律事務所に相談に行こうと思って見る広報媒体ですから,「法的サービスにアクセスできていない市民,中小企業に対し,…法的サービスを提供すること」を理念とする原総合法律事務所(02)にとって,ここで優位にたつことは決定的に重要です。
ちなみに,原総合法律事務所のここ1年くらいの新件相談の広報媒体別の数字を見ると,HPが約13%,電話帳が約10%となっています(前提として,相談に至るルートの把握と分析が不可欠です。)。
HPを使いこなせない人にとっては,電話帳が引き続き重要な広報媒体であり続けると思いますが,今後,HPの比重が更に増えてくることは間違いありません。

ところが,実際の法律事務所のHPを見ると,ただ立ち上げたというだけで,はたして有効に機能しているのか疑問に思うHPが数多くあります。
そこで,今回からは,HPについて考えてみたいと思います。

HPが有効な広報媒体として機能するためには,次の2つの条件を満たす必要があります。
1) まず,多くの人にアクセスしてもらうこと
2) 次に,他の事務所と比べて,ここに相談に行こうと考えてもらうこと
今回は,まず1)についてです。

どんなに良くできたHPでも,まずアクセスし,見てもらえないことには全く無駄な広報になってしまいます。
そこで,まず,多くの人にアクセスし,見てもらわなければならないのですが,HPにアクセスするルートとしては,既に事務所の名前や弁護士の名前を知っていて,事務所名や弁護士名で検索してたどり着くルートと,相談したい問題に関わるワードで検索してたどり着くルートがあります。

事務所名や弁護士名で検索してもらえれば,後で述べるSEO対策など行うまでもなく,HPにたどり着いてもらえます。そのために,06でふれたように,テレビ・ラジオのCM,新聞・広報誌の広告,電車・バスの広告等が意味を持つのです(06タイプⅠ)。
まず重要なのは,地域での知名度を高めることです。
そのためには,相当な期間,種々の媒体で平行して広報を打ち続けなければなりません。しかも,それらのイメージが統一されていなければ,印象にはなかなか残りません(07)。最小の費用で,最大の効果を上げる工夫が求められるのです。
ちなみに,原総合法律事務所では,後記のSEO対策に取り組む前は,HPのアクセスの5割近くが事務所名や弁護士名を検索してのアクセスでした(前提として,HPのアクセス解析が不可欠です。)。アクセス数は,正直なところ,伸び悩んでいましたが,知名度はそれなりに高くなっていたと評価していたところです。

しかし,事務所名や弁護士名を知らない人たちは,自分の抱えている問題に関わるワードで検索をするのですから,それらのワードで検索の上位に上がってくることが必要です。そうでなければ,当事務所の理念である「法的サービスにアクセスできていない市民,中小企業に対し,…法的サービスを提供すること」を実現することはできません。
問題を抱えている人たちですから,かなり念入りにHPを探してもらえるとは思いますが,やはり上位にあるHPほど見てもらえる確率は高くなります。目指すのは,1ページ目です。

そのために必要なのが,ブラックボックスと言われるSEO(検索エンジン最適化)対策です。
SEO対策に関する本やHPは数多いのですが,専門家でない法律事務所の弁護士や職員では,理解もできないし,対応は無理だとあきらめていませんか。
確かに,SEO対策を専門とする業者に依頼すれば,かなりの費用はかかるのでしょうが,一定の成果を上げられるのかもしれません。しかし,その費用は,私たちの事務所の規模では,負担が大きいですし,その効果もブラックボックスだと言われると,なかなか依頼に踏み切ることができないのが実情ではないでしょうか。
原総合法律事務所でもそうでした。

しかし,遅すぎた感はありますが,最近になって,事務所内でSEO対策をチームを作って検討してみたところ,多くのSEO対策が一致して重要だというのは,適切なキーワードをタイトルに持って来るということでした。ほかにも,いろんなSEO対策が紹介されていましたし,やってはいけないことも紹介されていましたが,私たちができるのは,簡単なことだけです。

そこで,第1に,まず,これをやってみることにしました。ただし,タイトルは,HPの見えるところにはありません。HTMLのtitleに記載する必要があります(このあたりの技術的な点は,説明困難なので,各自,研究してください。)。
その場合,キーワードをどう散りばめるかも配慮が必要で,各事務所毎に,どのような事件を狙うかという観点から決めていくことになります。

第2に,これも多くのSEO対策が指摘していますが,どれだけ他のページからリンクされているかも,評価の対象となるようです。
そう言うと気付かれるかと思いますが,実は,このブログを立ち上げた目的の一つに,原総合法律事務所のHPにリンクをはるという点もあったのです(その意味で,前後して,交通事故の専門のHPも立ち上げましたし,マネージャーのマネジメントのブログ事務局のブログも立ち上げました。さらに,現在,別のHP立上げも準備しています。)。

そういった簡単なSEO対策を行った結果,現在では,原総合法律事務所のHPへのアクセスの7割は検索エンジンからのもので,キーワードも事務所名や弁護士名ではなく,「長崎 債務整理」といったキーワードでの検索が目立って増えてきています(繰り返し言いますが,HPのアクセス解析が不可欠です。)。それも,主なキーワードの検索で,ほぼ1ページ目を実現したからです。もちろん,アクセス数自体も増加しています。
SEO対策に取り組む前,アクセスの5割近くの検索エンジンからのアクセスのうち,ほとんどが事務所名や弁護士名を検索してのアクセスだったことを考えると,当事務所の理念である「法的サービスにアクセスできていない市民,中小企業に対し,…法的サービスを提供すること」に適合した方向に向かっているということができるでしょう。

2011/09/23

08 統一されたイメージの具体例

08 広報を考える3-統一されたイメージの具体例

前回,広報には「統一されたイメージ」が必要だと言いました。
そこで,具体的に原総合法律事務所の広報がどのように統一感を持っているのか見てみましょう。
(最初に自白しますが,時間がないので,ともかく1回分を写真で済まそうという魂胆です。)

以前は,ブルーをベースにトリコロール(青,赤,白)が基調でした。
例えば,以前のリーフレットです。具象(長崎の風景)も入れ,長崎を打ち出し,柔らかいイメージでまとめています。


そのころの封筒です。同じ色調,同じイメージで作っています。


この色調をベースに,ポスターも作っています。
ポスターをゆっくり読む人などいませんから,一瞬のインパクトが重要です。ロゴマークを強調し,それでインパクトを与えようという狙いです。
したがって,ここでは,具象(風景等)も入れていません。


最近は,よりシャープなイメージを与える狙いで,色調をよりシンプルにしています。グレー基調で黒とアクセントの黄色しか使っていません。また,抽象的なイラストも同様の狙いからです。ロゴマークも,2色から1色になっています。
そんな最近のリーフレットです。


同じイメージの封筒です。シャープさを出すために,横使いにしています。


電話帳も,あえて多色刷りは使わず,一色でインパクトを与えるデザインをという狙いです。
ただ,電話帳は,じっくり読んで他事務所と内容を比較されるので,文字情報は比較的多めです。


このように「統一されたイメージ」で全ての広報を行うと,広報は有効に機能します。
なお,そのコンセプトが不変ではないことも,理解してもらえたでしょうか。

2011/09/21

07 統一されたイメージ

07 広報を考える2-統一されたイメージ

今回は,具体的な広報の媒体毎の検討に入る前の,広報全体を通じた「統一されたイメージ」というテーマです。
前回(06)の最後に,広報にはいろんな媒体があるけれども,「統一したイメージのもと,これらを平行して,相互に関連付けて行わなければ効果は十分に表われないでしょう。」と結びました。

広報は,いろんな媒体を平行して行わなければ,効果はなかなか表われません。これだけをやっておけば良いという特効薬はありません(もちろん,テレビCMを繰り返し流す効果は絶大ですが,私たちの規模の事務所では,費用的に無理なので,潔くあきらめましょう。)。
そこで,いろんな媒体で広報を行うのですが,そのとき,同じ事務所のものだと分からなければ,複数の広報を打つ意味がありません。例えば,ホームページや電話帳を見たとき,「あぁ,あの市の広報誌で見た事務所だ。」と分からなければ,その広報誌の広告は無駄だったことになります。
全ての広報に「統一されたイメージ」が必要な理由です。

広報は,その媒体毎に取り扱う業者が違います。例えば,新聞,広報誌等であれば,各紙・誌毎に広告代理店が違います。リーフレット等であれば,印刷会社がデザインの案を作ります。ホームページであれば,ホームページの制作会社が,電話帳であれば,NTTがデザインの案を作ります。
ところが,いくら詳しくイメージを伝えたつもりでも,そのイメージが伝わっていなかったり,あるいは善意に修正を加えられ,イメージどおりのデザインにはなかなか仕上がってきません。あるいは,そもそも,デザインは全て業者任せにしたりしていませんか。
ここで,イメージがバラバラだと広報費の少なくない部分が無駄になってしまうのです。

ただ,前提として,我々の側に,「統一されたイメージ」があるのかが問題です。
法律事務所の弁護士やスタッフは,デザイナーではありませんが,自分の事務所の広報には,その文章(キャッチコピー)だけではなく,デザインにも責任を持つべきです。
事務所の中を見渡してみましょう。きっと,センスのいい人がいるはずです。その人をデザイン面の担当者に置きましょう。

さて,そこで,具体的にどのようにイメージを統一していくのか,原総合法律事務所の例です。

まず,ロゴマークです。このブログの右上に小さいのがありますが,大きいのは,原総合法律事務所のHPを見てください。
まず,人目をひくこと。かつ,印象に残ること。更に事務所の名前を連想することが必要です(家紋のイメージですね。)。
できれば,ロゴマークぐらいは,プロのデザイナーに依頼し,納得いくものを作るべきでしょう。原総合法律事務所も,ロゴマークは,そうやって作っています。
そして,あらゆる媒体にロゴマークを使い,浸透を図りましょう(原総合法律事務所では,一面の半分くらいロゴマークという広報もやってみました。)。
今では,結構,この「HLO」をアレンジしたロゴマークは,地元では知られてきているようです。

色調も統一しましょう。
むやみな多色使いは効果的ではありません。原総合法律事務所の場合,当初は,ブルーをベースにトリコロール(青,赤,白)と黒以外は使わないという大枠を決めていました。現在は,より単色にシフトし,もっと色使いをシンプルにしています(例えば,グレーをベースに黒と黄色だけとか。)。
ちなみに,原総合法律事務所のマネージャーは,このあたり結構得意とするところなので,いずれマネージャーのブログにもアップされるのではないかと思います。

フォントも統一すべきです。
明朝とゴシックをベースに,どうしても強調した部分があれば,もう1フォントぐらいにおさめないと,見ていて統一感がなく,印象が散漫です(もちろん,数字やアルファベットは明朝やゴシックだとダサイので,英数字のいい感じのフォントを使いましょう。)。

デザインはシンプルなものが好印象です。
原総合法律事務所の場合,直線がベースで,曲線はできる限り使わないようにしています。
その関係で,背景に具象(風景など)は使いません。以前は,地元密着を強調しようと,長崎らしい風景なども使っていましたが,今は,あえて長崎らしさは払拭しました(その狙いはまたいつか。)。

文章(キャッチコピー)もシンプルで,核心をつくものが必要です。文字ばっかりというのは論外です(あえてデザイン的に「文字ばっかり」を狙ったものは別ですが。)。
キャッチコピーを考えるのも,才能の面がありますが,原総合法律事務所では,キャッチコピーは,よく全スタッフに公募します。山のように案が出てきて(事務局ブログの改善提案のノリです。),その中から選んでいくと,かなりいいものが作れます。


こういった広報のイメージ作りは,メジャーな広告代理店に依頼すれば,もちろん,それなりのものが仕上がってくるのでしょうが,びっくりするぐらい高価(なはず)です。そんな余裕は私たちの事務所にはないので,ここは事務所のスタッフのセンスを磨き,事務所内での自給自足を目指すのが,私たちの予算の中での身の丈に合ったやり方でしょう。

2011/09/19

06 広報の効果のとらえ方

06 広報を考える1-効果のとらえ方

原総合法律事務所の理念は,「法的サービスにアクセスできていない市民,中小企業に対し,…法的サービスを提供すること」ですから,広報が重要なことはいうまでもありません。これまで顧問としても,プライベートでも,弁護士と全く関わりがない市民,中小企業を法律事務所につなぐのが,広報の役割です。
このことを,原総合法律事務所のマーケティング戦略では,「(b) 質の高い法的サービスを提供できるという情報を広く法的ニーズをもっている人のところに届け(る)」とまとめています(03参照)。


ところで,広報の効果の表れ方は,広報の媒体や内容によって差があるようです。経験的な分類ですが,間接的なものから直接的なものまで,3つのタイプに分けてみました。

<タイプⅠ かなり間接的>

まず,多くの人に,原総合法律事務所という事務所の名前を覚えてもらい,いつか法的なトラブルに巻き込まれたときに,「そういえば,原総合法律事務所という事務所があったな。」と思い出してもらうために行う広報があります。
具体的には,テレビ・ラジオのCM新聞・広報誌の広告電車・バスの広告等がそうでしょうか。

もちろん,これら媒体での広報が,すぐに相談に直接結びつく場合もあります。例えば,多重債務(過払)の広報の場合,それを見たから,聞いたからという相談の問い合せもあります。しかし,それは例外的なケースです。
この範疇の広報は,一般に単発では効果が期待できないので,一定期間は継続的に行い,事務所名が多くの人の印象に残るまで続ける必要があります。広報を打てば,すぐに相談に結びつくというものではありませんから,この広報による相談がないからといって,止めてはだめです。
また,印象に残ればいいのですから,長文の説明は不要で,シンプルで,インパクトのあるものが望まれます。ロゴやキャッチコピーも有効です。

<タイプⅡ やや直接的>

タイプⅠより更に進んで,限られた人に,読んだり,見たり,聞いたりしてもらい,より強く記憶し,保存しておいてもらうための広報があります。
具体的には,リーフレットガイドブック等がそうですが,DVDラジオ番組への出演もこれにあたると思います。また,ニュースとしての記事になることも,ここに分類されるでしょう。

例えば,相談は受けたけれど,今回は事件の受任にまでは至らなかったという人には,リーフレット,ガイドブック等を持って帰ってもらいます。様々なセミナーを行うときにも,やはりリーフレット,ガイドブック等を配ります。こういったものは,いざというときのために大切に保管し,後日,自分や周りの人がもめ事に巻き込まれたとき,きっとそれを見てもらえるはずです。

また,原総合法律事務所では,相続・遺言についてはDVDも作っていて,セミナーでは上映しています。ラジオ番組の出演もそうですが,こういったものは,単なるCMよりも強い印象を与え,タイプⅠの広報より有効であって,ここに分類するだけの意味があると思っています。

さらに,事務所の取組みが,広告ではなく,記事として掲載されれば,その効果は広告とは比較になりません(しかも無料です。)。原総合法律事務所では,今年の8月から交通事故専門の相談窓口をスタートし,3回まで相談を無料としましたが,この意義を含めサービスの紹介を各メディアに投げ込んだところ,ある新聞が記事として取り上げてくれました。以後,交通事故の相談は顕著に増えています。

<タイプⅢ 直接的>

最後に,実際に法的なトラブルを抱えた人が,どこかの法律事務所に相談に行こうと思って見る広報があります。
ホームページ電話帳がその典型です。

既に相談に行こうと思っている人が対象ですから,有効な広報媒体であることは間違いありませんが,他の法律事務所と比較されるので,他事務所との差別化が必要です。
タイプⅠの広報で,事務所の名前やロゴマークなどが印象付けられていれば,この他事務所との差別化でも,まずは優位に立つことになります。

しかし,このタイプの広報を見る人は,更にそれぞれの事務所の内容を比較します。
電話帳の場合,わずかな情報量しか掲載できませんが,その中で,事務所のイメージを伝えなければなりません。
HPの場合は,情報量に制約はありませんから,その分野に詳しいことを分かりやすく伝えなければなりません。原総合法律事務所のマーケティング戦略で「HPの充実(圧倒的な情報量と分かりやすさ)」(03)と書いたのは,この意味です。

・・・・・・・・・・・・・・

このようにいくつかのタイプに分かれる広報ですが,統一したイメージのもと,これらを平行して,相互に関連付けて行わなければ効果は十分に表われないでしょう。
その全体に目配りをする広報責任者が必要になってくると思うのです。

2011/09/17

05 即日相談実現のための意識改革とテクニック

05 即日相談実現のための意識改革とテクニック

前回は新件相談を増やすためには,即日相談に応じる「覚悟」が必要だと,何だか精神論のような話しで終わりました。
しかし,「即日相談を受けるぞ」と何回誓っても,何回唱えても,それで即日相談を受けることができるわけではありません。

問題は,以下で述べることをやり抜く目的意識を事務所として共有しうるかということです。そのためには,所長の「覚悟」が必要ですし,その前提となる事務所の理念が確立していなければなりません。

第一に必要なのは,全ての弁護士・事務局の意識改革です。
キーワードは,「サービス業の視点」であり,「ユーザー目線」です。
弁護士は,全体としてみれば,極めて高い能力を持った集団ですが,それ故に,えてして独りよがりだったり,自己満足に走りがちです。弁護士の「敷居が高い」と言われるのは,この「サービス業の視点」,「ユーザー目線」が欠けているために,独りよがりだったり,自己満足に走りがちなことに由来しているのではないでしょうか。
法律事務所も,「サービス業の視点」,「ユーザー目線」から,あらゆる業務のあり方を見直すべきです。それ抜きには,今,弁護士にアクセスできていない市民や中小企業は,いつまでたっても弁護士にはアクセスしないでしょう。
ここで,「法的サービスにアクセスできていない市民,中小企業に対し,…法的サービスを提供できる事務所」を目指すという原総合法律事務所の理念が,「サービス業の視点」,「ユーザー目線」と結びつくわけです。

この意識改革ができれば,即日相談への対応は当然のこととして受けとめられるはずです。
せっぱ詰まった問題を抱えた人が,逡巡したあげく,ようやく法律事務所に電話を架けたのに,相談を受けられるのが,何日もあとで,しかも時間が指定されるようでは,もう弁護士に相談しないとなっても仕方がないでしょう。
法律事務所では即日相談が当然となることが,法的需要の掘り起こしの前提条件です。

意識改革ができれば,第二に,即日相談を可能にするテクニックをマニュアル化しましょう。
弁護士が2人以上いるのであれば,まず,即日相談の担当日を割り付けます。期日が入るより先に,つまりおおむね2か月以上前には,担当日を決めておくことが必要です。これを原総合法律事務所では,「事務所内当番」と呼んでいます。
かといって,担当日は終日予定を入れないようにするまでの必要はありません。実際には,午前中に問合せの電話があっても,事務所に来所できるのは午後にしかなりません。また,経験的に,即日の相談を希望される方は,1日にあっても1~2件です。そうすると,午後に2時間程度時間を空けていれば,実際には即日相談は可能です。
でも,原総合法律事務所では,電話を受ける際,「ご希望の日時はありますか。」と聞くのではなかったか(04)という点に気付いた方,鋭いです。そこで,たまたま予定を入れてしまった時間帯を希望されたときには,「あいにく,その時間は予定が入ってしまいましたので,その前後の○時はいかがでしょうか。」と答えるのです。
結果として,○時からの相談になるにしても,最初から,「○時なら時間が取れます。」という対応は,弁護士の都合を優先しています。そうではなく,まず,「ご希望は何時ですか。」と聞かれれば,結果として,希望の時間が取れなくても,自分の都合を優先しようとしてくれたのだと思ってもらえるのです。
それが「サービス業の視点」,「ユーザー目線」というものです。

なお,実際に,このような対応をとろうとすると,全スタッフが,弁護士の最新の予定を把握できなければなりません。弁護士の予定は,結構流動的で刻々と変化します。そのためには,グループウェアを導入することが必須でしょう(原総合法律事務所ではサイボウズを利用しています。)。

2011/09/16

04 即日相談に応じる覚悟

04 全ては新件相談のために-即日相談に応じる覚悟

新件相談をどれだけ重要と考えるかは,事務所によって温度差があるようです。
原総合法律事務所の場合は,事務所の理念が,「法的サービスにアクセスできていない市民,中小企業に対し,…法的サービスを提供すること」にあるのですから,想定される相談者・依頼者は,それまで全く法律事務所との関係がない人であって,まず新件相談から始まる人です。新件相談は,決定的に重要です。

これに対し,従来のオーソドックスな法律事務所は,顧問を中心に業務しており,相談者・依頼者は,顧問先であったり,顧問先から紹介された人が多かったのではないでしょうか。
そこでは,マーケティングといっても,せいぜい顧問先の維持や開拓であって,わざわざマーケティングを意識する必要もなかったのかもしれません。

しかし,私の場合は,地縁・血縁のないところで弁護士を始めたので,顧問先などあるはずがありません。当然に,顧問をもたない人の新件相談から事件を受任しなければなりませんでした。
さらに,今は,もっと積極的に,原総合法律事務所は顧問に依拠しないという立場を明確にしています。それは,事務所の理念に沿わないからです。事務所の軸をぶらさないために,理念は断固として貫き通すべきです(02参照)。

そうはいっても,以前の牧歌的な時代なら,先輩弁護士から事件を紹介してもらうこともできたし,弁護士会の法律相談センターなどで新件相談を受けることができたのではないか,ところが,ここ数年,弁護士が増える一方で,弁護士会の法律相談センター等の相談数は減少し,厳しい時代になったのだと言われるかもしれません。
そうです。そこにこそ,弁護士・弁護士会のマーケティングの弱さが象徴的に表われていると,私は見ています。

現実に,弁護士の法的サービスを受けることができれば,もっと適切な解決にたどり着けたのに,弁護士にアクセスできなかったばかりに,その権利,利益を害されている市民,中小企業は,まだまだ多いのです。そういった市民,中小企業が弁護士にアクセスできるようにすることが,まさに原総合法律事務所のマーケティングの目的です。
そこで,原総合法律事務所のマーケティングの取組みが,どのような結果を出しているかです。
現在,原総合法律事務所では,長崎事務所に3人,佐世保事務所に2人の5人の弁護士で,1日平均4件の新件相談を受けています。少数の弁護士会や法テラス経由の新件相談もありますが,ほとんどは,この数年の事務所独自のマーケティングの取組みを通じての結果です。マーケティングを位置付けて取り組む以前は,せいぜい,以前の依頼者や関係者から聞いたからという新件相談が週に数件あったくらいでしょうか。
原総合法律事務所のマーケティングの取組みは,狙いどおりの成果を上げつつあると考えています。

このように新件相談を増やすために何をしたかが,一番興味のあるところかと思いますが,結局は,前回(03)のブログで上げた試みの全てが,この新件相談を増やす結果につながっているのです。
広報の重要性は,広く認識されてきたところだと思いますが,前提として,「いつでも,どこでも,だれでも」相談を受けられる体制を作ることがとりわけ重要だというのが,この間の原総合法律事務所の取組みの教訓です。
具体的には,まず実行すべきは,「即日相談体制」です。
皆さんの事務所では,相談の問合せの電話が入ったとき,「では,○日後の○時なら時間をお取りできます。」とか答えていませんか。原総合法律事務所では,「今日でも相談をお受けできますが,ご希望の日時はありますか。」と答えます。せっぱ詰まっている方もおられるでしょうし,いろんな都合を抱えた相談者の希望に応じられないようでは,まず,入り口の段階で,ユーザー目線ではありません。原総合法律事務所では,「サービス業の視点」をキーワードの一つにしていますが,顧客の都合より自分の都合を優先するサービス業などあり得ないでしょう。
確かに,弁護士1人では,即日相談体制は難しいかもしれません。しかし,弁護士が2人以上いるのなら,あとは,即日相談にも応じるという覚悟だけです。その覚悟もないようでは,新件相談を増やす前提がないというのが,今日の結論です。

2011/09/15

03 summary:原総合法律事務所のマーケティング戦略

03 summary:原総合法律事務所のマーケティング戦略

そもそも,「マーケティング」とは何なのでしょう。
様々な定義がなされているようですが,私たちにとっては,事務所の理念・ビジョンを実現するための考え方の枠組みに過ぎません。
そのような実践的な視点から見ると,マーケティングを次の3つの要素から捉えるのが,有益だと思っています。
(a) 消費者が真に求める商品・サービスを作り,
(b) その情報を消費者に届け,
(c) 消費者がその商品・サービスを得られるようにする活動。
日本では,宣伝,広報(つまり,(b)の側面)に単純化して受け取られる傾向があるようですが,もちろん,それでは,事務所の理念・ビジョンを実現するには不十分です。

そこで,原総合法律事務所のマーケティング戦略が,この3つの側面において,どのようにまとめられているかです。
再度確認しておくと,原総合法律事務所の理念・ビジョンは,
「法的サービスを独占し,そのサービスの提供にあたって,『基本的人権の擁護と社会正義の実現』を求められる弁護士として,法的サービスにアクセスできていない市民,中小企業に対し,上質な法的サービスを提供できる事務所であること」
であり,
「いつでも,どこでも,だれにでも 上質な法的サービスを。」
というものでした。
これを,上記の3つの要素にあてはめ,私たちは,2008年8月,原総合法律事務所のマーケティング戦略を,次のようにまとめました。
(a) 質の高い法的サービスを作り,
(b) 質の高い法的サービスを提供できるという情報を広く法的ニーズをもっている人のところに届け,
(c) 法的ニーズのある人が,「いつでも,どこでも,だれでも」相談を受け,依頼できるようにする。

このように枠組みを作っておくと,新しい試みを打ち出すとき,それが事務所の理念・ビジョンに適合しているかの検証が容易になります。つまり,軸がぶれません。
また,その3要素に照らして,事務所が実践していることを書き並べてみると,どこが弱いのかが分かり,どこに力を入れるべきかも見えてきます。

そこで,原総合法律事務所が行っているマーケティング活動をこの3要素に分類してみましょう。読めば一目瞭然なのもあれば,これは何だというのもあると思います。振り返ってみても,この数年で,私たちは,実にいろんな試みをしてきたと思います。そして,今も平行して現在進行形のプロジェクトがあります。
次回以降は,まず,これらのうち,特徴的なものを紹介していこうと思います。
(a) 質の高い法的サービスを作るために
<弁護士レベル>
・弁護士の研修(外部研修,所内研修)
・弁護士の専門化(当面は,医療過誤,交通事故)
・文献・データベースの完備(図書館に行く必要がないだけの最新版の文献,医学論文データベースとの契約等)
・裁判事案についての共同担当制
・所長・先輩弁護士による指導・支援の徹底
<事務局レベル>
・事務員の研修(外部研修,所内研修。ただし,法律知識の習得は重視しない。)
・マニュアルの整備
・秘書会議の充実
・接遇スキルの向上
<弁護士・事務局を通じて>
・マナー研修
・危機対応マニュアル(ハード面を含めて)
・精神的に問題をもった人の対応に関する研修
(b) 質の高い法的サービスを提供できるという情報を広く法的ニーズをもっている人のところに届けるために
・HPの充実(圧倒的な情報量と分かりやすさ),ブログの位置付け
・リーフレット作成(事務所紹介,事件別,報酬ガイド等)
・ガイドブック作成(多重債務,相続・遺言等)
・DVD作成(プロモーションビデオの意味も持たせて)
・メディアでの広告(自治体広報誌,新聞,ミニコミ,ラジオ等)
・ラジオ番組への出演
・ラジオ番組とタイアップしたイベント
・記事としての掲載(ニュース性をもたせる工夫)
・キーマンを介しての紹介
・非顧問型,準顧問型,顧問型利用企業社員への広報
・非顧問型,準顧問型,顧問型利用企業での社員セミナー(「弁護士の取説」等)
・会議室を利用した各種セミナー
・実践型連続セミナー
・会議室の無料貸出し
・関連士業とのネットワーク
・行政との連携(勉強会の開催等)
(c) 法的ニーズのある人が,「いつでも,どこでも,だれでも」相談を受け,依頼できるようにするために
・佐世保事務所(更にその後の支店構想)
・各種無料相談(扶助取扱,事務所独自の無料相談,特に交通事故専門相談窓口での3回無料相談)
・着手金・報酬金の低額化・分割支払(ただし,適正な価格の堅持)
・事務所内当番制(即日相談体制)
・事務所内夜間・土曜相談
・出張相談
・電話・テレビ会議相談
・公民館セミナー(無料相談会付き)
・無料相談券の配布
・メンバーズカードの作成,配布

2011/09/13

02 明確な事務所理念・ビジョン

02 明確な事務所理念・ビジョンを断固として貫き通すこと

おそらくは,たいていの事務所で,自分たちの事務所の理念ないしビジョンについて,ぼんやりとしたものはもっていることと思います。
しかし,それが事務所のマーケティングの基本となるだけの明確な理念ないしビジョンになっているかというとどうでしょう。
そこから,事務所の全てのマーケティングの方針が導き出されていますか。
それが,事務所が提供する全てのサービスや企画,更には組織を検証する物差しになっていますか。

それがなければ,場当たりのマーケティングを繰り返すだけで,効果も思うようには上げられないでしょうし,何より,事務所の運営に自信が持てないはずです。マーケティングやマネジメントの基礎には確固とした理念ないしビジョンが必要だというのは,あらゆる仕事において共通の原則です。

更に加えて,弁護士・法律事務所についていうならば,その理念ないしビジョンは,「基本的人権の擁護と社会正義の実現」という弁護士の使命を離れてはあり得ないと考えています。この軸がぶれたマーケティングでは,弁護士としてのやりがい(誇り)も見出せないし,社会的な期待にも答えられないし,ビジネスモデルとしても成功しないと考えています。
「基本的人権の擁護と社会正義の実現」という軸を事務所理念・ビジョンにおいて,断固として貫き通すこと。
これが,今回の第1の結論です。
法律事務所のマーケティングが語られるとき,私は違和感を覚えることが多いのですが,それは,この軸が曖昧な気がするからです。

では,この軸をぶらさず,私たちの事務所では,どのようにして具体的な事務所理念・ビジョンを確立してきたのか。

前回のブログでもふれたところですが,もともと,私たちの事務所は,弁護士2人,事務局5~6人の規模で運営していました。多重債務のピークのころでもありましたし,事件は多く,手一杯という感じが続いていました。ちょうどそのころ,弁護士大増員時代を迎え,弁護士100人足らずの長崎県弁護士会に,急に毎年10人といった多くの新入会員を迎えるようになりました。弁護士を採用すれば,事務所を大きくすることもできるようになってきたのです。
そして,実際,2007年12月には3人目の弁護士が入所することが決まっていました(実際には,このとき,弁護士が4人になっています。)。
そうすると,それまでの事務所では手狭になるため,事務所を移転せざるを得ないこととなりました。移転するとして,広さはどれくらい必要か,相談室はいくつ必要か,また事務所の規模を大きくして,事務所財政をどのようにして支えるのか。こういった点を考えるにあたって,前提として,どのような事務所にしようとしているのか,事務所のビジョンを確立することが先なのではないかと考えるようになったのです。

2007年ころ,まず,事務所の主なメンバーで,事務所のビジョンを話すようになりました。
しかし,当時の資料を見ると,いまだ事務所の軸を自覚できてはいませんでした(軸がなかったわけではなく,ただ,「言葉」になっていなかったという意味です。「基本的人権の擁護と社会正義の実現」という軸は,弁護士になって以来,常に業務の基本でした。)。それでも,今につながる「サービス業の視点」だとか,「スタッフ全員の上質のサービス」という言葉は使われていましたし,既に事務所の「ブランド化」も話題に上っていました(これらキーワードについては,そのうちにお話しします。)。
それが,現在の事務所理念につながる形で明確に言語化されたのは,2008年2月でした。このとき,「原総合法律事務所の将来像(ビジョン)」という文書をまとめましたが,そこには,次のような指摘がありました。
「法律事務所が単なる利潤追求の『商売』でない特殊性-法律事務の独占による法的ニーズへの対応」という視点から,「当事務所の特徴である多重債務を含む消費者問題,医療過誤,行政訴訟,高齢者問題等に,弁護士による十分な法的サービスが提供されているか」を問題とし,その解決に取り組むことを事務所のビジョンに掲げたのです。
今は,もっと端的に,事務所の理念を次のようにまとめています。
「法的サービスを独占し,そのサービスの提供にあたって,『基本的人権の擁護と社会正義の実現』を求められる弁護士として,法的サービスにアクセスできていない市民,中小企業に対し,上質な法的サービスを提供できる事務所であること」
この理念をワンフレーズで表すために,2009年6月からは,次のキャッチコピーを使うようになりました。
「いつでも,どこでも,だれにでも 上質な法的サービスを。」
そして,事務所のマーケティングにあたっては,常に,この「いつでも,どこでも,だれにでも 上質な法的サービスを。」という理念に照らして,今,何をなすべきかを議論し,実践するようにしています。

ここで,今回の第2の結論です。
理念・ビジョンは,簡潔に,明確に文章化すること。
頭の中にあるだけで,文字にならなければ,整理もできていませんし,人にも伝わりません。かつ,短く分かりやすい言葉で言い表せていなければ,やはり整理が不十分ですし,人にも伝わりにくいのです。

でも,この「いつでも,どこでも,だれにでも」というフレーズ,聞いたことがありませんか。
そうです,日弁連が,「市民の司法」の理念を掲げ,司法(弁護士)過疎の解消に取り組んだときのフレーズです。
結局,私たちは,事務所の将来像(ビジョン)を考えていく中で,日弁連のビジョンに戻ってしまったのです。
ただ,この理念・ビジョンをどこまで純粋に貫徹できるか。それをやり抜くためには,これまでの弁護士・法律事務所がやっていなかった方針を提起し,実践していかなければならなかったのです。

さあ,そろそろ,具体的なマーケティングの話しに入っていきましょう。

2011/09/12

01 prologue:原総合法律事務所のマーケティング戦略

01 どうして,私たちは,先駆けてマーケティングやマネジメントの視点を持ち得たのか

私たちの事務所が,マーケティング戦略を打ち出したのは,2008年1月であり,マネージャーを置いて,組織を統轄するようになったのは,2008年3月でした。
その後,「弁護士のためのマーケティングマニュアル」(出口恭平著,第一法規)が出版され,弁護士業務にもマーケティングの手法が使われることが意識され始めたのが2008年3月であり,「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」(岩崎夏海著,ダイヤモンド社)が出版され,マネジメントの重要性が再認識されたのが,2009年12月でした。
前者を読んだときには,私たちの事務所でやろうとしていることと形の上では重なる部分が多いけれど,ビジョンが見えないし,体系的ではないなという感想を持ちました。また,ドラッガーは,名前を聞いたことがあるだけで,どんなことを言っているのかは知りませんでしたが,後者で書かれていることがそれだとすると,私たちが事務所の運営の中で実践的に到達したマーケティングやマネジメントの考え方と一致することを再確認しました。


では,どうして,私たちは,法律事務所としては,先駆けてマーケティングやマネジメントの視点を持ち得たのか。
もちろん,「本」を読んだり,「人の話」を聞いて気付いたわけではありません。
事務所の規模が大きくなるときに,何のために事務所の規模を大きくしようとしているのか,自問する過程で,マーケティングやマネジメントの視点にたどり着いたのです。
私たちの事務所は,何を・どこを目指そうとしているのか-事務所のビジョン問題です。


それまで,私たちの事務所は,弁護士2人,事務局5~6人の規模で運営していましたが,弁護士大増員時代を迎え,2007年12月には3人目の弁護士が入所することが決まっていました(実際には,このとき,弁護士が4人になっています。)。
そうすると,それまでの事務所では手狭になるため,事務所を移転せざるを得ないこととなりました。移転するとして,広さはどれくらい必要か,相談室はいくつ必要か,また事務所の規模を大きくして,事務所財政をどのようにして支えるのか。こういった点を考えるにあたって,前提として,どのような事務所にしようとしているのか,事務所のビジョンを確立することが先なのではないかと考えるようになったのです。
2007年の前半は,この事務所ビジョンを確立させ,それにそった事務所を作るための準備の期間となりました。


では,どのような事務所ビジョンを考えたのか。
別に特別なことを考えたわけではありません。弁護士であれば当然なすべきことを徹底して意識し,具体化しようと考えただけのことでした。
弁護士は,法律上,「基本的人権の擁護と社会正義の実現」を求められている特別な仕事です。しかも,その仕事は弁護士だけが独占しているのです。
そうであれば,私たちは,弁護士の法的サービスが届いていない人に私たちの法的サービスを届ける努力をすべきではないか。そのために,当事務所は,事務所の規模を拡大し,十分な法的サービスを提供できる体制を作らなければならないと考えたのです。
私たちの事務所は,多重債務を含む消費者問題や医療過誤(患者側),行政訴訟(住民側),高齢者問題等に積極的に取り組んでいましたが,この分野では,まだまだ弁護士の法的サービスを必要とする人に法的サービスを提供できていないという実感がありました。特に,長崎県内であれば,当事務所のある県南地域に比べ,県北地域では,これらニーズへの対応は不足しているように思っていました。そこで,事務所の規模を拡大し,これらニーズに対応できるサービスを作り(マーケティングの視点),サービス提供の基盤となる組織を作ろうと考えたのです(マネジメントの視点)。


2007年7月,現在の事務所に移転し,弁護士5人くらいまで,事務局12人くらいまでは入ることのできるスペースを確保しました。その後,2007年12月には弁護士4人の体制となっています。
さらに,県北地域にも事務所を置くために,2008年8月,事務所を法人化し(弁護士法人佳朋設立),2009年1月,佐世保事務所を開設しました。


結論です。
私たちがまず確立しなければならないのは,形だけのマーケティング論やマネジメント論ではなく,確固とした事務所ビジョン(理念)です。ここがぶれることがなければ,後は考えて実行することだけです。そうすれば,自ずとその事務所なりのマーケティングやマネジメントができあがってくるはずです。


長いプロローグになってしまいましたが,このような視点から,法律事務所のマーケティングを考えていこうというのが,このブログの目的です。主な対象は,もちろん法律事務所を運営している弁護士ですが,中小企業の経営者の皆さんにも参考になるのではないかと思っています(中小企業の経営者の皆さんに,原総合法律事務所のマーケティングをテーマにお話しする機会もあるのですが,結構,好評です。)。
次回以降,具体的に原総合法律事務所ではどのようなマーケティングをしているのか,お話ししたいと思います。
ちなみに,マネジメントについてですが,私たちの事務所では,弁護士でないマネージャーが組織を統轄しています。どうして,そのような体制をとっているのかについては,改めてお話しする機会があると思いますが,実際のマネジメントについては,マネージャーのブログがあるので,そちらをぜひ読んでみてください。