2011/12/24

25 弁護士「会」のマーケティング


25 もっと身近な弁護士であるために5-弁護士「会」のマーケティング

前回のアップ以降,かなり間が空いてしまいました。
いつの間にか年末。1年を総括しつつ,来年の事務所のマーケティング戦略の展開を考えながら,いったん中断していた弁護士アクセス編「もっと身近な弁護士であるために」を続けることにします。

といいながら,今日は,そのつなぎ兼お知らせ(予告)です。
実は,来年(2012年)10月26日に長崎で開かれる九州弁護士会連合会定期大会のシンポジウムのテーマは,「弁護士(への)アクセスの現状と課題」と決まっています。
何だか,このブログのテーマと重なっていますが,というのも,私の問題意識を取り上げてもらい,かつ,私がシンポジウムの責任者なもので…。
ということで,皆さん,スケジュールを確保しておきましょう。

今年(2011年)11月11日の横浜での日弁連弁護士業務改革シンポジウムでは,私も第1分科会のパネラーとして原総合法律事務所のマーケティング戦略をお話ししました。そこでは,個々の弁護士・法律事務所の取組みがテーマでしたが,来年の九弁連大会のシンポジウムでは,弁護士会が全体としてどのように市民からのアクセスを容易にしていくか=弁護士会のマーケティングがテーマです。
このテーマ,私の中での位置付けは,横浜での業革のシンポの次の段階という位置付けです。
というのは,原総合法律事務所の事務所理念が,「法的サービスを独占し,そのサービスの提供にあたって,『基本的人権の擁護と社会正義の実現』を求められる弁護士として,法的サービスにアクセスできていない市民,中小企業に対し,上質な法的サービスを提供できる事務所であること」は,繰り返し話してきました(02 明確な事務所理念・ビジョン)。そして,原総合法律事務所は,「いつでも,どこでも,だれにでも」法的サービスを提供できる事務所であるために,様々な取組みを展開してきました。
しかし,一事務所ができることには限界があります。そこで,多くの弁護士・事務所が「いつでも,どこでも,だれにでも」法的サービスを提供できるように共通の取組みを進めて欲しいという思いから,このブログを立ち上げ,原総合法律事務所の実践を紹介してきました。そして,実際,原総合法律事務所の取組みを知り,同様の取組みを始めてきた法律事務所があります。
しかし,それでも,個々の弁護士・法律事務所ができることには限界があります。次の段階は,弁護士会としての取組みです。

実は,そのような視点から,私は,2009年度と2010年度,長崎県弁護士会の会長を務めた際,長崎県弁護士会の全員協議会等で,弁護士会のマーケティングを問題提起してきました。でも,そもそも弁護士のマーケティングも一般的ではなかった時期に弁護士会のマーケティングを具体化するには早すぎたようです。私自身のマーケティングに関する理解や構想も不十分だったと思います。

しかし,徐々にマーケティングの考え方が弁護士の中にも浸透し,私自身,マーケティングが人権課題であること(このことについては,<コラム編4>業革シンポを終えてを参照してください。)を再確認した今,もう一度,弁護士会のマーケティングを問題提起してみたいと思うようになりました。
その具体的な内容は,これから議論し,造り上げていくことになりますが,弁護士会の新たな地平を開けるようなシンポジウムにしたいと考えているところです。
いずれ,具体的な内容が固まってきたら,その紹介もしていきたいと思いますが,まずは,日程の確保をよろしくというお願いでした。

2011/12/11

24 内部ブランディング(Internal Branding)


24 法律事務所のブランディング7-内部ブランディング(Internal Branding)

法律事務所のマーケティング・弁護士のマーケティングの観点から,事務所内のブランディングについて,そのうち来所された相談者,依頼者に向けてのブランディングを3回にわたって考えてきました。
今回は,事務所内のブランディングのもう一つの側面,事務所のスタッフ自身に向けてのブランディングです。

私たちは,経験的に,事務所内の弁護士や事務局といったスタッフ間で不協和音があると,その対応に時間をとられ,また業務に集中できないこと,その結果,スタッフのモチベーションが維持できず,業務能率が落ちることを知っています。
これに対し,弁護士や事務局といったスタッフが,一つにまとまり,協働しているときは,スタッフのモチベーションも高く,結果として,業務も進み,業績も上がるものです。

このスタッフを一つの組織にまとめ,組織として機能させることはマネジメントの課題であって,原総合法律事務所のマネジメントについては,マネージャーの別ブログが用意されているところです(所長弁護士・中小企業経営者必見!法律事務所におけるマネジメントのススメ)。

ただ,法律事務所のマーケティングの観点からは,スタッフを一つの組織にまとめるのが,事務所の理念であり,マーケティング戦略であるということが重要です。
弁護士1人に事務局1~2人というスタッフであれば,馬が合うとか,好き嫌いとかいうパーソナルなレベルでスタッフがまとまることもあると思います。
しかし,それ以上の人数の組織になったとき,全員が「仲良しクラブ」にはならないわけで,組織をまとめる軸が必要になります。
もちろん,その基盤には,労働力を提供し,それに対価を支払うという支配・従属関係があるのですが,規則で縛り,命令したからといって,組織としてまとまるわけではありません。
全てのスタッフが,事務所の理念とマーケティング戦略を理解し,それに共感し,誇りを持って業務することができれば,モチベーションは上がり,たとえ日々の業務が忙しくても,それほどストレスには感じないものです。

事務所の弁護士・事務局の全スタッフが,原総合法律事務所の理念(何度も話しているので,ここではふれません。→例えば,02 明確な事務所理念・ビジョン)に共感し,原総合法律事務所で業務をすることに誇りを持てるようにすること,それが事務所のスタッフ自身に向けてのブランディングです。
原総合法律事務所では,毎月の事務所会議で事務所理念を確認し合うのはもちろん,事務所の運営や業務に当たって,何かを考え,意見を出すときには,必ず事務所理念に照らしてどうなのかを検討するよう求めています。そうすることで,自然と事務所理念が行き渡っていくことを狙っています。
もちろん,前提として,この事務所理念が,スタッフの誇りとなり,スタッフのモチベーションを高めるようなものでなければなりません。この点では,幸い,弁護士は,基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命としているのですから,この軸を外さない限り,法律事務所の理念は,当然にスタッフの誇りとなり,スタッフのモチベーションを高めるものになるはずです。自分たちも基本的人権の擁護と社会正義の実現に関与しているという意識は,誇りとモチベーションの源になるはずです。

ところで,この記事を書くにあたって,ネットを調べていたら,こういう内部に向けてのブランディングを内部ブランディング('Internal Branding'又は'Inner Branding'というようです。
当たり前のことだとは思うのですが,整理すれば,確かに,消費者に向けての外部ブランディング('External Branding'又は'Outer Branding'と内部ブランディングがあり,外部ブランディングだけ進めても,内部ブランディングがきちんとできていなければだめだというのはそのとおりだと思います。
このブログで一貫して強調している,マーケティング戦略の基礎は事務所の理念であるというのは,まさにこの内部ブランディング-弁護士・事務局の全スタッフが理念を共有することを指しているわけです。

追記 マネージャーのマネジメントのブログでも,内部ブランディングにふれています。→こちら「内部ブランディングのススメ

2011/12/04

23 ハード面のブランディング


23 法律事務所のブランディング6-ハード面のブランディング

法律事務所のマーケティング・弁護士のマーケティングの観点から,事務所内の,来所された相談者,依頼者に向けてのブランディングを考えてきました。
今回は,前回までのソフト面に続き,事務所や相談室の作りなどハード面のブランディングについてです。

私たちが提供する法的サービスは,弁護士の法的知識やノウハウ,経験に加えて,事務局スタッフの対応というソフト面が核となることは当然ですが,更に加えて,事務所や相談室の作りなども評価されていることに気を配るべきです。

ただ,このハード面のブランディングは,「資金」という大きな制約があります。いかに安価に,「ここは信頼できそう。ここだったら相談に来たい。事件を依頼しよう。」と思わせるかがポイントです。

まず,事務所の場所・立地です。
交通の便がいい方が望ましいのはいうまでもありません。そういう意味では,従来の裁判所の近くというのでなく,駅周辺といった交通の要地に事務所を開く例が増えているのは,理解できるところです。
また,出入口にも気を配るべきです。入り口が目立ちすぎると,相談者は,入りづらいものです。入り口は目立たなくても,あまりに人通りが少なかったりすると,その付近にいるだけで法律事務所に行くことが分かってしまい,やはり好ましくありません。
それなりに人通りもある地区で,法律事務所以外のテナントも入っているビルの一室が入りやすいようです(1階は入るところが見えるのでNG)。

事務所の内装や什器備品などにも気を遣うべきです。
数十年前のいかにも法律事務所という雰囲気の漂う応接セットに書棚というのはどうでしょうか。
威圧感のある作りでは,悩みを抱えた相談者,依頼者が萎縮し,ますます気持ちが落ち込んでいくような気がします。明るくシンプルで清潔感のある方がいいでしょう。
法律書が並んでいたりするのは,威圧感があるような気がしますし,弁護士にとっても,相談が入っていると,自由に本を取ることができず不便です。
また,機能的であることも必要で,応接テーブルは,この点でもメモが取りにくく好ましくありません。やはり,会議用の机と椅子が使いやすいと思います。なお,机は広い方が資料を広げやすいのはもちろん,対面する相手の手が届かない点で,セキュリティの面からも望ましいと思います。

原総合法律事務所では,悩みを抱えた相談者,依頼者が来られるわけですから,できるだけ明るく,白を基調とした相談室の作りにして,できる限り,物を置かないようにしています。
こんな感じです。



ちなみに,受付もイメージを統一しています。



もちろん,プライバシーが守られることも重要で,他の相談者や訪問者と顔を合わさない配慮が必要です。
声も漏れないようにしたいのですが,現実的には,壁を天井まで立ち上げても,声は漏れるものですし,防音まで行うとかなり高価です。
原総合法律事務所でも,間仕切りは天井との間に隙間があるのですが,相談室の間に通路を挟んだり,またBGMを流すようにして,少しでも他の相談の声が入らないようにしています。
また,スタッフの話し声や電話の声が漏れるのも避けたいものです。特に,電話は他の事件の情報が漏れる危険があります。

ちなみに,相談者から見えるところに,他の事件の記録が置いてあったりする事務所がありますが,プライバシーの観点から絶対に避けるべきです。

これらの基本をふまえた上で,相談室の差別化を図ることも有効です。
原総合法律事務所では,子どもさんと一緒に相談を受けることができるように,キッズルームがあります。



さらに,最近,レディスルームを設けました。他の相談室より上質感のある内装で,間接照明を使い,女性の好みそうな小物を置いたり,アロマを焚いたりしています。(マネージャーのブログでも紹介されています。→こちら