2011/12/24

25 弁護士「会」のマーケティング


25 もっと身近な弁護士であるために5-弁護士「会」のマーケティング

前回のアップ以降,かなり間が空いてしまいました。
いつの間にか年末。1年を総括しつつ,来年の事務所のマーケティング戦略の展開を考えながら,いったん中断していた弁護士アクセス編「もっと身近な弁護士であるために」を続けることにします。

といいながら,今日は,そのつなぎ兼お知らせ(予告)です。
実は,来年(2012年)10月26日に長崎で開かれる九州弁護士会連合会定期大会のシンポジウムのテーマは,「弁護士(への)アクセスの現状と課題」と決まっています。
何だか,このブログのテーマと重なっていますが,というのも,私の問題意識を取り上げてもらい,かつ,私がシンポジウムの責任者なもので…。
ということで,皆さん,スケジュールを確保しておきましょう。

今年(2011年)11月11日の横浜での日弁連弁護士業務改革シンポジウムでは,私も第1分科会のパネラーとして原総合法律事務所のマーケティング戦略をお話ししました。そこでは,個々の弁護士・法律事務所の取組みがテーマでしたが,来年の九弁連大会のシンポジウムでは,弁護士会が全体としてどのように市民からのアクセスを容易にしていくか=弁護士会のマーケティングがテーマです。
このテーマ,私の中での位置付けは,横浜での業革のシンポの次の段階という位置付けです。
というのは,原総合法律事務所の事務所理念が,「法的サービスを独占し,そのサービスの提供にあたって,『基本的人権の擁護と社会正義の実現』を求められる弁護士として,法的サービスにアクセスできていない市民,中小企業に対し,上質な法的サービスを提供できる事務所であること」は,繰り返し話してきました(02 明確な事務所理念・ビジョン)。そして,原総合法律事務所は,「いつでも,どこでも,だれにでも」法的サービスを提供できる事務所であるために,様々な取組みを展開してきました。
しかし,一事務所ができることには限界があります。そこで,多くの弁護士・事務所が「いつでも,どこでも,だれにでも」法的サービスを提供できるように共通の取組みを進めて欲しいという思いから,このブログを立ち上げ,原総合法律事務所の実践を紹介してきました。そして,実際,原総合法律事務所の取組みを知り,同様の取組みを始めてきた法律事務所があります。
しかし,それでも,個々の弁護士・法律事務所ができることには限界があります。次の段階は,弁護士会としての取組みです。

実は,そのような視点から,私は,2009年度と2010年度,長崎県弁護士会の会長を務めた際,長崎県弁護士会の全員協議会等で,弁護士会のマーケティングを問題提起してきました。でも,そもそも弁護士のマーケティングも一般的ではなかった時期に弁護士会のマーケティングを具体化するには早すぎたようです。私自身のマーケティングに関する理解や構想も不十分だったと思います。

しかし,徐々にマーケティングの考え方が弁護士の中にも浸透し,私自身,マーケティングが人権課題であること(このことについては,<コラム編4>業革シンポを終えてを参照してください。)を再確認した今,もう一度,弁護士会のマーケティングを問題提起してみたいと思うようになりました。
その具体的な内容は,これから議論し,造り上げていくことになりますが,弁護士会の新たな地平を開けるようなシンポジウムにしたいと考えているところです。
いずれ,具体的な内容が固まってきたら,その紹介もしていきたいと思いますが,まずは,日程の確保をよろしくというお願いでした。

2011/12/11

24 内部ブランディング(Internal Branding)


24 法律事務所のブランディング7-内部ブランディング(Internal Branding)

法律事務所のマーケティング・弁護士のマーケティングの観点から,事務所内のブランディングについて,そのうち来所された相談者,依頼者に向けてのブランディングを3回にわたって考えてきました。
今回は,事務所内のブランディングのもう一つの側面,事務所のスタッフ自身に向けてのブランディングです。

私たちは,経験的に,事務所内の弁護士や事務局といったスタッフ間で不協和音があると,その対応に時間をとられ,また業務に集中できないこと,その結果,スタッフのモチベーションが維持できず,業務能率が落ちることを知っています。
これに対し,弁護士や事務局といったスタッフが,一つにまとまり,協働しているときは,スタッフのモチベーションも高く,結果として,業務も進み,業績も上がるものです。

このスタッフを一つの組織にまとめ,組織として機能させることはマネジメントの課題であって,原総合法律事務所のマネジメントについては,マネージャーの別ブログが用意されているところです(所長弁護士・中小企業経営者必見!法律事務所におけるマネジメントのススメ)。

ただ,法律事務所のマーケティングの観点からは,スタッフを一つの組織にまとめるのが,事務所の理念であり,マーケティング戦略であるということが重要です。
弁護士1人に事務局1~2人というスタッフであれば,馬が合うとか,好き嫌いとかいうパーソナルなレベルでスタッフがまとまることもあると思います。
しかし,それ以上の人数の組織になったとき,全員が「仲良しクラブ」にはならないわけで,組織をまとめる軸が必要になります。
もちろん,その基盤には,労働力を提供し,それに対価を支払うという支配・従属関係があるのですが,規則で縛り,命令したからといって,組織としてまとまるわけではありません。
全てのスタッフが,事務所の理念とマーケティング戦略を理解し,それに共感し,誇りを持って業務することができれば,モチベーションは上がり,たとえ日々の業務が忙しくても,それほどストレスには感じないものです。

事務所の弁護士・事務局の全スタッフが,原総合法律事務所の理念(何度も話しているので,ここではふれません。→例えば,02 明確な事務所理念・ビジョン)に共感し,原総合法律事務所で業務をすることに誇りを持てるようにすること,それが事務所のスタッフ自身に向けてのブランディングです。
原総合法律事務所では,毎月の事務所会議で事務所理念を確認し合うのはもちろん,事務所の運営や業務に当たって,何かを考え,意見を出すときには,必ず事務所理念に照らしてどうなのかを検討するよう求めています。そうすることで,自然と事務所理念が行き渡っていくことを狙っています。
もちろん,前提として,この事務所理念が,スタッフの誇りとなり,スタッフのモチベーションを高めるようなものでなければなりません。この点では,幸い,弁護士は,基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命としているのですから,この軸を外さない限り,法律事務所の理念は,当然にスタッフの誇りとなり,スタッフのモチベーションを高めるものになるはずです。自分たちも基本的人権の擁護と社会正義の実現に関与しているという意識は,誇りとモチベーションの源になるはずです。

ところで,この記事を書くにあたって,ネットを調べていたら,こういう内部に向けてのブランディングを内部ブランディング('Internal Branding'又は'Inner Branding'というようです。
当たり前のことだとは思うのですが,整理すれば,確かに,消費者に向けての外部ブランディング('External Branding'又は'Outer Branding'と内部ブランディングがあり,外部ブランディングだけ進めても,内部ブランディングがきちんとできていなければだめだというのはそのとおりだと思います。
このブログで一貫して強調している,マーケティング戦略の基礎は事務所の理念であるというのは,まさにこの内部ブランディング-弁護士・事務局の全スタッフが理念を共有することを指しているわけです。

追記 マネージャーのマネジメントのブログでも,内部ブランディングにふれています。→こちら「内部ブランディングのススメ

2011/12/04

23 ハード面のブランディング


23 法律事務所のブランディング6-ハード面のブランディング

法律事務所のマーケティング・弁護士のマーケティングの観点から,事務所内の,来所された相談者,依頼者に向けてのブランディングを考えてきました。
今回は,前回までのソフト面に続き,事務所や相談室の作りなどハード面のブランディングについてです。

私たちが提供する法的サービスは,弁護士の法的知識やノウハウ,経験に加えて,事務局スタッフの対応というソフト面が核となることは当然ですが,更に加えて,事務所や相談室の作りなども評価されていることに気を配るべきです。

ただ,このハード面のブランディングは,「資金」という大きな制約があります。いかに安価に,「ここは信頼できそう。ここだったら相談に来たい。事件を依頼しよう。」と思わせるかがポイントです。

まず,事務所の場所・立地です。
交通の便がいい方が望ましいのはいうまでもありません。そういう意味では,従来の裁判所の近くというのでなく,駅周辺といった交通の要地に事務所を開く例が増えているのは,理解できるところです。
また,出入口にも気を配るべきです。入り口が目立ちすぎると,相談者は,入りづらいものです。入り口は目立たなくても,あまりに人通りが少なかったりすると,その付近にいるだけで法律事務所に行くことが分かってしまい,やはり好ましくありません。
それなりに人通りもある地区で,法律事務所以外のテナントも入っているビルの一室が入りやすいようです(1階は入るところが見えるのでNG)。

事務所の内装や什器備品などにも気を遣うべきです。
数十年前のいかにも法律事務所という雰囲気の漂う応接セットに書棚というのはどうでしょうか。
威圧感のある作りでは,悩みを抱えた相談者,依頼者が萎縮し,ますます気持ちが落ち込んでいくような気がします。明るくシンプルで清潔感のある方がいいでしょう。
法律書が並んでいたりするのは,威圧感があるような気がしますし,弁護士にとっても,相談が入っていると,自由に本を取ることができず不便です。
また,機能的であることも必要で,応接テーブルは,この点でもメモが取りにくく好ましくありません。やはり,会議用の机と椅子が使いやすいと思います。なお,机は広い方が資料を広げやすいのはもちろん,対面する相手の手が届かない点で,セキュリティの面からも望ましいと思います。

原総合法律事務所では,悩みを抱えた相談者,依頼者が来られるわけですから,できるだけ明るく,白を基調とした相談室の作りにして,できる限り,物を置かないようにしています。
こんな感じです。



ちなみに,受付もイメージを統一しています。



もちろん,プライバシーが守られることも重要で,他の相談者や訪問者と顔を合わさない配慮が必要です。
声も漏れないようにしたいのですが,現実的には,壁を天井まで立ち上げても,声は漏れるものですし,防音まで行うとかなり高価です。
原総合法律事務所でも,間仕切りは天井との間に隙間があるのですが,相談室の間に通路を挟んだり,またBGMを流すようにして,少しでも他の相談の声が入らないようにしています。
また,スタッフの話し声や電話の声が漏れるのも避けたいものです。特に,電話は他の事件の情報が漏れる危険があります。

ちなみに,相談者から見えるところに,他の事件の記録が置いてあったりする事務所がありますが,プライバシーの観点から絶対に避けるべきです。

これらの基本をふまえた上で,相談室の差別化を図ることも有効です。
原総合法律事務所では,子どもさんと一緒に相談を受けることができるように,キッズルームがあります。



さらに,最近,レディスルームを設けました。他の相談室より上質感のある内装で,間接照明を使い,女性の好みそうな小物を置いたり,アロマを焚いたりしています。(マネージャーのブログでも紹介されています。→こちら




2011/11/28

22 スタッフ全員の上質なサービス


22 法律事務所のブランディング5-スタッフ全員の上質なサービス

法律事務所のマーケティング・弁護士のマーケティングの観点から考えたとき,事務所内のブランディングも必要です。
今回は,来所された相談者,依頼者に向けてのブランディングの第2回です。

前回は,弁護士の業務という側面からの相談者,依頼者に向けてのブランディングでした。
しかし,相談者,依頼者に提供する法律事務所の法的サービスは,弁護士の提供する法律事務だけではありません。ソフト面でいえば,弁護士だけではなく,事務局スタッフの対応もありますし,ハード面でいえば,事務所や相談室の作りなどもあります。
これら全てをトータルして,「原総合法律事務所は違う。特別だ。」という信頼感と差別化を進めなければなりません。

まず,事務局スタッフの対応については,このブログの冒頭で,「スタッフ全員の上質のサービス」というキーワードにふれたことがありました(02参照)。

事務所に問合せの電話がかかったとき,最初に電話に出るのは事務局です。この第一印象は決定的に重要です。悩み事を持って,でもおそらくは弁護士に相談するのに不安を残して,ようやく電話をかけてきた人に,電話をかけてよかったと思わせなければなりません。
一般的なビジネスマナーをふまえた電話対応はいうまでもありません。
加えて,トラブルに巻き込まれ,気持ちの沈んだ方からの電話ですから,少しでも気持ちが前向きになるように,明るく対応することが必要です。
「先生のところは,誰が電話に出ても感じがいいですよね。」と言われるようにならなければなりません。

事務所に来られた相談者の方とも,まず受付で対応するのは事務局です。
「どんな事務所だろう。どんな弁護士だろう。」という不安を抱いて来られている相談者ですから,マナーをふまえた対応はもちろんですが,加えて,少しでも不安を減らせるよう,丁寧な,笑顔での対応が求められます。
このとき,電話を受け付けた事務局が対応すると,相談者もホッとされるようで,最近,原総合法律事務所では,できる限り電話を受けた事務局が受付対応をするように心がけています。
その後,相談室に誘導するのも事務局ですし,お茶を出し,相談カードの記入をお願いするのも事務局です。ここでの対応にも,同じような配慮が必要です。

これらの電話や受付,相談室での対応について,事務所内で指導する組織作り=マネジメントの体制が必要ですが,この業界は,ビジネスマナーについては,疎いところもあるので,外部の研修を受けることも必要でしょう。
ちなみに,実は,もっとビジネスマナーを知らないのは,弁護士だったりします。
そこで,原総合法律事務所では,弁護士も含めた全所員対象に,外部から講師を招き,事務所内でビジネスマナーの研修をしたこともあります。

さらに,特に電話での問合せの際,重要なのは,法律相談,受任につなぐという目的意識です。
事情を聞いた上で,法的な解決の方向を助言できるのは弁護士なのですから,弁護士の法律相談につながなければ,電話をかけてもらった意味がありません。
ところが,法律事務所に電話をかけてくる人は,法的トラブルを抱え,混乱したり,怒りのため感情的になったり,不信感に囚われていたりします。そういった方からの電話ですから,気持ちのいい電話であるはずがありません。前回,弁護士の対応としてもふれましたが,事務局も,そんな電話を受けて,面倒くさいと思ったり,やりたくないと思うと,すぐに相手方に伝わってしまうものです。何よりも,そんな気持ちでは,問合せを相談につなぐことなどできません。
問合せの電話が相談の予約につながっていないケースが目立つようなら,事務局に対して,問合せを法律相談につなぐ目的意識の徹底が検討されなければなりません。まさに,マネジメントの課題というべきで,ここから先は,マネージャーのマネジメントのブログのテーマです。

2011/11/25

21 法律事務所内のブランディング(法的トラブルからの「更生」)


21 法律事務所のブランディング4-事務所内のブランディング(法的トラブルからの「更生」)

法律事務所のマーケティング・弁護士のマーケティングの観点から考えたとき,そのブランディングは,外へ向けたものだけではありません。事務所内のブランディングも考えなければなりません。
それは,来所された相談者,依頼者に向けてという意味と,事務所のスタッフ自身に向けてという意味があります。

今回は,まず,来所された相談者,依頼者に向けてのブランディングの第1回です。
なのに,サブタイトルが法的トラブルからの「更生」???と思われた方,最後まで読んでいただければ,何となく感じは伝わるかと思います。実は,これ,2~3日前に思いついたフレーズです。

以前,「人を介しての広報」(13)でふれましたが,原総合法律事務所では,そのマーケティング戦略上,全ての依頼者,更には相談者も「キーマン」と位置付けています。受任に至った人はもちろん,受任に至らなかった人も,また何かあれば気軽に原総合法律事務所に来てもらえるような,更に周囲に困った人がいれば原総合法律事務所を紹介してもらえるような事務所になることを目指しています。

それまで原総合法律事務所のことを知らない人を,原総合法律事務所までアクセスさせることは容易ではありません(もちろん,そのための努力は続けています。)。
しかし,一度,原総合法律事務所の法的サービスを受けた人は,そこで満足,納得を得ていれば,リピーターになってもらえますし,周囲にも原総合法律事務所を紹介してもらえます。
不特定多数の人たちに広報するよりは,ずっと効率的,効果的な広報です。

そのためには,事務所に来られた相談者,依頼者に向けてのブランディングが考えられなければなりません。

ここでのキーワードは,相談者,依頼者の満足であり,納得です。
結果として勝ったのか,負けたのかにかかわらず,相談者の望む結果にそったアドバイスができたのか,できなかったのかにかかわらず,満足,納得を得ることは可能ですし,満足,納得を提供しなければなりません。仮に,結果として勝ったとしても,また,相談者の望む結果にそったアドバイスができたとしても,相談者,依頼者に不満が残り,納得が得られなければ,その相談者,依頼者は,二度と原総合法律事務所には来ないはずです。
勝ち負けでいえば,半分は負けるわけですから,負けるにしても,正当に負けて,負けることに納得してもらわなければ,その相談者,依頼者は,もう原総合法律事務所はもちろん,どんな弁護士のところも訪れないでしょう。

最近,弁護士の仕事は,経済的な結果ではなく,法的トラブルから「更生」してもらうことだと認識を新たにしているところです。
勝ち負けにかかわらず,弁護士の法的サービスを受けることで法的トラブルから「更生」できた人は,また法的トラブルに遭えば,法律事務所に来てくれるのです。

では,そのためにどうすればいいかといえば,何かテクニックやマニュアルがあるわけではありません。
もちろん,法的知識やノウハウが豊富であることは前提ですが,その上で,上から目線ではなく,真摯に話しを聞き,持てる知識やノウハウを総動員して,解決方法を考えることです。それでも「だめ」であれば,相談者,依頼者は,ほとんどの場合納得するというのが,24年近くに及ぶ経験の教訓です。
面倒くさいとか思ったり,やりたくないとか思うと,すぐに相談者,依頼者には伝わるものです。そういう気持ちで対応をされれば,相談を受けても,依頼しようとは思わないでしょう。
また,マニュアル類で要領よく答えたり,書面を書くと,不思議とその「手抜き感」が相談者,依頼者に伝わるものです。

やはり,問題はモチベーションであり,真摯さであり,謙虚さだと再確認しています。圧倒的な努力がないところに信頼は生まれませんし,ブランディングはできません。法律事務所のマーケティングは,テクニックの問題ではないのです。逆に,新人であっても,圧倒的な努力があれば,テクニックどうのこうのという問題ではなく,経験を積んでいく中で,自然にブランディングされていくのです。

ちなみに,そうやって真摯に対応していると,依頼を受けたときには,問題があるようにも思われた依頼者が,変わっていくこともありました。まさに,法的トラブルからの「更生」です。

2011/11/20

20 法律事務所ブランディングのよくある質問


20 法律事務所のブランディング3-ブランディングのよくある質問

法律事務所のマーケティング戦略(弁護士のマーケティング戦略)に関わって,私がパネリストを務めた日弁連第17回弁護士業務改革シンポジウム第1分科会の打合せや当日のパネルディスカッションで出された質問です。
法律事務所(弁護士)のマーケティングやブランディングについて,本質的な点に関わる疑問だと思います。

Question
若手でもなく,既に多くの事件を扱っていたのに,更にブランディングし,マーケティングに取り組もうとしたのはなぜですか。

Answer
原総合法律事務所が,ブランド化を議論し,マーケティングの視点を確立したのが,2008年ですから,私が弁護士になって20年,独立してからも16年が経っていました。
既に,消費者問題や高齢者関係,また医療過誤や交通事故については,かなりの経験も積んでいましたし,信頼も得ているという自負もありました。
しかし,まだまだ,原総合法律事務所の法的サービスを届ることができていない市民,中小企業が多かったわけで,そこに私たちの法的サービスを提供するための取組みが必要だと考え,そのためにブランディングやマーケティングの視点を取り入れたのです。

Question
都市部と地方で,どちらがブランディングが難しいでしょうか。

Answer
地方で,基本的人権の擁護や社会正義の実現という弁護士の使命をふまえ,真摯に業務に取り組めば,自然に信頼を得て,ブランディングできます。地方の方が,ブランディングは容易です。
確かに,その地域の人口を弁護士数で割ると,弁護士1人当たりの人口は地方の方が多いのでしょうが,法律事務所,弁護士の絶対数が少ないので,「特定」の弁護士が目立ちます。例えば,メディアに載る機会も地方の方が圧倒的に多いのです。また,口コミを通じて「特定」の弁護士の業務に取り組む姿勢が,より容易に広がります。
「大勢」の中に埋没せず,「特定」の弁護士の存在感が示せる地方の方が,ブランディングが容易なのは明らかでしょう。(ただし,逆に,「特定」の弁護士のマイナスイメージも容易に広がり,なかなか忘れられないのが地方です。)

Question
一つの法律事務所がマーケティングを進めると,他の法律事務所との間で「顧客の奪い合い」になるではないでしょうか。

Answer
全ての法的トラブルを弁護士が扱っているのであれば,ある法律事務所が「顧客」を獲得すれば,他の法律事務所の「顧客」が減ることになり,「顧客の奪い合い」になるのはそのとおりでしょう。
でも,現実には,日弁連等の統計を持ち出すまでもなく,法的トラブルを抱えながら,弁護士にたどり着かない市民,中小企業は多いのです。これまで弁護士にたどり着いていなかった市民,中小企業に弁護士の法的サービスを提供するのは,新たな「顧客の創造」であって,「顧客の奪い合い」でないことはいうまでもありません。
そして,原総合法律事務所は,まさにこれまで弁護士の法的サービスを受けたことがない層に弁護士の法的サービスを届ることをマーケティング戦略の目的とし,そのためにブランディングを進めているのです。

Question
大々的に広告をうち,多くの事件を受任している法律事務所で,事件処理が丁寧でなかったり,不適切ではないかと思うところがあるのを見ると,マーケティングやブランディングにはマイナスイメージがつきまとうのですが。

Answer
マーケティングは,顧客の満足を目的としますし,ブランディングは,顧客の信頼を前提とするのですから,事件処理が丁寧でなかったり,不適切では,そもそもマーケティングとはいえませんし,もちろん,ブランドにもなり得ません。
私たちが進めるマーケティングは,法的サービスを必要とする市民に適切な法的サービスを提供しようとする仕組みで,その結果,市民の信頼を得ているのが,私たちが考えるブランディングされた法律事務所です。

2011/11/18

19 ブランドのアピール(法律事務所の場合)


19 法律事務所のブランディング2-ブランドのアピール

前回,法律事務所のブランディング編1で,事務所の軸=理念(ストーリー)に貫かれた実践の歴史(ヒストリー)が,法律事務所のマーケティング戦略上,ブランディングに不可欠なことをお話ししました。
事務所の理念がはっきりしなかったり,軸がぶれていたりすれば,もちろん,そんな法律事務所はブランドにはなり得ませんし,圧倒的な努力に裏打ちされた実践の歴史がなければ,そんな法律事務所もブランドにはなり得ません。

しかし,理念実践の歴史があれば,ブランドとして十分かといえば,原総合法律事務所にとっては,まだ不十分です。
それは,原総合法律事務所のマーケティング戦略の基礎となる理念が,「いつでも,どこでも,だれにでも 上質な法的サービスを。」広く市民,中小企業に提供することだからです。
原総合法律事務所のブランドを広く市民,中小企業に浸透させなければなりません。
そこにはアピールの工夫が必要となります。

この点は,既に広報に関わって既に数回に分けてふれたことがあるので,ブランディングという観点からのまとめです。

まず,ブランディングに重要な広報は,以前,06 広報を考える1-効果のとらえ方で分類したタイプⅠのかなり間接的な広報です。直接的に相談や依頼に結びつくわけではないけれども,原総合法律事務所の存在を地域に行き渡らせるための広報,例えば,テレビ・ラジオのCM,新聞・広報誌の広告,電車・バスの広告等がそれです。
これら媒体は,一定期間は継続的に行わなければ,効果はありません。
そこで,費用とのバランスを考えることになりますが(そこで,何といっても高額なテレビは除外されます。),経験的には,地方では,市の広報誌ラジオのCMなどがお勧めかと思います。特に,ラジオのスポットのCMは,地方では,移動に車を使うことが多く,結構聞かれています。また,こういったスポットのCMを流していると,パブリシティというおまけで番組枠がもらえたりします。原総合法律事務所では,今は月1回ですが,5分間の「ラジオ法律相談」の枠を持っており,これも結構聞かれています。

ところで,各種の新聞や広報誌などに広報を打つ場合,気をつけなければならないのが,07 広報を考える2-統一されたイメージで言ったように,イメージを統一することです。
各媒体毎に広告代理店が異なるため,業者任せにすると,デザインやキャッチコピーがバラバラになり,同じ法律事務所と認識されないおそれがあります。なかなか業者にはイメージが伝わらず,経験的には,案を数回手直ししないと思ったイメージには仕上がってこないものです。ここは,安くないお金を出すわけですから,手間をかけてでも,校正を重ねるべきです。
最近は,ロゴマークは持っている法律事務所も増えてきましたが,更に進んで,広報のデザインを統一するわけです。具体的には,フォント,色調,背景に具象を使うのか,抽象を使うのか,曲線を使うのか,直線だけにするのか等を制限します。
そして,文字情報は,できる限り少なくすべきです。この手の広報は,どうせ読み流されるだけで,熟読されるものではありません。極論すれば,事務所名さえ記憶に残すことができれば,後は,HPや電話帳から検索可能です。
さらに,具体的に表現するのは難しいのですが,感性,センスが統一されていることも必要です(このあたりは,デザインの優れた広告等を見て,自らの感性,センスを磨くしかありません。)。

この方向を徹底すると,<番外編3>のイメージポスターになるわけですが,さすがに,原総合法律事務所でも,このイメージポスターは,まだ事務所内に貼り出しているだけで,外には貼り出していません。しかし,いずれは,これに近いものは試してみたいと思っています。
ちなみに,最近の原総合法律事務所の広報のイメージが,このイメージポスターに集約されていると説明すると,その感性,センスを分かってもらえるでしょうか。

そして,このイメージポスターの手法は,実はブランディングという観点からは他の広報媒体でも有効なのではないかと考えています。
世のブランドと言われる商品やサービスを見ると,一方でその商品やサービスの内容をストーリーをもって説明する広報もあれば,他方で,ほとんど文字情報を含まないイメージだけの広報もあります。(このあたり,マネージャーのブログでもふれています。→NO61 イメージ作りのススメ
このイメージだけの広報は,インパクトをもって人の意識にその商品やサービスを残すという意味で,ブランディングにとっては有効な手段だと思えます。
ただ,法律事務所では,そのような広報を行っている例は,見当たりません。
確かに,実践の歴史=ヒストリーがなければ,イメージだけの広報を行っても,むしろ軽薄な印象を与え,逆効果でしょうが,既に実践の歴史のある法律事務所であれば,イメージだけの広報に踏み切ることも考えていいと思います。

そこで,原総合法律事務所では,まず,イメージポスターを作ってみましたが,同様の手法の他の広報も考えています。その際は,ブログ上でもお知らせしたいと思います。

2011/11/13

業革シンポジウムを終えて

<コラム編4>業革シンポを終えて

日弁連第17回弁護士業務改革シンポジウムで得たことは,今後の原総合法律事務所のマーケティングに生かし,その結果は,このブログでご報告することになると思いますが,まずは取り急ぎの感想です。

第一に,このシンポジウムを通じて,確信したのは,マーケティングは人権課題だということです。
原総合法律事務所の場合,その理念は,「基本的人権の擁護と社会正義の実現」を軸に,「いつでも,どこでも,だれにでも 上質な法的サービスを。」届けようというものですから,そのマーケティング戦略も当然に「基本的人権の擁護と社会正義の実現」を目指すものでした。
しかし,考えてみれば,全ての弁護士が,「基本的人権の擁護と社会正義の実現」を使命としているのですから,そこでまっとうなマーケティング戦略を考えれば,「基本的人権の擁護と社会正義の実現」が軸となるのは当然です。意識的か,無意識的かの違いはあれ,第1分科会の基調報告はもちろん,各パネリストの発言も,「基本的人権の擁護と社会正義の実現」が軸にあったと感じました。
そのことを再認識させられたのが,懇親会での宇都宮日弁連会長とのちょっとした会話でした(ちなみに,そのときの様子は,マネージャーのブログを→「シンポジウム(「ぼんやり振り返り」)のススメ」)。宇都宮会長も,第1分科会を一部ご覧になっていたようで,業務改革やマーケティングの文脈で語られる過払いが,一連の最高裁判決以前の消費者問題を人権課題と位置付け取り組んできた弁護士たちの戦いの成果であることを話しておられました。それは,同じように,当時,困難だった過払事案に取り組んできた原総合法律事務所の思いでもありました。(その関係で,宇都宮会長とは以前から面識があったわけです。)
そこで,これからは,マーケティングが人権課題であることを明確に意識し,打ち出していきたいと思います。

第二に,しかし,依然として,弁護士にマーケティングの意識は薄いということ。それなりの意識を持って参加されたと思われる第1分科会の皆さんにとっても,刺激的を通り越して,衝撃的な内容だったかもしれません。
とりわけ,他の弁護士のパネリストが全員50期代という中で,40期の私には,経験をふまえた原則的な発言が求められていると理解しました(原則的というのは,前で述べた,マーケティングも「基本的人権の擁護と社会正義の実現」の視点で取り組まなければならないということです。)。
しかし,その発言は,「普通」の弁護士の認識とはかなりかけ離れたものになっていたようです。原総合法律事務所の中で業務していると,あまりに当たり前なことで,「普通」の弁護士の認識との違いに気がつかないというのが本当のところです。
このシンポジウムが転機になったといわれれば嬉しいのですが。

第三に,やはり,日弁連のレベルはすごいということ。
第1分科会以外の気になる分科会の基調報告書を読んでいるところですが,まずは第10分科会です。高齢社会対策本部が担当した分科会で,「高齢社会におけるホームロイヤーの役割~高齢者へのトータルな支援を目指して~」というタイトルの分科会です。
その問題意識は,高齢者の財産管理,財産承継(遺言など)に弁護士が十分な対応をしていない現状をふまえ,福祉・医療専門職や専門機関の連携の司令塔的役割を弁護士が担い,高齢者をトータルかつ継続的に支援する「ホームロイヤー」を広めようというものです。
実は,原総合法律事務所でも,同じ問題意識から,新しいマーケティング戦略として,原総合法律事務所を核とした各専門家のネットワークを作ろうと考えていたところでした。「ホームロイヤー」は,まさに原総合法律事務所のいう「かかりつけ弁護士」です。
それをマニュアル化し,弁護士会として広げようという議論が始まっていたことは知りませんでした(長崎県弁護士会の会長に就いた後,日弁連の高齢者の委員会や高齢社会対策本部から離れてしまったもので。)。
また,最後についているケーススタディも使えそうです。

取り急ぎの感想でした。

2011/11/12

業革シンポジウム参加のお礼


<お礼編>日弁連弁護士業務改革シンポジウム参加のお礼

先ほど,昨日の横浜での日弁連第17回弁護士業務改革シンポジウムを無事終え,長崎に戻ってきました。

シンポジウムで得たことは,今後のこの法律事務所のマーケティングのブログに生かしていくとして,まずはブログを借りてのお礼です。
第一分科会「小規模法律事務所におけるマーケティング戦略~さらなる依頼者志向へ~」のパネリストとしての参加でしたが,シンポジウムを支えた運営委員の皆さん,パネルディスカッションをコーディネートしていただいた橋本先生,皆川先生,パネリストとして刺激的なお話しをうかがえた元榮先生,大山先生,堀先生,大木様,ありがとうございました。このシンポジウムで,また,法律事務所のマーケティングやマネジメントの新しい試みの種を見付けたような気がします(法律事務所のマネジメントについては,こちらで)。
そして,何よりも,パネリストに推していただいた(だけではなくて,交代していただいたのですが)小松先生,本当にありがとうございました。小松先生とつながることができたのが,原総合法律事務所の転機でした。(小松先生のシンポの記事です→参加者約2000名で第17回弁護士業務改革シンポ開催1

また,シンポジウムに参加された皆さん,お疲れ様でした。
かなり先鋭的な話しと思われたかもしれませんが,できれば,このブログを最初から読み返して,もう一度考えてみていただければ幸いです。「基本的人権の擁護と社会正義の実現」を徹底するために,法律事務所のあり方を考えていけば,法律事務所も変わっていかざるを得ないと考えています。
何人かの方からは,会場で直接感想もうかがいましたが,もっと感想を聞かせていただければ幸いです(このブログにはコメントできないので,原総合法律事務所のHPにある「お問い合せ」フォームをご利用ください。)。

ということで,弁護士のマーケティングのブログは,まだまだ続きます。

2011/11/06

18 法律事務所ブランディングの基礎


18 法律事務所のブランディング1-ブランディングの基礎

弁護士アクセス編「もっと身近な弁護士であるために」をいったん中断して,法律事務所のブランディングについて考えてみることにします。
11月11日の日弁連弁護士業務改革シンポジウム第1分科会にパネリストとして参加予定であることはアナウンスしましたが,事務所のブランディングもテーマなので,実はそのための準備です。)

原総合法律事務所では,2007年ころ,事務所のビジョンを考えるようになり,既に事務所の「ブランド化」を話題にしていたことをお話ししました。このブログの冒頭でしたが(02),「法律事務所にブランド???」と思いませんでしたか。
しかし,従来から,地域の有力な法律事務所は,その意識はなかったと思いますが,既に「ブランド」でした。
そう言われればそうかもしれないけれど,やっぱり法律事務所とブランドは馴染まないと思われた方,今回のブログは,そういう方が対象です。

ブランディングにも様々な意味付けがなされているようですが,差別化された価値の創造というのが共通項でしょうか。要するに,「ここは違うよなぁ。」と思わせることです。
「原総合法律事務所は違うよなぁ。」と思わせることで,原総合法律事務所の理念である「いつでも,どこでも,だれにでも 上質な法的サービスを。」広く市民に提供できるようになるわけです。更にいえば,「弁護士は違うよなぁ。」と思わせることができれば,全体としての弁護士へのアクセスが改善されるはずです。
弁護士,法律事務所(更には弁護士会,日弁連)のブランディングが必要な理由がここにあります。

そのために私が重要だと思っているのは,ストーリーヒストリーです(このフレーズ,さっき思いついたので,多分,本来の概念とは違います。念のため。)。

まず,ブランドにはストーリー=軸が必要です。事務所のビジョン・理念です。
そして,そのビジョン・理念の実践の歴史ヒストリーが必要です。

このブログでは,原総合法律事務所のビジョン・理念については,繰り返しふれてきたところですが,「実践の歴史」については,詳しくお話ししたことがありません。
そこで,原総合法律事務所がどのようなブランディングを行ってきたか,まず,「実践の歴史」を振り返ってみたいと思います。

原総合法律事務所は,1992年の設立以来,当初は,消費者関係の事件が業務の中心でした。地縁,血縁がないところでの開業でしたから,顧問や依頼者からの紹介の事件は少なく,法律相談センターからの受任や先輩弁護士からの紹介が主でした。
そのような事件の中には,結構,事実関係が面倒で,法律構成が難しく,でも少額の消費者関係の事件が数多くありました。例えば,クレジットの名義貸しだったり,先物取引だったり,過払いだったり(最高裁の判断が積み重ねられる前の過払い事件は,次々に出される未登載の下級審判決をフォロー,整理し,新しい法律構成も求められる「重たい」事件でした。),商工ローンだったり(日栄の引直し計算は独特でしたし,手形の取立てを止めるのも大変でした。商工ファンドの根保証も熾烈な主張,立証を繰り返していました。),そして破産・個人再生などです。
その「実践の歴史」の中で,原総合法律事務所は,消費者問題について,差別化,専門化し,消費生活相談員との信頼も築いていきました。

次いで,2000年ころから,高齢者関係の委員会に所属し,高齢者に関わる専門職や福祉関係者,行政とのネットワークにも積極的に参加し,高齢者関係の事件も扱うようになってきました。
その間,2008年度には日弁連高齢者・障害者の権利に関する委員会副委員長も経験する「実践の歴史」の中で,福祉に関わる機関や個人との信頼も築いてきました。

また,弁護士になった当初から,医療過誤にも患者側で積極的に取り組んできました。
この10年くらいは,事務所独自で医学文献を揃え,データベースにもアクセスできる環境を作り,また,医師との関係も作っていく「実践の歴史」の中で,医療過誤についても信頼を築いてきました。
その結果,最近は,常時10~15件の医療過誤を扱っています。

その医学的な蓄積を前提に,交通事故にも被害者側で取り組んできましたが,特に,傷病との因果関係や治療の必要性など,原総合法律事務所の知識と経験が有効です。
そこで,2011年8月,交通事故専門の相談窓口をスタートし,県や市の交通事故相談員との勉強会なども行い,ここでも差別化と信頼を得つつあります。その結果,最近は,交通事故だけで月に10~20件の新件相談を受けています。

そして,私のこれまでの弁護士業務のかなりの部分を占めたのが,原爆症認定訴訟です。私が弁護士になった1988年,長崎原爆松谷訴訟が提訴されますが,この事件で,2000年,最高裁がはじめて原爆症認定訴訟で被爆者勝訴の判断を示し,その後の集団訴訟の被爆者勝訴の流れを決定づけたのです。私は,20年余にわたり,この原爆症認定訴訟に関わり,最後は長崎弁護団の事務局長として,訴訟の実務面を取りまとめました。
この事件の中心にいたことは,被爆地長崎では特別な意味を持ち,信頼,そして事務所のブランディングにおいても意味がありました。

このような事務所の軸=理念(ストーリー)に貫かれた実践の歴史(ヒストリー)が,原総合法律事務所の現在のブランド力を支えているのです。

しかし,このブランド力も,広く市民,中小企業に伝わらなければ,原総合法律事務所の理念である「いつでも,どこでも,だれにでも 上質な法的サービスを。」広く市民,中小企業に提供できることとはなりません。
そこには,アピールの工夫が必要となります。
(続く)

* 平行して,マネージャーのブログでも,現在,ブランディングがテーマになっています。ご参照ください。こちら→オフ編ながらのブランディングのススメ同ver2同ver3

2011/11/03

法律事務所のイメージポスター?


<番外編3>法律事務所のイメージポスター?

以前,原総合法律事務所では,ポスターを作っていることを,その写真と一緒に紹介しました(08)。
「法律事務所にポスター???」と思われた方も多いかと思いますが,要は,見た人に事務所のイメージを残すことです。そのイメージが残っていれば,いつか法的トラブルに遭ったときに,事務所のことを思い出して,相談してみようかとなります(広報の効果「タイプⅠ かなり間接的」なやつです。06)。
とは言いつつ,そこら中に貼り出す勇気はなく,JR長崎駅前広場に貼り出しただけでした。でも,乗降客は多いので,結構目にとまっていたようです(「ポスター見ました。」と言われることがありました。)。



あわせて,最近は,広報のイメージを,よりシャープなものとし,色調をよりシンプルにグレー基調にしていることを紹介しました(08)。それも,インパクトを狙ってのことです。

この方向を徹底すると,イメージポスターにたどり着きます。
法律事務所のイメージポスターなど,聞いたことがないと思いますが,これも法律事務所のマーケティングの一手法です。
実際には,こんな感じです。


漢字版も並べて貼ると効果的です。



今のところは,事務所内の受付や相談室に貼り出しているだけですが,一部には好評です。ポスターなど,どうせ見過ごされるのが宿命の広報媒体ですから,一部でも好評であれば,目的は十分達しています。
かつ,このポスターのセンスに共感する人は,多分,原総合法律事務所の「熱い」ファンになってもらえる人と思ってもいるのです。結構,こういった感性は,選択(いくつかの法律事務所からどれを選ぶか)のポイントです(少なくとも私の場合は。)。
そこで,現在,原総合法律事務所のHPも,このポスターのイメージに変更中です。

ロゴをブランドイメージにする例は法律事務所でも出てきましたが,原総合法律事務所では,更に進んで,全ての広報のデザインもブランドイメージに位置付けています。

まさに,イメージだけのブログでした。

(追記 2011/11/04)
マネージャーの法律事務所のマネジメントのブログでも,その狙いがテーマになっています。→「オフ編ながらのブランディングのススメ

2011/10/30

17 弁護士費用から考える


17 もっと身近な弁護士であるために4-弁護士費用から考える

前回,法律事務所のマーケティングに関わって,「法律相談」を考えるにあたって,最後に無料相談にふれました。
今回は,無料相談以外の弁護士費用(弁護士報酬)全体について,弁護士へのアクセス(障害)の視点からまとめて考えてみます。

ここでも,やはり,これまで弁護士を利用したことのない市民・中小企業が,弁護士費用をどのように考えているかが検討の視点になるべきです。

一番,よく聞くのが,「弁護士に頼んだら,いくらかかるのか見当がつかず,怖くて頼めない。」という声です。
もっとも,2004年4月1日の弁護士法改正以前は,各弁護士会に報酬基準があったわけですし,その後は,各事務所で報酬基準を作成しています。また,日弁連でも「目安」を作成しています。そして,最近では,各事務所がHPなどで報酬基準を公表しています。
そこで,私も,弁護士費用が分からないと言われるたびに,「事務所ごとに報酬基準を決めて,HPなどで公表しているんですけどねえ。」と弁解しつつ,ちょっと調べれば分かることなのにと思っていたのが正直なところでした。
しかし,誰からも繰り返し同じことを言われるということは,まだ弁護士側の取組みが不十分なのだろうと考え直しました。

そこで,HP上での説明は,従来の報酬基準を詳しく説明するものに加え,2011年7月,分かりやすく説明するページを追加しました。そこでは,具体的なケース毎の弁護士費用の目安も,典型的なものに限ってですが,載せています。今後は,更に具体的なケースの数を増やすことや,主な事件類型の説明のページ,よくある質問などのページから,この具体的な弁護士費用の目安のページに飛ぶリンクをはることなどを進めなければいけないと思っています。

そして,HPにこの分かりやすい説明のページをアップするのと同時に,「弁護士費用ガイド」というリーフレットも作り,相談室内に置くのはもちろん,各種のセミナー等で配布するようにしました(というか,このリーフレットをHP上にアップしたのが,上記の分かりやすく説明したページです。)。
この「弁護士費用ガイド」というリーフレットは好評で,各種リーフレットのうち,一番減りが早いと思うのが,実はこの「弁護士費用ガイド」だったりします。

また,2007年7月,現在の事務所に移転したときには,各相談室の相談者の正面の壁に相談料を掲示するようにしました。こんなことでも,相談者には意外なようで,「相談料がはっきり書いてあるんですね。」という声も耳にします。
ちなみに,それまでは,相談が終わり相談料の話しをすると,「相談にお金がかかるとは思わなかった。」という人がときどきいましたが,予約の電話の際,相談料がかかることを告げ,加えてこの掲示をするようになって以降,そのような人はいなくなりました。

次に,「相談したら,依頼しなければいけないのでは。」という誤解の声も聞くことがあります。相談料だけでは終わらないと思えば,それは確かに相談に行くのもハードルが高いでしょう。
そこで,そんな誤解にも対応するよう,弁護士費用ガイドには,次の流れを冒頭に書き込んでいます。
① まず,相談をする。
② 弁護士費用の見積書を受け取る。
③ 見積書を持ち帰って,依頼をするかどうか検討する。
日弁連の「弁護士の報酬に関する規程」では,見積書は,「申し出があったとき」に作成すればいいことになっていますが(4条),原総合法律事務所では,必ず見積書を作成し,弁護士費用を確認してもらった後に受任を受けることにしているのです。
この見積書も依頼者にとっては意外なようです。

そして,もちろん,「弁護士費用は高くて払えない。」という声もあります。
そのためにあるのが,まず,法律扶助です。原総合法律事務所では,法律扶助にも積極的に対応しているので,かなりの数を受けています。
原総合法律事務所のHPでも,法律扶助については詳しく説明していて,このページは,実は原総合法律事務所のHPの中でも良く読まれているページの一つです。それだけ法律扶助のニーズは高いということですが,よくあるのが,法テラスの事務所に行かなければ法律扶助を利用できないという誤解です。そこで,これらのよくある誤解についても,原総合法律事務所のHPでは冒頭のQ&Aを追加しています。
ただ,現行の扶助は,最近,例外も制度化されましたが,原則は償還なので,どうしても着手金や報酬金の基準が低額に過ぎます。着手金や報酬金の適正化は,重要な課題です。

また,原総合法律事務所では,独自に着手金等の分割もケースに応じて受けています(例えば,破産等については,こちら)。
ただ,分割計画は,きちんと守ってもらわないと信頼関係が壊れますから,支払が遅れたときの督促など,担当者を決め,マニュアル化しておくことが必要です。報酬金の長期の分割については,銀行の自動引落も利用したことがあります。

最近,急に増えているのが交通事故被害者の弁護士保険(権利保護保険)の利用で(毎月のように,この保険を利用した依頼があります。),これは,確実に弁護士へのアクセスを容易にしています。そこで,原総合法律事務所のHPでも,その説明をするようにしました
ところが,この保険は,契約者の家族も対象となったり,乗車中の事故でなくても対象となったりするにもかかわらず,使われていないことが少なくないようにいわれています。そこで,原総合法律事務所では,交通事故の被害者の相談では,家族の自動車保険も含めて確認することにしています。

2011/10/23

16 様々な相談の形


16 もっと身近な弁護士であるために3-様々な相談の形

法律相談が法的なトラブルを抱えた市民・中小企業と弁護士との最初の具体的な接点です。
したがって,「法的サービスにアクセスできていない市民,中小企業に対し,…法的サービスを提供できる事務所であること」を理念とし(02),「法的ニーズのある人が,『いつでも,どこでも,だれでも』相談を受け,依頼できるようにする」ことをマーケティング戦略に掲げている原総合法律事務所としては(03),徹底的に「ユーザー目線」に立った様々な相談の形を打ち出さなければなりません。

まず,原総合法律事務所において,マーケティングの手法として最も有効であったし,マネジメントの面で弁護士・事務局の意識を変えるという意味でも転機になったのが「即日相談」であったことは,このブログの冒頭に強調しました(0405)。しつこいようですが,即日相談に対応できる体制を作り,相談の予約を受ける際,「今日でも相談をお受けできますが,ご希望の日時はありますか。」と答えるようでなければ,弁護士のハードルは下がりません。
原総合法律事務所では,アンケートやヒアリングなど様々な形で市民の声を聞くことを心がけていますが(その具体例もいつかお話しします。マネージャーのブログ「工夫したヒアリングのススメ」参照),つい先日も,古くからの依頼者の方に,弁護士の「敷居が高い」とか「ハードルが高い」と思われていないかヒアリングしたところ,最初に言われたのが,「相談予約が何日も後になってしまうこと」でした。
やはり,ここです。原総合法律事務所などの限られた事務所が即日相談に対応するというレベルではなく,法律事務所というのは,その日に相談に応じてもらえるものだというイメージが広がるように,「業界」を上げて取り組む必要があると再認識させられました。

これに対し,夜間相談土曜相談に応じている事務所は増えてきていると思いますが,ここには市民のニーズはそれほどないようです。原総合法律事務所でも,月2回の土曜相談を行っていますが,相談が1件も入らないときがかなりあります(昨日も土曜相談でしたが,0件でした。)。
土曜は休みという認識が一般ですし,夜間相談についていえば,相談したいことがあれば,仕事を休んででも相談に行こうと思うのであって,仕事を終えて心身ともに疲れた状態で,最初の相談を受けに行こうとは思わないのでしょう。
なお,夜間相談や土曜相談を行う場合は,全く見ず知らずの方の新件相談を受けるのですから,安全上の配慮も必要です。事務所に弁護士が1人しかいない状態で,新件相談を受けてはなりません。原総合法律事務所では,夜間相談や土曜相談を行う場合は,必ず事務局にも残業,土曜出勤してもらいます(原総合法律事務所は,危機管理についても厳重です。)。

電話相談については,否定的ないし消極的な事務所が多いと思いますし,原総合法律事務所でも,面談での相談を原則としています。電話では,どうしても細かなニュアンスが伝わらず,面談でのコミュニケーションが望ましいからです。
しかし,高齢や障がいのために来所されるのが負担であったり,入院・入所されていて来所が困難な方,あるいは県外や海外など遠方に住んでおられて,来所が不可能な方については,例外的に電話での相談にも応じることがあります。
ただ,電話相談は例外的な場合ですから,どのような場合に電話相談に応じるか,応じる場合の方法,相談料をどうするかなど,事前にマニュアル化しておくべきでしょう。ちなみに,原総合法律事務所の場合,電話相談に応じることになった場合は,事務所として無料相談の対象にしている類型でなければ,事前に相談料を振り込んでもらい,日時の調整をした上で,相談者から電話をかけてもらっています(もちろん,必要な資料は,事前にファックスか郵送してもらいます。)。
なお,スカイプを使ったテレビ電話相談にも応じる体制はありますが,相談者側からの希望がほとんどありません。
ちなみに,更に進んで受任に至る場合は,原則として,面談をお願いするのは当然です。

また,病院や施設におられて,来所ができないのであれば,出張相談に応じる場合もあります。もっとも,少なくとも交通費は負担してもらうことにもなるので,電話相談でもすみそうな内容なら電話相談に誘導しているのが実情です。

さて,このような時間や場所の問題と並んで,相談料の問題も,市民・中小企業の側からすれば,やはり弁護士アクセスの障害となっている面は否定できません。
もっとも,本来,法律相談という弁護士の法的サービスには,適正な対価が支払われるべきです。
悩ましい問題なのですが,原総合法律事務所では,他事務所でも相談料を無料化している類型については,対抗上,相談料を無料にしています。多重債務,交通事故の被害者(専門相談窓口で3回まで無料化),遺言・相続が対象でしたが,今は,試験的に,期間限定で不動産関係も無料にしています。既に,あらゆる相談(少なくとも初回相談)を無料化している事務所も表われていますが,扶助要件を満たす場合に扶助相談を利用するのはともかく,資力があるのであれば,相談料を支払うのが当然という原則は曲げたくないのです。
また,原総合法律事務所では,ほかにも,様々なルートで無料相談券を配ったり,Law Support 佳朋の個人の利用者には年1回の無料相談のサービスを付帯したりしていますが,それとの差別化を維持する必要もあります。全ての相談を無料化すると,これらサービスの価値(お得感)がなくなってしまいますが,それは避けなければなりません。

2011/10/21

弁護士のセカンドオピニオン

<コラム編3>弁護士のセカンドオピニオン

弁護士と同じく「プロフェッション」とされる医師の提供する医療が「サービス」であることが公に認知されたのは,1995年の厚生白書だそうです。
以前は,怖そうな医師に診てもらい,十分な説明もなければ,質問もできず,医師の指示する薬を飲んでいるだけというイメージがありました。
しかし,今では,受付はもちろん,医師や看護師もにこやかで,医師は優しく説明してくれ,質問だってできるというイメージが広がってきました。もちろん,専門家として提供する医療の水準が前提ではありますが,同じ医療の水準であれば,最近の病院のイメージが望ましいのはいうまでもありません。

原総合法律事務所では,「サービス業の視点」をキーワードの一つにしていますが(04),医師・病院と同様の意識改革が,弁護士・法律事務所においても必要だと考えています。

例えば,悩み事を抱えやって来る相談者に対して,弁護士,事務局が怖そうだったり,ぶっきらぼうだったりしては,それだけで市民は弁護士にアクセスしなくなるでしょう。それでは,原総合法律事務所のマーケティング戦略である法的サービスにアクセスできていない市民,中小企業に対する法的サービスの提供は実現できません(03)。

また,医療におけるインフォームドコンセントは,法的サービスの提供にあたっても,同様に重要です。法的に考えられる選択枝をそのメリット・デメリットを分かりやすく明らかにし,専門家として適切に助言した上で,十分納得してその法的手続を選択してもらわなければなりません。
それがなければ,たとえ結果として勝利したとしても,依頼者は満足を得られず,もう弁護士のところ(少なくとも,その法律事務所)には来ないでしょう。

さらに,医療の世界では常識になりつつあるのに,弁護士の世界で日陰者なのが,セカンドオピニオンです。
しかし,実は,原総合法律事務所では,以前から,セカンドオピニオンとしての相談にも応じてきました。他の事務所に依頼しているという方から相談の問い合せがあっても,相談だけなら構いませんというスタンスでした。
また,原総合法律事務所の相談者や依頼者が,他の事務所にセカンドオピニオンを聞きに行くことも,同じように構わないというスタンスでした。
法律事務所によって,その提供する法的サービスに違いがあるのはやむを得ないことで,相談者・依頼者には,自分の責任でそれを選ぶ自由があると思うのです。また,原総合法律事務所は,その選択に耐えうる事務所になりたいと思っているのです。

そして,そういう立場をHP上でも明らかにしました(こちら→「セカンドオピニオン」について。マネージャーのブログでも,番外編セカンドオピニオンのススメ)。
同じような立場の法律事務所は,実はそれなりにあると思うのですが,そのことを明らかにすることで,セカンドオピニオンを陽のあたる場所に出し,弁護士全体の法的サービスのレベルを上げ,弁護士全体の信用を増すことができないかと考えているところです。



(追記 2011/10/26)

仙台の小松先生が,HPにかつての倫理規定と現行の職務基本規程との関係(10/24 弁護士業務についてのセカンドオピニオン-職務規程では?)やセカンドオピニオンの難しさ(10/25 弁護士業務についてのセカンドオピニオン-結構難しい?)について書かれています。ぜひ,ご覧いただきたいと思います。
セカンドオピニオンは微妙だし,対応が難しい場合が多いのですが,セカンドオピニオンで,総体としての弁護士の信用を維持し,個々の弁護士の懲戒といった最悪の結果を避けることもできるのではと思っています。

2011/10/19

15 セミナーを違った視点で


15 もっと身近な弁護士であるために2-セミナーを違った視点で

顧問先(あるいは顧問先になってもらいたい人)を対象にセミナーを開いている事務所は多いようです。
それが,その法律事務所のマーケティング上,顧問先の維持や関係の強化,顧問先の開拓に結びつくからでしょう。

でも,原総合法律事務所では,ちょっと違ったセミナーに力を入れています。
それは,原総合法律事務所のマーケティング戦略が,法的サービスにアクセスできていない市民,中小企業(特に,ここでは市民)をターゲットにしているからです(03)。
顧問を依頼できる企業よりも,顧問を依頼することのできない市民が圧倒的に多数なのですから,その層を弁護士・法律事務所にアクセスさせるセミナーがあってもいいと思いませんか。

例えば,原総合法律事務所では,上記のマーケティングの視点から,公民館での講座を無料で開催しています(最近の実績はこちら)。
公民館では,地域住民を対象に,いろんな講座を開講していますが,法律に関する講座はほとんどありません。それは,地域住民の法律問題に関する興味が乏しいからではなく,公民館の予算上の問題です(要するに,講師に支払うお金がないのです。)。そこで,従前,公民館では,お金のかからない裁判所や法務局の職員に,法律に関する講座の講師を依頼していた実態がありました。
私たちが,市内の公民館を回り,講師料はいらないから法律に関する講座を開かないか持ちかけたところ,ほとんどの公民館が,講座を企画してくれました。中には,講座に続いて,無料法律相談会を開くことを受け入れてくれた公民館もありました。
講座自体は,直ちに事件に結びつくというわけではありませんが,市民が「生の」弁護士にふれる貴重な機会であり,何かあれば原総合法律事務所の弁護士に相談してみようと思わせる,間接的な広報として意味があると考えています。
ただ,公民館講座を実施するには,事務局がマーケティング戦略を十分理解し,手分けして公民館に「営業」に回り,当日は講座の実施をサポートするような,法律事務所のマネジメントが不可欠です。

例えば,原総合法律事務所では,今年の8月,最近のマーケティング戦略の中心に置いている交通事故の専門相談窓口を設けた際,20~30人入れる会議室を設けましたが(「ミーティングルームかほう」と呼んでいます。),ここで市民向けのセミナーを開催することにしています。
まだ,設置したばかりなので,多重債務の無料の説明会を1回開いただけですが,現在,いろんな市民向けのセミナーの企画を進めているところです(実践型遺言作成連続セミナーとか)。

例えば,原総合法律事務所では,これも最近のマーケティング戦略の軸に位置付けている「顧問弁護士」ではない「かかりつけ弁護士」のサービス'Law Support 佳朋'を展開していますが(いずれまとめてお話しします。簡単にはこちら),その利用企業の社員に対して,「弁護士の取説」というセミナーを行っています。
私たちは,企業を介してその社員,更にはその家族や知人まで,原総合法律事務所の法的サービスを届けたいと考えていますが,そのためには,「生の」弁護士にふれてもらい,どんなときに弁護士を利用すればいいのか,その「取扱説明」を伝える必要があるのです。
ちなみに,この'Law Support 佳朋'の展開にあたっても,原総合法律事務所では,全スタッフが事務所の理念とマーケティング戦略を徹底して討議した上で,分担してつながりのある企業等にプレゼンを行っていますが,ここでもマネジメントされた組織の力が不可欠です。

2011/10/16

14 弁護士へのアクセスを障害するもの

14 もっと身近な弁護士であるために1-アクセスを障害するもの

繰り返し述べてきたことですが,原総合法律事務所では,そのマーケティング戦略を次の3つの要素にまとめています(03)。
(a) 質の高い法的サービスを作り,
(b) 質の高い法的サービスを提供できるという情報を広く法的ニーズをもっている人のところに届け,
(c) 法的ニーズのある人が,「いつでも,どこでも,だれでも」相談を受け,依頼できるようにする。
このうち,これまでは,主に(b)について,広報という観点から考えてみました。
今日からは,(c)について,弁護士・法律事務所へのアクセスという観点から考えてみたいと思います。

前提として,弁護士・法律事務所にアクセスできないために,その権利・利益が守られていない人がいるのかが問題です。そういう人がいないのなら,マーケティングは「顧客の奪い合い」にしかならず,法律事務所を勝者と敗者に分けるだけです。
しかし,弁護士・法律事務所にアクセスできていない層の存在を否定することなどできるはずもないでしょう。
以前,原総合法律事務所では,1日4件程度の新件相談(そのほとんどは紹介者のいないもの)があるといいましたが(04),それから1か月が過ぎ,更に新件相談は増加傾向にあります。この結果は,この間の原総合法律事務所のマーケティングにより,これまで弁護士・法律事務所へたどり着けていなかった層が,原総合法律事務所に相談に来ているからだと考えています。
マーケティングは,確かにドラッガーのいう「顧客の創造」を実現すると,今は確信しています。

ちなみに,比較的最近の日弁連の報告でも,いまだ法的紛争・課題を抱える市民のうち36%程度,企業のうち44%程度しか弁護士の法律相談を受けていないと推定しているようです(『市民の法的ニーズ調査報告書』日弁連弁護士業務総合推進センター2008年6月,『中小企業の弁護士ニーズ全国調査報告書』同2008年3月)。

それでは,このように,市民・中小企業が弁護士・法律事務所にアクセスできていない原因はどこにあるのでしょうか。
様々な指摘がなされていますが,私は,経験的には,次の問題が大きいように考えています。

a 心理的な障害
よく弁護士は「敷居が高い」とか,「ハードルが高い」といわれます。
漠然とした,弁護士に対するイメージから,弁護士は怖そうとか,こんな話しは聞いてもらえないだろうとか思って,知人や行政の窓口,更には他士業に相談する人は多いのです。
なお,実際に弁護士に相談してみて,やっぱり怖そうな人で,話しも聞いてもらえなかったという不満を持たれる人がいることも事実です。

b 費用面の障害
どれくらい費用がかかるか分からない,あるいは,高額の費用がかかるのではないかと思って,弁護士のところに来ない人たちがいます。また,そもそも費用を支払うようなお金がないという人もいます。
なお,実際に弁護士を利用して,費用が高いと思う人もいるようです。

c 時間的な障害
ようやく時間が取れるのに,予約が先にしか取れないというのでは,相談に行こうという気持ちにはなりません。
即日相談に対応できる体制を作り,「今日でも相談をお受けできますが,ご希望の日時はありますか。」と答えるようでなければならないことは,既に強調したところです(04)。
なお,夜間相談や土曜相談などのニーズは,経験的にそんなに高くないと感じています。むしろ,せっぱ詰まって相談したいと思う人は,仕事を休んででも相談に行こうと思うので,平日の昼間,ただし,自分が行くことのできる時間に相談の時間を取って欲しいと思うようです。

d 場所的な障害
近くで相談を受けることができれば,それにこしたことはないでしょう。しかし,弁護士ゼロ・ワン地域がほぼ解消し,交通網の発達した現状では,30分から1時間程度の時間をかけて相談に来ることは,それほど障害ではなくなりつつあります。ただ,交通の要所である駅に法律事務所があれば,それは意味があるのかと考えています。
もっとも,高齢や障がいのために来所されるのが負担であったり,入院・入所されていて来所が困難な方のためには,別途,出張相談や,電話相談,テレビ電話相談などが必要になります。
また,専門的な分野については,近くにその分野を扱う法律事務所がないことは,場所的なアクセス障害というべきです。この点で,ネットの世界は,この障害を緩和する手段となる可能性があり,原総合法律事務所も,医療過誤や交通事故については,全国を視野に入れていることをお話ししました(11)。

このうち,bないしdの障害については,様々な工夫をすることにより,簡単でないとはいえ,対応できていくだろうと思います。
最後に残る障害は,aです。この解決が,実は一番難しいし,弁護士全体の意識改革が必要な最大の課題と考えています。

では,次回以降,原総合法律事務所がアクセス改善のために考え,実行してきた様々な取組みをお話しすることにしましょう。

2011/10/13

マーケティングを進める前提としてのマネジメント


<コラム編2>マーケティングを進める前提としてのマネジメント

このブログでは,マーケティングの考え方や手法を取り上げていますが,マーケティングを実際に進めるのは事務所の全てのスタッフです。所長だけでないのはもちろん,弁護士だけでもなく,事務局,それもパートも含めた全てのスタッフです。
所長弁護士だけがマーケティングを考え,マーケティングの視点で事務所を運営しようとしても,思うような成果は上げられないはずです。

事務所の全スタッフが,事務所理念を共有し,その理念に照らしてマーケティング戦略を考え,意見交換し,決まった方針を協同して実行する組織を造り上げることが,有効なマーケティングの前提です。
それが,マネジメントの視点です。

企業等にとっては当然のこのことが,法律事務所においては,ほとんど意識されていないように思われます。
ようやく,マーケティングについては,その意義が理解されつつあるようですが,マネジメントについては,更に認識が遅れているのが現状だと思います。
それは,従前の所長弁護士1人とせいぜい事務局1~2人という規模の事務所では,マネジメントを意識するまでもなかったからでしょう。

しかし,今後,弁護士が更に増え,マーケティングの手法が広まるにつれ,事務所の規模を拡大する方向は,ますます強まるでしょう。「ユーザー目線」,「サービス業の視点」から,即日相談体制は不可欠であり,そのために弁護士複数化が必要なことは,このブログの最初に強調したところです(04,05)。

そのために,弁護士の数を増やし,事務局の数を増やしていったときに,その全てのスタッフが同じ方向を向いて,協同して業務していくことの難しさが身にしみて分かると思います。法律事務所は,一般の企業にも増して,個々の弁護士に独立志向が強く(もっといえば,わがまま),また弁護士と事務局という異質な者の関係もあり,組織としてのまとまりを作るのが難しいと実感しています。
原総合法律事務所のマネジメントの方法論も,そのような経験の中で作り上げてきたものです。

しかし,このブログでは,マネジメントそのものについては取り上げません。
それは,このブログの冒頭(01)でふれたように,原総合法律事務所では,現在,弁護士でないマネージャーが組織を統轄すべきとの考えに基づき,マネジメントはマネージャーが担当しているからです。
マネージャーのブログ「所長弁護士・中小企業経営者必見! 法律事務所におけるマネジメントのススメ」の冒頭で指摘されているように,所長弁護士は,マーケティングを統括するのに加え,業務はもちろん,会務も行わなければなりません。これらは,所長弁護士でなければできない役割分担ですが,他方,マネジメントは,必ずしも弁護士が担当しなければならないものではありません。むしろ,弁護士は,組織の観点が乏しく,マネジメントは苦手な者が多いと考えています(少なくとも私はそうです。)。
そうであれば,マネジメントは,弁護士でない者が行う方が,組織にとっての負担(端的にいえば経費)が少ないといえます。
かつ,マネジメントの能力に秀でている者は,女性により多いと考えています。人の本質を見抜き,人を気持ちよく動かす配慮ができ,人のモチベーションを高めることは,女性が得意とするところです。

では,原総合法律事務所のマネジメントはどのように行われているのか,ぜひ,マネージャーのブログ「所長弁護士・中小企業経営者必見! 法律事務所におけるマネジメントのススメ」を覗いてみてください。
原総合法律事務所のマネジメントの具体的な方法が,詳しく紹介されています。
また,そのようにして造り上げられた原総合法律事務所のスタッフの生き生きとした様子が伝わるのではないかと思います(ボツネタも含めて。)。
面白げな話題に読者の関心が偏っているきらいがなきにしもあらずですが,それらも含めて,マネジメントだということで。。。

そのようにマネジメントされた原総合法律事務所の弁護士,事務局が,事務所理念のもと,同じ方向を向いて進んでいることは,この所長のブログとマネージャーのブログに加え,佐世保事務所のブログ「佐世保の弁護士・スタッフが贈る~HLOブログマガジン~」と長崎事務所事務局のブログ「弁護士を支え思考する事務局~法律事務所の改善提案!~」も見ていただければ分かると思います。佐世保事務所のブログは佐世保事務所の弁護士・事務局が交代で,長崎事務所事務局のブログは長崎事務所事務局が交代で書いているのですが,一人が書いていると思いませんでしたか。そう見えたとすれば,それは,事務所理念という「軸」が,全スタッフに浸透している,マネジメントの到達点なのです。

2011/10/12

原総合法律事務所の理念と年間スローガン


<コラム編1>事務所の理念と年間スローガン

前々回で広報のシリーズはいったん終わることにし,次は,テーマを変えて,アクセス改善のための取組みを考えていこうと思います(書いている方も,同じテーマで書き続けるのにやや飽き気味で,違うことを書きたくなったもので)。

その前に,今回は,コラム的な単発のテーマです。
事務所の理念と年間スローガンについて考えてみたいと思います。

このブログの冒頭(02)で,マーケティング,マネジメントの基本は,明確な事務所理念を断固として貫き通すことだと宣言しました。そこから,事務所の全てのマーケティングの方針が導き出されていなければならないし,それが,事務所が提供する全てのサービスや企画,更には組織を検証する物差しになっていなけらばならないと言いました。
したがって,事務所の理念は,深化することはあっても,本来,変わるものではあり得ません。

とはいっても,事務所は,そのスタッフも変わっていけば,事務所の成熟度も変わっていきますし,事務所を取り巻く情勢も変わっていきます。
また,そもそも事務所の理念は,事務所の理想的な姿であって,永遠の目標ともいうべきものです。
そこで,事務所理念の下で,事務所のその時点における具体的な目標を明らかにし,スタッフ間で共有することが,事務所の発展のためには有効です。
原総合法律事務所では,年頭に,その年の年間スローガンを掲げ,毎月の事務所会議で確認し,問題意識の共有化を図るようにしています。

その年間スローガンを掲げるようになったのは,マーケティング戦略を打ち出した2008年からでした。
2008年は,まさにその原総合法律事務所の「マーケティング戦略」を年間スローガンに掲げ,マーケティングの意識付けとマーケティング戦略の枠組みの確立を進めた年でした。
その結果,先に紹介したように,2008年8月,原総合法律事務所のマーケティング戦略を,マーケティングの3要素にあてはめ,
(a) 質の高い法的サービスを作り,
(b) 質の高い法的サービスを提供できるという情報を広く法的ニーズをもっている人のところに届け,
(c) 法的ニーズのある人が,「いつでも,どこでも,だれでも」相談を受け,依頼できるようにする。
と定式化したのです(03)。
そして,この年,法人化をして,翌2009年1月の佐世保事務所開設の準備を進め,HP,リーフレット,広報誌・新聞広告,DVD制作等各種の広報を開始し,既に即日相談体制を実現していたのです。

この到達点をふまえた2009年の年間スローガンは,「トップランナーであり続けること」でした。
私たちは,既に2008年の実践の中で,地方の小規模事務所としては,「トップランナー」になったという自負がありました。
しかし,事務所を取り巻く情勢は変化していきますし,理想はまだ先にあるわけですし,何よりも原総合法律事務所の実践を見て,他事務所も同様の取組みを始めるだろうと思っていました(実際には,そうでもなかったのですが。)。そうであれば,原総合法律事務所は,更に事務所理念を突き詰め,新しい取組みを続け,「トップランナーであり続けること」を目指したいと考えたのです。
そこで,この年,佐世保事務所を開設し,県北地域のニーズにも答える体制をとり,ラジオCM,ラジオ番組,ラジオ局とタイアップしたイベント,長崎駅前広場の大型ビジョンでの広告など目立つ広報に力を入れ,また,各種無料相談枠を拡大しました(当時は,多重債務,相続・遺言,交通事故,離婚の4類型)。

このようないわば拡大路線に修正を加えたのが,2010年の年間スローガン「フェアなコスト意識」です。
不況が続き,弁護士が急増する中で,原総合法律事務所が理念として掲げる「いつでも,どこでも,だれにでも 上質な法的サービスを。」提供しようとすると,多数の少額の事件を受任することになるのは必然でした。
それでも「上質な法的サービス」を提供するためには,スタッフのコスト意識が不可欠です。
ただし,コスト意識を徹底すれば,利益の上がらない事件は受けないということにもなりかねません。しかし,原総合法律事務所は,「基本的人権の擁護と社会正義の実現」を理念の柱としているので,その観点からは,非効率な事件も受けるべき責務があると考えました。単なる「コスト意識」ではなく,「フェアなコスト意識」とした理由です。
加えて,「フェア」としたのは,原総合法律事務所が提供する法的サービスは,正当に評価されなければならないので,「価格破壊」や「低価格競争」とは一線を画し,適正な弁護士報酬を求めていくという意味も含んでいます。
そこで,この年は,目立つ広告を打つ時期は終わったと考え,広報の絞り込みを行い,組織の整備と業務の効率化を進め,医療過誤,交通事故等の専門分野の打出しに取り組みました。ちなみに,この組織の整備に関してですが,原総合法律事務所では,マネジメントは弁護士が行うべきではないという考えから,マネージャーが担当しています(マネージャーのブログ参照)。

そして,今年,2011年を迎え,私(所長原章夫)が2期2年の会長の任期を終え,会務が軽減されたので,改めて新しい取組みを強化しようと,「Innovation(変革)」を年間スローガンに掲げました。
実際,会長を退任した4月以降,いくつも新しい取組みを行ってきましたし,現在取り組んでいるプロジェクトもあります。これらについては,順次,紹介していきたいと思います。
このブログも,この新しいマーケティング戦略に位置付けられるものなのです。

2011/10/08

日弁連業革シンポのパネラーします


<番外編2>日弁連業務改革シンポのパネラーします

このブログが日弁連の業務改革シンポのメンバーの目にとまり,急遽,パネラーとして登壇することになりました(予定)。
11月11日(金)に横浜で開催される「第17回弁護士業務改革シンポジウム」の第1分科会「小規模法律事務所におけるマーケティング戦略~さらなる依頼者志向に向けて~」がそれです。この日の午後のパネルディスカッションに登壇予定です。

原総合法律事務所の事務所理念を基礎とした様々な新しい視点の提示や新しいサービスの展開が興味をひいたのだと思います。

当日は,ブログで書いていることはもちろん,ブログには書ききれなかったこと,また,これからブログに書くことも含めて,時間が許す限りお話ししたいと思います。ちなみに,原総合法律事務所のマーケティング戦略は日々深化し(軸はぶれません。),サービスは日々新しくなっていくので,極端な場合は1週間でサービスの内容が変わり,1か月もすると昔の話しになっていることがあります。最新の原総合法律事務所のマーケティング戦略は,そのときにしか聞けません。

また,その後の懇親会にも参加しますので,お声をかけていただければ,もっと立ち入った話しができるかもしれません。

ぜひ,多くの方に参加していただきたいと思います。

そして,原総合法律事務所のマーケティングについて,どのように受けとめられたか,お聞かせいただければ嬉しいです。そのご意見,ご感想を,次の原総合法律事務所のマーケティング戦略につなぎたいと思っています。ちなみに(ちなみにが多いですが),原総合法律事務所のモットーに「謙虚」というのもあります。あらゆる方のあらゆる意見を,同じ目の高さで(上から目線でなく)素直に受けとめ,貪欲に学び続ける原総合法律事務所でありたいと思っています。

さて,原総合法律事務所のマーケティングやマネジメントについて,全国の弁護士の皆さんはどのように感じられるのでしょうか。一方的な発信ではなく(すみません,ブログにはコメントできない設定にしています。),皆さんのリアクションを直接体感できる貴重な機会と期待しています。

シンポジウムの様子は,改めてご報告します。



(追記 2011/10/10)
このパネラーには,仙台の小松先生に推していただいたのですが,10月10日の小松先生のHPで,小松先生と交代だったことを知りました。そうとは知らず,小松先生には失礼しました。
改めて,小松先生のHPで次のとおりご紹介いただいたことにお礼申し上げます。
マーケッテイングを真剣に考える事務所増加中(09/19)
マーケッテイングを真剣に考える事務所増加中2(09/20)

2011/10/07

13 人を介しての広報

13 広報を考える8-人を介しての広報

広報媒体というのとは少し違うので,広報のタイプ(06)にはあげていませんが,有効な広報になるのが,「人」を介しての広報です。
従来の弁護士は,顧問や紹介などを通じて相談や依頼を受けるのが一般的だったと思いますが,それはまさに「人」を介しての広報でした(もっとも,マーケティングなどという意識はなかったのでしょう。)。

原総合法律事務所にも,顧問先はあるのですが,顧問には依拠していないので(04),違った形で,より徹底して「人」を介しての広報を行っています。

まず,早くから取り組んでいたのが,「キーマンを介しての紹介」です(02の(b))。原総合法律事務所では,かつての依頼者などで,周囲に人脈を持っており,たびたび相談者・依頼者を紹介してくれたり,紹介してくれることを期待できる人を「キーマン」と呼んでいました。事務所の新しい展開があったり,新しいサービスを始めたときには案内を送り,また事務所グッズ(カレンダー,うちわ,ハンドタオル,ボールペン等)を作っては送ったりしていました。
こういった人は,周囲に困った人がいれば,原総合法律事務所を紹介してくれる有力なサポーターです。

次に考えたのが,全ての依頼者に「キーマン」になってもらうことでした。事件終了時には,原則として,預り金の精算に事務所に来ていただき,担当弁護士も応対して,事務所グッズ,サンクスグッズ,無料相談券等を渡すようにしました。
依頼者は,既に弁護士,特に原総合法律事務所の法的サービスを受けています。そこで満足,納得を得ていれば,リピーターになってもらえますし,周囲にも原総合法律事務所を紹介してもらえます。
事件が終わったらおしまいではなく,将来につなぐのがマーケティングというものです。

更に考えを進めれば,受任に至らない相談だけで終わる相談者も,既に原総合法律事務所の法的サービスを受けています。そうであれば,この相談だけで終わった相談者にも「キーマン」になってもらうべく,リーフレットや事務所グッズ,無料相談券等を渡すようにしました。
また何かあれば,気軽に原総合法律事務所に来てもらえるように,更に周囲に困った人がいれば原総合法律事務所を紹介してもらえるように,相談だけで終わる人も大切にしなければなりません。

もちろん,前提として,原総合法律事務所の法的サービスを受けて,満足,納得を得ていなければ,リピーターにはなってもらえませんし,周囲にも原総合法律事務所を紹介してもらえるわけがありません。
そこで,原総合法律事務所では,「サービス業の視点」,「ユーザー目線」をキーワードに(05),「上質な法的サービス」を提供することを事務所の理念とし,結果にかかわらず(敗訴したとしても),満足,納得を得てもらうよう,弁護士だけでなく,事務局も一体となって,圧倒的な努力を続けてきたのです。

いい仕事をすれば,仕事は増えるという当たり前のことなのですが,そのことを意識したシステム作りが必要なのです。

そういう観点から,実は,最近,原総合法律事務所では,新しい「人」を介しての広報として,かかりつけ弁護士"LAW SUPPORT 佳朋"のサービスを始めています。これも,おそらくは例のないサービスと思いますが,そのことは,顧問との関係も含めて,後日まとめてお話しします。

2011/10/04

12 記事になるということ

12 広報を考える7-記事になるということ

事務所の取組みが,広告ではなく,記事として新聞に掲載されたり,ラジオ・テレビで報道されれば,その効果は広告とは比較にならない大きさがあります。
社会的に意味のある取組みとして認知され,広告とは異なったレベルで信用されることとなるからです。
それは,一般の読者,視聴者はもちろん,公的機関においても同様です。自治体の相談窓口などが,特定の法律事務所を紹介することは通常考えられませんが,記事になったりすると,相談者にその記事を示したりすることはあるように思います。

原総合法律事務所の例は,06と番外編で紹介しました。今年の8月から交通事故専門の相談窓口をスタートし,3回まで相談を無料としましたが,この意義を含めサービスの紹介を各メディアに投げ込んだところ,地元ではもっともシェアの大きい長崎新聞と全国紙では毎日新聞が記事として取り上げてくれました(毎日新聞の記事はこちら)。その効果もあって,交通事故の相談は,以前は月5件程度だったのですが,8月は20件,9月は11件に増え,10月はまだ1日だけですが3件の相談がありました。

では,どうすれば,メディアはニュースとして取り上げてくれるのでしょうか。
もちろん,前提として,その取組みがニュース性のあるものでなければなりません。
この点で,民間の一法律事務所の活動は,基本は商業ベースの活動とみなされ,直ちにはニュース性は認められないものです。

しかし,原総合法律事務所の理念は,公益的,公共的意味を持っています。「法的サービスを独占し,そのサービスの提供にあたって,『基本的人権の擁護と社会正義の実現』を求められる弁護士として,法的サービスにアクセスできていない市民,中小企業に対し,上質な法的サービスを提供できる事務所であること」(02)を理念とする原総合法律事務所の取組みは,その軸がぶれない限り,単なる商業ベースの活動ではないはずです。
そして,まさにその理念にしたがい,原総合法律事務所では,交通事故専門の相談窓口を置くことにしました。すなわち,交通事故の加害者は,多くの場合,いわゆる任意保険に加入しており,保険会社担当者や弁護士の示談代行サービスを受けることができる一方で,被害者は,その法的知識や経験において,これら加害者側と圧倒的な格差があり,その基本的人権の擁護と社会正義の実現のためには,弁護士の支援が必要な場合が多いといえます。そこで,そのような交通事故の被害者が利用しやすい相談窓口を作ることが事務所の理念に適うことであると考え,交通事故専門の相談窓口を設け,同一事故について3回まで無料で相談に応じることとしたのです。かつ,医療機関や自治体とのネットワークも展望しました。
このように,事務所の取組みの公益性,公共性を,まず事務所内で明確に位置付けることが,事務所の取組みにニュース性を与えるのです。

しかし,だからといって,勝手にメディアがニュース性があると考え,記事にしたり,報道する訳ではありません。
まずは,県政,市政,司法,経済等の記者クラブに,取組みの公益的,公共的性格も含めて分かりやすく説明した報道のお願いを投げ込みます。場合によっては,記者会見(記者レク)をすることも考えていいでしょう(ただ,記者が集まらないと消耗するので,安易に行うのはどうかと思います。)。
興味を持った記者から,取材の申込みがあれば,記事になる可能性は大きくなります。取材には,丁寧に応じ,十分な説明をしなければなりません。その際,その取組みの公益的,公共的性格を説明するのは当然ですが,県内で初めてとか,全国でも例を聞かないとかいうのは,ニュース性を高めます。また,その取組みの利用者(相談者,依頼者)の声(インタビュー)を出せれば,それもニュース性を高めます。
要するに,ニュースになるような情報の提供の仕方に習熟する必要があるのです。

また,前提として,社会的に注目される事件などを多く扱っていて,記者と面識があったりすると,記事になりやすいということもあるように思います。社会的に意義のある事件に関与し,常日頃,面倒くさがらずに記者の取材に応じておくことも,有効です。

2011/10/02

11 HPの次の段階

11 広報を考える6-HPの次の段階

09,10と2回にわたって法律事務所のHPについて考えてみました。
当たり前のことをまとめただけですが,その当たり前のことを実行するのは簡単ではありません。原総合法律事務所のHPも,まだ日々改善を加えている途中です。

ところで,もし,原総合法律事務所のHPを精査した方がおられたなら,このブログで言っていることと矛盾するコーナーがあることに気付かれたかもしれません。
今回は,原総合法律事務所のHPが,次の段階も考え,進化していることを話したいと思います。

そのコーナーは,【弁護士が語る ちょっと難しい?法律の話】です。

前回,HPは分かりやすくなければならないことを,繰り返し説きました。
ところが,このコーナー,内容を見てもらえれば分かるように,訴状,答弁書,準備書面等の抜粋です。分かりやすくする手直しなど全く行っていません。ただ,当事者の特定ができないような配慮をしただけです。タイトルからして,「ちょっと難しい?」です。

それは,原総合法律事務所の新しいマーケティング戦略に関わっています。
原総合法律事務所のマーケティング戦略が,「当事務所の特徴である多重債務を含む消費者問題,医療過誤,行政訴訟,高齢者問題等に,弁護士による十分な法的サービスが提供されているか」を問題としていることは,このブログの最初に説明しました(02)。また,「上質な法的サービス」というキーワードにも何度もふれてきました。
そして,実際に,原総合法律事務所では,20年近く前の事務所開設時から,医療過誤に患者側で積極的に取組み,最近では,常時10~20件の医療過誤を取り扱っています。その蓄積と成果には,相当の自負もあり,「上質な法的サービス」といっても誤りではないと思っています。
また,医療が絡む交通事故についても,被害者側で,医療に関する蓄積をふまえて取り組んでおり,この分野でも「上質な法的サービス」を提供できる前提があります。

そこで,医療過誤,交通事故についていえば,実は,原総合法律事務所が「上質な法的サービス」を提供すべきなのは,地元長崎だけではなく,全国なのではないかと考えるようになってきていました。専門的分野に関するニーズに対応できる法律事務所は,各地域に十分あるとはいえないと思うのです。
そうして,今年の8月末,原総合法律事務所では,マーケティング戦略の新しい展開として,医療過誤,交通事故の分野では,全国のトップの法律事務所となることを具体的な目標として掲げるべき時期が来ていることを確認しました(トップレベルではなくトップという意味は,後日また。)。

このような全国を対象とすることを可能にするのがネットの世界であり,HPです。
専門的分野で「上質な法的サービス」を求める層は,地元に限定せず,全国の法律事務所から,そのニーズに答えてくれそうなところをネット上で探します。この層は,既に自らが抱える問題について,かなり詳しい専門的な情報も集めており,今さら分かりやすい説明など求めてはいません。
この層をターゲットとして,9月のHPリニューアル時に新しく作ったのが,【弁護士が語る ちょっと難しい?法律の話】のコーナーなのです。したがって,準備書面等を分かりやすく書き直すことはせず,あえてそのまま掲載しています。
まだ新設したばかりのコーナーで,情報量も少ないですし,いずれは,去る7月に開設した交通事故の専門のHPと近く開設予定の医療過誤の専門のHPに移す予定ですが,その狙いは分かってもらえたでしょうか。

ちなみに,07 広報を考える2-統一されたイメージで,広報のデザインに関わって,原総合法律事務所では,以前は,地元密着を強調しようと,長崎らしい風景なども使っていたけれど,今は,あえて長崎らしさは払拭したことを話し,その狙いは後日の説明に譲っていました。その狙いの一つが,この医療過誤,交通事故などについて,長崎にとどまらず,全国への展開を考えていることだったのです(他にも理由があるのですが,それは後日ということで。)。

2011/10/01

10 HPの差別化

10 広報を考える5-HPの差別化

前回(09),HPが有効な広報媒体として機能するためには,次の2つの条件が必要だといいました。
1) まず,多くの人にアクセスしてもらうこと
2) 次に,他の事務所と比べて,ここに相談に行こうと考えてもらうこと
前回の1)に続き,今回は,2)について考えます。

私たちがここで対象と考えているのは,法的なトラブルを抱え,弁護士に相談しようか,あるいは,どの法律事務所に行こうかと考えて,HPを見る人たちです。
こういった人たちは,他の法律事務所のHPも見て,あるいは他の士業の事務所のHPも見て,どの事務所に行こうか決めます。他の法律事務所や他の士業の事務所のHPとの差別化が必要な理由です。

では,HPの差別化という観点から,どういうHPを作るべきでしょうか。
既に多くの指摘があるところですが,原総合法律事務所のマーケティング戦略では,「HPの充実(圧倒的な情報量と分かりやすさ)」(03)とまとめています。
HPを比較して見る人が,分かりやすく,詳しい情報があるHPを選ぶのは当然です。

そこで,必要な情報ですが,事務所概要やアクセス情報など形式的なものを除き,配慮が必要と思うのは,次のような点です。

・事務所の理念が全体を通じて伝わってくること
もちろん,事務所の理念は載せていると思います【原総合法律事務所のHPから 理念はこちら】。
しかし,その理念を掲載したページだけでなく,HPの各ページの全体から伝わってくる事務所の印象とでもいうようなものがあります。説明するのは難しいのですが,視覚的な印象(弁護士の写真,事務所内の写真も含めて)や内容から,何となく伝わってくる事務所の理念が,それをいいと思う人(共感する人)を呼び寄せると思っています。

・費用が分かりやすく,詳しく説明されていること
弁護士に相談しようか迷う人の中には,いったいいくら費用がかかるのか分からないという人が多いようです。【原総合法律事務所のHPから 分かりやすくしたのはこちら 詳しいのはこちら

・手続の流れが分かりやすく紹介されていること
事件の類型毎に,どのように手続が進んでいくのか,チャートなども使い説明してあるといいと思います。【原総合法律事務所のHPから 例えば,医療過誤の進め方はこちら

・よくある質問が,数多く,分かりやすく説明してあること
HPを見る人は,自分が困っている問題について,いろんなHPの情報を比べているわけですから,多くの問題を取り上げているほど,ヒットする確率が高くなります。
かつ,その問題について,他のHPより分かりやすく,詳しく説明してあれば,そちらを選ぶのは当然でしょう。この点で,法律事務所のHPの説明には,普通の市民には難しすぎる説明があったりするので注意が必要です。【原総合法律事務所の交通事故の専門HPから よくある質問はこちら ,原総合法律事務所のHPから 弁護士が語る 分かる!法律の話はこちら

こういった情報を圧倒的な量と分かりやすさで載せることが,HPが有効に機能する条件となります。

しかし,HPを立ち上げた当初から「圧倒的な情報量」を載せることは無理で,日々,情報を増やしていくことが必要です。そのために,HPは,頻繁にかつ容易に更新できなければなりません。
ところが,HPの更新には,HTMLファイル等を扱う技術が必要で,これを事務所内で行うのは簡単ではありません。かといって,HPの更新を業者に依頼すると,機動的な更新が難しくなります。
この専門的な知識が必要なHPの更新を簡単にするのがCMS(Content Management System)です。原総合法律事務所でも,CMSを導入し,事務所内でHPの更新ができるようになって,HPの更新を頻繁に行うことができるようになりました(CMS導入自体は,業者に依頼する方が合理的です。)。


最後に,前提として,このようなHPの差別化により,原総合法律事務所を選んでもらうことが,市民,中小企業にとって,はたしていいことなのかという日々の検証が必要なことを強調しておきたいと思います。原総合法律事務所が,「法的サービスにアクセスできていない市民,中小企業に対し,上質な法的サービスを提供する」という理念を実践しているという「自信」とそれを裏打ちする「努力」がなければ,HPの差別化は,市民,中小企業にとって,無益です。

2011/09/28

新聞にまた掲載されました!

<番外編1> 新聞にまた掲載されました!

06で,事務所の取組みが,広告ではなく,記事として掲載されれば,その効果は広告とは比較にならないことをお話ししました(06タイプⅡ)。

そして,原総合法律事務所では,今年の8月から交通事故専門の相談窓口をスタートし,3回まで相談を無料としましたが,この意義を含めサービスの紹介を各メディアに投げ込んだところ,ある新聞が記事として取り上げてくれたことを紹介しました。そのときは,長崎新聞でしたが,さらに,先日,毎日新聞も記事として取り上げてくれました。
この毎日新聞の記事が,今日は,ウェブ上でも紹介されました。

毎日jpはこちら(リンク切れです)
Yahoo!ニュースはこちら(リンク切れです)

リンク切れする前に,取り急ぎのご紹介です。

なお,記事として取り上げてもらう意味や,どのようにして記事にしてもらうかなどは,改めてまとめる予定です。

09 HPのアクセスを増やすために

09 広報を考える4-HPへのアクセスを増やすために

広報として,もっとも直接的なのが,電話帳やHPです(06タイプⅢ)。
実際に法的なトラブルを抱えた人が,どこかの法律事務所に相談に行こうと思って見る広報媒体ですから,「法的サービスにアクセスできていない市民,中小企業に対し,…法的サービスを提供すること」を理念とする原総合法律事務所(02)にとって,ここで優位にたつことは決定的に重要です。
ちなみに,原総合法律事務所のここ1年くらいの新件相談の広報媒体別の数字を見ると,HPが約13%,電話帳が約10%となっています(前提として,相談に至るルートの把握と分析が不可欠です。)。
HPを使いこなせない人にとっては,電話帳が引き続き重要な広報媒体であり続けると思いますが,今後,HPの比重が更に増えてくることは間違いありません。

ところが,実際の法律事務所のHPを見ると,ただ立ち上げたというだけで,はたして有効に機能しているのか疑問に思うHPが数多くあります。
そこで,今回からは,HPについて考えてみたいと思います。

HPが有効な広報媒体として機能するためには,次の2つの条件を満たす必要があります。
1) まず,多くの人にアクセスしてもらうこと
2) 次に,他の事務所と比べて,ここに相談に行こうと考えてもらうこと
今回は,まず1)についてです。

どんなに良くできたHPでも,まずアクセスし,見てもらえないことには全く無駄な広報になってしまいます。
そこで,まず,多くの人にアクセスし,見てもらわなければならないのですが,HPにアクセスするルートとしては,既に事務所の名前や弁護士の名前を知っていて,事務所名や弁護士名で検索してたどり着くルートと,相談したい問題に関わるワードで検索してたどり着くルートがあります。

事務所名や弁護士名で検索してもらえれば,後で述べるSEO対策など行うまでもなく,HPにたどり着いてもらえます。そのために,06でふれたように,テレビ・ラジオのCM,新聞・広報誌の広告,電車・バスの広告等が意味を持つのです(06タイプⅠ)。
まず重要なのは,地域での知名度を高めることです。
そのためには,相当な期間,種々の媒体で平行して広報を打ち続けなければなりません。しかも,それらのイメージが統一されていなければ,印象にはなかなか残りません(07)。最小の費用で,最大の効果を上げる工夫が求められるのです。
ちなみに,原総合法律事務所では,後記のSEO対策に取り組む前は,HPのアクセスの5割近くが事務所名や弁護士名を検索してのアクセスでした(前提として,HPのアクセス解析が不可欠です。)。アクセス数は,正直なところ,伸び悩んでいましたが,知名度はそれなりに高くなっていたと評価していたところです。

しかし,事務所名や弁護士名を知らない人たちは,自分の抱えている問題に関わるワードで検索をするのですから,それらのワードで検索の上位に上がってくることが必要です。そうでなければ,当事務所の理念である「法的サービスにアクセスできていない市民,中小企業に対し,…法的サービスを提供すること」を実現することはできません。
問題を抱えている人たちですから,かなり念入りにHPを探してもらえるとは思いますが,やはり上位にあるHPほど見てもらえる確率は高くなります。目指すのは,1ページ目です。

そのために必要なのが,ブラックボックスと言われるSEO(検索エンジン最適化)対策です。
SEO対策に関する本やHPは数多いのですが,専門家でない法律事務所の弁護士や職員では,理解もできないし,対応は無理だとあきらめていませんか。
確かに,SEO対策を専門とする業者に依頼すれば,かなりの費用はかかるのでしょうが,一定の成果を上げられるのかもしれません。しかし,その費用は,私たちの事務所の規模では,負担が大きいですし,その効果もブラックボックスだと言われると,なかなか依頼に踏み切ることができないのが実情ではないでしょうか。
原総合法律事務所でもそうでした。

しかし,遅すぎた感はありますが,最近になって,事務所内でSEO対策をチームを作って検討してみたところ,多くのSEO対策が一致して重要だというのは,適切なキーワードをタイトルに持って来るということでした。ほかにも,いろんなSEO対策が紹介されていましたし,やってはいけないことも紹介されていましたが,私たちができるのは,簡単なことだけです。

そこで,第1に,まず,これをやってみることにしました。ただし,タイトルは,HPの見えるところにはありません。HTMLのtitleに記載する必要があります(このあたりの技術的な点は,説明困難なので,各自,研究してください。)。
その場合,キーワードをどう散りばめるかも配慮が必要で,各事務所毎に,どのような事件を狙うかという観点から決めていくことになります。

第2に,これも多くのSEO対策が指摘していますが,どれだけ他のページからリンクされているかも,評価の対象となるようです。
そう言うと気付かれるかと思いますが,実は,このブログを立ち上げた目的の一つに,原総合法律事務所のHPにリンクをはるという点もあったのです(その意味で,前後して,交通事故の専門のHPも立ち上げましたし,マネージャーのマネジメントのブログ事務局のブログも立ち上げました。さらに,現在,別のHP立上げも準備しています。)。

そういった簡単なSEO対策を行った結果,現在では,原総合法律事務所のHPへのアクセスの7割は検索エンジンからのもので,キーワードも事務所名や弁護士名ではなく,「長崎 債務整理」といったキーワードでの検索が目立って増えてきています(繰り返し言いますが,HPのアクセス解析が不可欠です。)。それも,主なキーワードの検索で,ほぼ1ページ目を実現したからです。もちろん,アクセス数自体も増加しています。
SEO対策に取り組む前,アクセスの5割近くの検索エンジンからのアクセスのうち,ほとんどが事務所名や弁護士名を検索してのアクセスだったことを考えると,当事務所の理念である「法的サービスにアクセスできていない市民,中小企業に対し,…法的サービスを提供すること」に適合した方向に向かっているということができるでしょう。

2011/09/23

08 統一されたイメージの具体例

08 広報を考える3-統一されたイメージの具体例

前回,広報には「統一されたイメージ」が必要だと言いました。
そこで,具体的に原総合法律事務所の広報がどのように統一感を持っているのか見てみましょう。
(最初に自白しますが,時間がないので,ともかく1回分を写真で済まそうという魂胆です。)

以前は,ブルーをベースにトリコロール(青,赤,白)が基調でした。
例えば,以前のリーフレットです。具象(長崎の風景)も入れ,長崎を打ち出し,柔らかいイメージでまとめています。


そのころの封筒です。同じ色調,同じイメージで作っています。


この色調をベースに,ポスターも作っています。
ポスターをゆっくり読む人などいませんから,一瞬のインパクトが重要です。ロゴマークを強調し,それでインパクトを与えようという狙いです。
したがって,ここでは,具象(風景等)も入れていません。


最近は,よりシャープなイメージを与える狙いで,色調をよりシンプルにしています。グレー基調で黒とアクセントの黄色しか使っていません。また,抽象的なイラストも同様の狙いからです。ロゴマークも,2色から1色になっています。
そんな最近のリーフレットです。


同じイメージの封筒です。シャープさを出すために,横使いにしています。


電話帳も,あえて多色刷りは使わず,一色でインパクトを与えるデザインをという狙いです。
ただ,電話帳は,じっくり読んで他事務所と内容を比較されるので,文字情報は比較的多めです。


このように「統一されたイメージ」で全ての広報を行うと,広報は有効に機能します。
なお,そのコンセプトが不変ではないことも,理解してもらえたでしょうか。

2011/09/21

07 統一されたイメージ

07 広報を考える2-統一されたイメージ

今回は,具体的な広報の媒体毎の検討に入る前の,広報全体を通じた「統一されたイメージ」というテーマです。
前回(06)の最後に,広報にはいろんな媒体があるけれども,「統一したイメージのもと,これらを平行して,相互に関連付けて行わなければ効果は十分に表われないでしょう。」と結びました。

広報は,いろんな媒体を平行して行わなければ,効果はなかなか表われません。これだけをやっておけば良いという特効薬はありません(もちろん,テレビCMを繰り返し流す効果は絶大ですが,私たちの規模の事務所では,費用的に無理なので,潔くあきらめましょう。)。
そこで,いろんな媒体で広報を行うのですが,そのとき,同じ事務所のものだと分からなければ,複数の広報を打つ意味がありません。例えば,ホームページや電話帳を見たとき,「あぁ,あの市の広報誌で見た事務所だ。」と分からなければ,その広報誌の広告は無駄だったことになります。
全ての広報に「統一されたイメージ」が必要な理由です。

広報は,その媒体毎に取り扱う業者が違います。例えば,新聞,広報誌等であれば,各紙・誌毎に広告代理店が違います。リーフレット等であれば,印刷会社がデザインの案を作ります。ホームページであれば,ホームページの制作会社が,電話帳であれば,NTTがデザインの案を作ります。
ところが,いくら詳しくイメージを伝えたつもりでも,そのイメージが伝わっていなかったり,あるいは善意に修正を加えられ,イメージどおりのデザインにはなかなか仕上がってきません。あるいは,そもそも,デザインは全て業者任せにしたりしていませんか。
ここで,イメージがバラバラだと広報費の少なくない部分が無駄になってしまうのです。

ただ,前提として,我々の側に,「統一されたイメージ」があるのかが問題です。
法律事務所の弁護士やスタッフは,デザイナーではありませんが,自分の事務所の広報には,その文章(キャッチコピー)だけではなく,デザインにも責任を持つべきです。
事務所の中を見渡してみましょう。きっと,センスのいい人がいるはずです。その人をデザイン面の担当者に置きましょう。

さて,そこで,具体的にどのようにイメージを統一していくのか,原総合法律事務所の例です。

まず,ロゴマークです。このブログの右上に小さいのがありますが,大きいのは,原総合法律事務所のHPを見てください。
まず,人目をひくこと。かつ,印象に残ること。更に事務所の名前を連想することが必要です(家紋のイメージですね。)。
できれば,ロゴマークぐらいは,プロのデザイナーに依頼し,納得いくものを作るべきでしょう。原総合法律事務所も,ロゴマークは,そうやって作っています。
そして,あらゆる媒体にロゴマークを使い,浸透を図りましょう(原総合法律事務所では,一面の半分くらいロゴマークという広報もやってみました。)。
今では,結構,この「HLO」をアレンジしたロゴマークは,地元では知られてきているようです。

色調も統一しましょう。
むやみな多色使いは効果的ではありません。原総合法律事務所の場合,当初は,ブルーをベースにトリコロール(青,赤,白)と黒以外は使わないという大枠を決めていました。現在は,より単色にシフトし,もっと色使いをシンプルにしています(例えば,グレーをベースに黒と黄色だけとか。)。
ちなみに,原総合法律事務所のマネージャーは,このあたり結構得意とするところなので,いずれマネージャーのブログにもアップされるのではないかと思います。

フォントも統一すべきです。
明朝とゴシックをベースに,どうしても強調した部分があれば,もう1フォントぐらいにおさめないと,見ていて統一感がなく,印象が散漫です(もちろん,数字やアルファベットは明朝やゴシックだとダサイので,英数字のいい感じのフォントを使いましょう。)。

デザインはシンプルなものが好印象です。
原総合法律事務所の場合,直線がベースで,曲線はできる限り使わないようにしています。
その関係で,背景に具象(風景など)は使いません。以前は,地元密着を強調しようと,長崎らしい風景なども使っていましたが,今は,あえて長崎らしさは払拭しました(その狙いはまたいつか。)。

文章(キャッチコピー)もシンプルで,核心をつくものが必要です。文字ばっかりというのは論外です(あえてデザイン的に「文字ばっかり」を狙ったものは別ですが。)。
キャッチコピーを考えるのも,才能の面がありますが,原総合法律事務所では,キャッチコピーは,よく全スタッフに公募します。山のように案が出てきて(事務局ブログの改善提案のノリです。),その中から選んでいくと,かなりいいものが作れます。


こういった広報のイメージ作りは,メジャーな広告代理店に依頼すれば,もちろん,それなりのものが仕上がってくるのでしょうが,びっくりするぐらい高価(なはず)です。そんな余裕は私たちの事務所にはないので,ここは事務所のスタッフのセンスを磨き,事務所内での自給自足を目指すのが,私たちの予算の中での身の丈に合ったやり方でしょう。

2011/09/19

06 広報の効果のとらえ方

06 広報を考える1-効果のとらえ方

原総合法律事務所の理念は,「法的サービスにアクセスできていない市民,中小企業に対し,…法的サービスを提供すること」ですから,広報が重要なことはいうまでもありません。これまで顧問としても,プライベートでも,弁護士と全く関わりがない市民,中小企業を法律事務所につなぐのが,広報の役割です。
このことを,原総合法律事務所のマーケティング戦略では,「(b) 質の高い法的サービスを提供できるという情報を広く法的ニーズをもっている人のところに届け(る)」とまとめています(03参照)。


ところで,広報の効果の表れ方は,広報の媒体や内容によって差があるようです。経験的な分類ですが,間接的なものから直接的なものまで,3つのタイプに分けてみました。

<タイプⅠ かなり間接的>

まず,多くの人に,原総合法律事務所という事務所の名前を覚えてもらい,いつか法的なトラブルに巻き込まれたときに,「そういえば,原総合法律事務所という事務所があったな。」と思い出してもらうために行う広報があります。
具体的には,テレビ・ラジオのCM新聞・広報誌の広告電車・バスの広告等がそうでしょうか。

もちろん,これら媒体での広報が,すぐに相談に直接結びつく場合もあります。例えば,多重債務(過払)の広報の場合,それを見たから,聞いたからという相談の問い合せもあります。しかし,それは例外的なケースです。
この範疇の広報は,一般に単発では効果が期待できないので,一定期間は継続的に行い,事務所名が多くの人の印象に残るまで続ける必要があります。広報を打てば,すぐに相談に結びつくというものではありませんから,この広報による相談がないからといって,止めてはだめです。
また,印象に残ればいいのですから,長文の説明は不要で,シンプルで,インパクトのあるものが望まれます。ロゴやキャッチコピーも有効です。

<タイプⅡ やや直接的>

タイプⅠより更に進んで,限られた人に,読んだり,見たり,聞いたりしてもらい,より強く記憶し,保存しておいてもらうための広報があります。
具体的には,リーフレットガイドブック等がそうですが,DVDラジオ番組への出演もこれにあたると思います。また,ニュースとしての記事になることも,ここに分類されるでしょう。

例えば,相談は受けたけれど,今回は事件の受任にまでは至らなかったという人には,リーフレット,ガイドブック等を持って帰ってもらいます。様々なセミナーを行うときにも,やはりリーフレット,ガイドブック等を配ります。こういったものは,いざというときのために大切に保管し,後日,自分や周りの人がもめ事に巻き込まれたとき,きっとそれを見てもらえるはずです。

また,原総合法律事務所では,相続・遺言についてはDVDも作っていて,セミナーでは上映しています。ラジオ番組の出演もそうですが,こういったものは,単なるCMよりも強い印象を与え,タイプⅠの広報より有効であって,ここに分類するだけの意味があると思っています。

さらに,事務所の取組みが,広告ではなく,記事として掲載されれば,その効果は広告とは比較になりません(しかも無料です。)。原総合法律事務所では,今年の8月から交通事故専門の相談窓口をスタートし,3回まで相談を無料としましたが,この意義を含めサービスの紹介を各メディアに投げ込んだところ,ある新聞が記事として取り上げてくれました。以後,交通事故の相談は顕著に増えています。

<タイプⅢ 直接的>

最後に,実際に法的なトラブルを抱えた人が,どこかの法律事務所に相談に行こうと思って見る広報があります。
ホームページ電話帳がその典型です。

既に相談に行こうと思っている人が対象ですから,有効な広報媒体であることは間違いありませんが,他の法律事務所と比較されるので,他事務所との差別化が必要です。
タイプⅠの広報で,事務所の名前やロゴマークなどが印象付けられていれば,この他事務所との差別化でも,まずは優位に立つことになります。

しかし,このタイプの広報を見る人は,更にそれぞれの事務所の内容を比較します。
電話帳の場合,わずかな情報量しか掲載できませんが,その中で,事務所のイメージを伝えなければなりません。
HPの場合は,情報量に制約はありませんから,その分野に詳しいことを分かりやすく伝えなければなりません。原総合法律事務所のマーケティング戦略で「HPの充実(圧倒的な情報量と分かりやすさ)」(03)と書いたのは,この意味です。

・・・・・・・・・・・・・・

このようにいくつかのタイプに分かれる広報ですが,統一したイメージのもと,これらを平行して,相互に関連付けて行わなければ効果は十分に表われないでしょう。
その全体に目配りをする広報責任者が必要になってくると思うのです。

2011/09/17

05 即日相談実現のための意識改革とテクニック

05 即日相談実現のための意識改革とテクニック

前回は新件相談を増やすためには,即日相談に応じる「覚悟」が必要だと,何だか精神論のような話しで終わりました。
しかし,「即日相談を受けるぞ」と何回誓っても,何回唱えても,それで即日相談を受けることができるわけではありません。

問題は,以下で述べることをやり抜く目的意識を事務所として共有しうるかということです。そのためには,所長の「覚悟」が必要ですし,その前提となる事務所の理念が確立していなければなりません。

第一に必要なのは,全ての弁護士・事務局の意識改革です。
キーワードは,「サービス業の視点」であり,「ユーザー目線」です。
弁護士は,全体としてみれば,極めて高い能力を持った集団ですが,それ故に,えてして独りよがりだったり,自己満足に走りがちです。弁護士の「敷居が高い」と言われるのは,この「サービス業の視点」,「ユーザー目線」が欠けているために,独りよがりだったり,自己満足に走りがちなことに由来しているのではないでしょうか。
法律事務所も,「サービス業の視点」,「ユーザー目線」から,あらゆる業務のあり方を見直すべきです。それ抜きには,今,弁護士にアクセスできていない市民や中小企業は,いつまでたっても弁護士にはアクセスしないでしょう。
ここで,「法的サービスにアクセスできていない市民,中小企業に対し,…法的サービスを提供できる事務所」を目指すという原総合法律事務所の理念が,「サービス業の視点」,「ユーザー目線」と結びつくわけです。

この意識改革ができれば,即日相談への対応は当然のこととして受けとめられるはずです。
せっぱ詰まった問題を抱えた人が,逡巡したあげく,ようやく法律事務所に電話を架けたのに,相談を受けられるのが,何日もあとで,しかも時間が指定されるようでは,もう弁護士に相談しないとなっても仕方がないでしょう。
法律事務所では即日相談が当然となることが,法的需要の掘り起こしの前提条件です。

意識改革ができれば,第二に,即日相談を可能にするテクニックをマニュアル化しましょう。
弁護士が2人以上いるのであれば,まず,即日相談の担当日を割り付けます。期日が入るより先に,つまりおおむね2か月以上前には,担当日を決めておくことが必要です。これを原総合法律事務所では,「事務所内当番」と呼んでいます。
かといって,担当日は終日予定を入れないようにするまでの必要はありません。実際には,午前中に問合せの電話があっても,事務所に来所できるのは午後にしかなりません。また,経験的に,即日の相談を希望される方は,1日にあっても1~2件です。そうすると,午後に2時間程度時間を空けていれば,実際には即日相談は可能です。
でも,原総合法律事務所では,電話を受ける際,「ご希望の日時はありますか。」と聞くのではなかったか(04)という点に気付いた方,鋭いです。そこで,たまたま予定を入れてしまった時間帯を希望されたときには,「あいにく,その時間は予定が入ってしまいましたので,その前後の○時はいかがでしょうか。」と答えるのです。
結果として,○時からの相談になるにしても,最初から,「○時なら時間が取れます。」という対応は,弁護士の都合を優先しています。そうではなく,まず,「ご希望は何時ですか。」と聞かれれば,結果として,希望の時間が取れなくても,自分の都合を優先しようとしてくれたのだと思ってもらえるのです。
それが「サービス業の視点」,「ユーザー目線」というものです。

なお,実際に,このような対応をとろうとすると,全スタッフが,弁護士の最新の予定を把握できなければなりません。弁護士の予定は,結構流動的で刻々と変化します。そのためには,グループウェアを導入することが必須でしょう(原総合法律事務所ではサイボウズを利用しています。)。

2011/09/16

04 即日相談に応じる覚悟

04 全ては新件相談のために-即日相談に応じる覚悟

新件相談をどれだけ重要と考えるかは,事務所によって温度差があるようです。
原総合法律事務所の場合は,事務所の理念が,「法的サービスにアクセスできていない市民,中小企業に対し,…法的サービスを提供すること」にあるのですから,想定される相談者・依頼者は,それまで全く法律事務所との関係がない人であって,まず新件相談から始まる人です。新件相談は,決定的に重要です。

これに対し,従来のオーソドックスな法律事務所は,顧問を中心に業務しており,相談者・依頼者は,顧問先であったり,顧問先から紹介された人が多かったのではないでしょうか。
そこでは,マーケティングといっても,せいぜい顧問先の維持や開拓であって,わざわざマーケティングを意識する必要もなかったのかもしれません。

しかし,私の場合は,地縁・血縁のないところで弁護士を始めたので,顧問先などあるはずがありません。当然に,顧問をもたない人の新件相談から事件を受任しなければなりませんでした。
さらに,今は,もっと積極的に,原総合法律事務所は顧問に依拠しないという立場を明確にしています。それは,事務所の理念に沿わないからです。事務所の軸をぶらさないために,理念は断固として貫き通すべきです(02参照)。

そうはいっても,以前の牧歌的な時代なら,先輩弁護士から事件を紹介してもらうこともできたし,弁護士会の法律相談センターなどで新件相談を受けることができたのではないか,ところが,ここ数年,弁護士が増える一方で,弁護士会の法律相談センター等の相談数は減少し,厳しい時代になったのだと言われるかもしれません。
そうです。そこにこそ,弁護士・弁護士会のマーケティングの弱さが象徴的に表われていると,私は見ています。

現実に,弁護士の法的サービスを受けることができれば,もっと適切な解決にたどり着けたのに,弁護士にアクセスできなかったばかりに,その権利,利益を害されている市民,中小企業は,まだまだ多いのです。そういった市民,中小企業が弁護士にアクセスできるようにすることが,まさに原総合法律事務所のマーケティングの目的です。
そこで,原総合法律事務所のマーケティングの取組みが,どのような結果を出しているかです。
現在,原総合法律事務所では,長崎事務所に3人,佐世保事務所に2人の5人の弁護士で,1日平均4件の新件相談を受けています。少数の弁護士会や法テラス経由の新件相談もありますが,ほとんどは,この数年の事務所独自のマーケティングの取組みを通じての結果です。マーケティングを位置付けて取り組む以前は,せいぜい,以前の依頼者や関係者から聞いたからという新件相談が週に数件あったくらいでしょうか。
原総合法律事務所のマーケティングの取組みは,狙いどおりの成果を上げつつあると考えています。

このように新件相談を増やすために何をしたかが,一番興味のあるところかと思いますが,結局は,前回(03)のブログで上げた試みの全てが,この新件相談を増やす結果につながっているのです。
広報の重要性は,広く認識されてきたところだと思いますが,前提として,「いつでも,どこでも,だれでも」相談を受けられる体制を作ることがとりわけ重要だというのが,この間の原総合法律事務所の取組みの教訓です。
具体的には,まず実行すべきは,「即日相談体制」です。
皆さんの事務所では,相談の問合せの電話が入ったとき,「では,○日後の○時なら時間をお取りできます。」とか答えていませんか。原総合法律事務所では,「今日でも相談をお受けできますが,ご希望の日時はありますか。」と答えます。せっぱ詰まっている方もおられるでしょうし,いろんな都合を抱えた相談者の希望に応じられないようでは,まず,入り口の段階で,ユーザー目線ではありません。原総合法律事務所では,「サービス業の視点」をキーワードの一つにしていますが,顧客の都合より自分の都合を優先するサービス業などあり得ないでしょう。
確かに,弁護士1人では,即日相談体制は難しいかもしれません。しかし,弁護士が2人以上いるのなら,あとは,即日相談にも応じるという覚悟だけです。その覚悟もないようでは,新件相談を増やす前提がないというのが,今日の結論です。

2011/09/15

03 summary:原総合法律事務所のマーケティング戦略

03 summary:原総合法律事務所のマーケティング戦略

そもそも,「マーケティング」とは何なのでしょう。
様々な定義がなされているようですが,私たちにとっては,事務所の理念・ビジョンを実現するための考え方の枠組みに過ぎません。
そのような実践的な視点から見ると,マーケティングを次の3つの要素から捉えるのが,有益だと思っています。
(a) 消費者が真に求める商品・サービスを作り,
(b) その情報を消費者に届け,
(c) 消費者がその商品・サービスを得られるようにする活動。
日本では,宣伝,広報(つまり,(b)の側面)に単純化して受け取られる傾向があるようですが,もちろん,それでは,事務所の理念・ビジョンを実現するには不十分です。

そこで,原総合法律事務所のマーケティング戦略が,この3つの側面において,どのようにまとめられているかです。
再度確認しておくと,原総合法律事務所の理念・ビジョンは,
「法的サービスを独占し,そのサービスの提供にあたって,『基本的人権の擁護と社会正義の実現』を求められる弁護士として,法的サービスにアクセスできていない市民,中小企業に対し,上質な法的サービスを提供できる事務所であること」
であり,
「いつでも,どこでも,だれにでも 上質な法的サービスを。」
というものでした。
これを,上記の3つの要素にあてはめ,私たちは,2008年8月,原総合法律事務所のマーケティング戦略を,次のようにまとめました。
(a) 質の高い法的サービスを作り,
(b) 質の高い法的サービスを提供できるという情報を広く法的ニーズをもっている人のところに届け,
(c) 法的ニーズのある人が,「いつでも,どこでも,だれでも」相談を受け,依頼できるようにする。

このように枠組みを作っておくと,新しい試みを打ち出すとき,それが事務所の理念・ビジョンに適合しているかの検証が容易になります。つまり,軸がぶれません。
また,その3要素に照らして,事務所が実践していることを書き並べてみると,どこが弱いのかが分かり,どこに力を入れるべきかも見えてきます。

そこで,原総合法律事務所が行っているマーケティング活動をこの3要素に分類してみましょう。読めば一目瞭然なのもあれば,これは何だというのもあると思います。振り返ってみても,この数年で,私たちは,実にいろんな試みをしてきたと思います。そして,今も平行して現在進行形のプロジェクトがあります。
次回以降は,まず,これらのうち,特徴的なものを紹介していこうと思います。
(a) 質の高い法的サービスを作るために
<弁護士レベル>
・弁護士の研修(外部研修,所内研修)
・弁護士の専門化(当面は,医療過誤,交通事故)
・文献・データベースの完備(図書館に行く必要がないだけの最新版の文献,医学論文データベースとの契約等)
・裁判事案についての共同担当制
・所長・先輩弁護士による指導・支援の徹底
<事務局レベル>
・事務員の研修(外部研修,所内研修。ただし,法律知識の習得は重視しない。)
・マニュアルの整備
・秘書会議の充実
・接遇スキルの向上
<弁護士・事務局を通じて>
・マナー研修
・危機対応マニュアル(ハード面を含めて)
・精神的に問題をもった人の対応に関する研修
(b) 質の高い法的サービスを提供できるという情報を広く法的ニーズをもっている人のところに届けるために
・HPの充実(圧倒的な情報量と分かりやすさ),ブログの位置付け
・リーフレット作成(事務所紹介,事件別,報酬ガイド等)
・ガイドブック作成(多重債務,相続・遺言等)
・DVD作成(プロモーションビデオの意味も持たせて)
・メディアでの広告(自治体広報誌,新聞,ミニコミ,ラジオ等)
・ラジオ番組への出演
・ラジオ番組とタイアップしたイベント
・記事としての掲載(ニュース性をもたせる工夫)
・キーマンを介しての紹介
・非顧問型,準顧問型,顧問型利用企業社員への広報
・非顧問型,準顧問型,顧問型利用企業での社員セミナー(「弁護士の取説」等)
・会議室を利用した各種セミナー
・実践型連続セミナー
・会議室の無料貸出し
・関連士業とのネットワーク
・行政との連携(勉強会の開催等)
(c) 法的ニーズのある人が,「いつでも,どこでも,だれでも」相談を受け,依頼できるようにするために
・佐世保事務所(更にその後の支店構想)
・各種無料相談(扶助取扱,事務所独自の無料相談,特に交通事故専門相談窓口での3回無料相談)
・着手金・報酬金の低額化・分割支払(ただし,適正な価格の堅持)
・事務所内当番制(即日相談体制)
・事務所内夜間・土曜相談
・出張相談
・電話・テレビ会議相談
・公民館セミナー(無料相談会付き)
・無料相談券の配布
・メンバーズカードの作成,配布

2011/09/13

02 明確な事務所理念・ビジョン

02 明確な事務所理念・ビジョンを断固として貫き通すこと

おそらくは,たいていの事務所で,自分たちの事務所の理念ないしビジョンについて,ぼんやりとしたものはもっていることと思います。
しかし,それが事務所のマーケティングの基本となるだけの明確な理念ないしビジョンになっているかというとどうでしょう。
そこから,事務所の全てのマーケティングの方針が導き出されていますか。
それが,事務所が提供する全てのサービスや企画,更には組織を検証する物差しになっていますか。

それがなければ,場当たりのマーケティングを繰り返すだけで,効果も思うようには上げられないでしょうし,何より,事務所の運営に自信が持てないはずです。マーケティングやマネジメントの基礎には確固とした理念ないしビジョンが必要だというのは,あらゆる仕事において共通の原則です。

更に加えて,弁護士・法律事務所についていうならば,その理念ないしビジョンは,「基本的人権の擁護と社会正義の実現」という弁護士の使命を離れてはあり得ないと考えています。この軸がぶれたマーケティングでは,弁護士としてのやりがい(誇り)も見出せないし,社会的な期待にも答えられないし,ビジネスモデルとしても成功しないと考えています。
「基本的人権の擁護と社会正義の実現」という軸を事務所理念・ビジョンにおいて,断固として貫き通すこと。
これが,今回の第1の結論です。
法律事務所のマーケティングが語られるとき,私は違和感を覚えることが多いのですが,それは,この軸が曖昧な気がするからです。

では,この軸をぶらさず,私たちの事務所では,どのようにして具体的な事務所理念・ビジョンを確立してきたのか。

前回のブログでもふれたところですが,もともと,私たちの事務所は,弁護士2人,事務局5~6人の規模で運営していました。多重債務のピークのころでもありましたし,事件は多く,手一杯という感じが続いていました。ちょうどそのころ,弁護士大増員時代を迎え,弁護士100人足らずの長崎県弁護士会に,急に毎年10人といった多くの新入会員を迎えるようになりました。弁護士を採用すれば,事務所を大きくすることもできるようになってきたのです。
そして,実際,2007年12月には3人目の弁護士が入所することが決まっていました(実際には,このとき,弁護士が4人になっています。)。
そうすると,それまでの事務所では手狭になるため,事務所を移転せざるを得ないこととなりました。移転するとして,広さはどれくらい必要か,相談室はいくつ必要か,また事務所の規模を大きくして,事務所財政をどのようにして支えるのか。こういった点を考えるにあたって,前提として,どのような事務所にしようとしているのか,事務所のビジョンを確立することが先なのではないかと考えるようになったのです。

2007年ころ,まず,事務所の主なメンバーで,事務所のビジョンを話すようになりました。
しかし,当時の資料を見ると,いまだ事務所の軸を自覚できてはいませんでした(軸がなかったわけではなく,ただ,「言葉」になっていなかったという意味です。「基本的人権の擁護と社会正義の実現」という軸は,弁護士になって以来,常に業務の基本でした。)。それでも,今につながる「サービス業の視点」だとか,「スタッフ全員の上質のサービス」という言葉は使われていましたし,既に事務所の「ブランド化」も話題に上っていました(これらキーワードについては,そのうちにお話しします。)。
それが,現在の事務所理念につながる形で明確に言語化されたのは,2008年2月でした。このとき,「原総合法律事務所の将来像(ビジョン)」という文書をまとめましたが,そこには,次のような指摘がありました。
「法律事務所が単なる利潤追求の『商売』でない特殊性-法律事務の独占による法的ニーズへの対応」という視点から,「当事務所の特徴である多重債務を含む消費者問題,医療過誤,行政訴訟,高齢者問題等に,弁護士による十分な法的サービスが提供されているか」を問題とし,その解決に取り組むことを事務所のビジョンに掲げたのです。
今は,もっと端的に,事務所の理念を次のようにまとめています。
「法的サービスを独占し,そのサービスの提供にあたって,『基本的人権の擁護と社会正義の実現』を求められる弁護士として,法的サービスにアクセスできていない市民,中小企業に対し,上質な法的サービスを提供できる事務所であること」
この理念をワンフレーズで表すために,2009年6月からは,次のキャッチコピーを使うようになりました。
「いつでも,どこでも,だれにでも 上質な法的サービスを。」
そして,事務所のマーケティングにあたっては,常に,この「いつでも,どこでも,だれにでも 上質な法的サービスを。」という理念に照らして,今,何をなすべきかを議論し,実践するようにしています。

ここで,今回の第2の結論です。
理念・ビジョンは,簡潔に,明確に文章化すること。
頭の中にあるだけで,文字にならなければ,整理もできていませんし,人にも伝わりません。かつ,短く分かりやすい言葉で言い表せていなければ,やはり整理が不十分ですし,人にも伝わりにくいのです。

でも,この「いつでも,どこでも,だれにでも」というフレーズ,聞いたことがありませんか。
そうです,日弁連が,「市民の司法」の理念を掲げ,司法(弁護士)過疎の解消に取り組んだときのフレーズです。
結局,私たちは,事務所の将来像(ビジョン)を考えていく中で,日弁連のビジョンに戻ってしまったのです。
ただ,この理念・ビジョンをどこまで純粋に貫徹できるか。それをやり抜くためには,これまでの弁護士・法律事務所がやっていなかった方針を提起し,実践していかなければならなかったのです。

さあ,そろそろ,具体的なマーケティングの話しに入っていきましょう。

2011/09/12

01 prologue:原総合法律事務所のマーケティング戦略

01 どうして,私たちは,先駆けてマーケティングやマネジメントの視点を持ち得たのか

私たちの事務所が,マーケティング戦略を打ち出したのは,2008年1月であり,マネージャーを置いて,組織を統轄するようになったのは,2008年3月でした。
その後,「弁護士のためのマーケティングマニュアル」(出口恭平著,第一法規)が出版され,弁護士業務にもマーケティングの手法が使われることが意識され始めたのが2008年3月であり,「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」(岩崎夏海著,ダイヤモンド社)が出版され,マネジメントの重要性が再認識されたのが,2009年12月でした。
前者を読んだときには,私たちの事務所でやろうとしていることと形の上では重なる部分が多いけれど,ビジョンが見えないし,体系的ではないなという感想を持ちました。また,ドラッガーは,名前を聞いたことがあるだけで,どんなことを言っているのかは知りませんでしたが,後者で書かれていることがそれだとすると,私たちが事務所の運営の中で実践的に到達したマーケティングやマネジメントの考え方と一致することを再確認しました。


では,どうして,私たちは,法律事務所としては,先駆けてマーケティングやマネジメントの視点を持ち得たのか。
もちろん,「本」を読んだり,「人の話」を聞いて気付いたわけではありません。
事務所の規模が大きくなるときに,何のために事務所の規模を大きくしようとしているのか,自問する過程で,マーケティングやマネジメントの視点にたどり着いたのです。
私たちの事務所は,何を・どこを目指そうとしているのか-事務所のビジョン問題です。


それまで,私たちの事務所は,弁護士2人,事務局5~6人の規模で運営していましたが,弁護士大増員時代を迎え,2007年12月には3人目の弁護士が入所することが決まっていました(実際には,このとき,弁護士が4人になっています。)。
そうすると,それまでの事務所では手狭になるため,事務所を移転せざるを得ないこととなりました。移転するとして,広さはどれくらい必要か,相談室はいくつ必要か,また事務所の規模を大きくして,事務所財政をどのようにして支えるのか。こういった点を考えるにあたって,前提として,どのような事務所にしようとしているのか,事務所のビジョンを確立することが先なのではないかと考えるようになったのです。
2007年の前半は,この事務所ビジョンを確立させ,それにそった事務所を作るための準備の期間となりました。


では,どのような事務所ビジョンを考えたのか。
別に特別なことを考えたわけではありません。弁護士であれば当然なすべきことを徹底して意識し,具体化しようと考えただけのことでした。
弁護士は,法律上,「基本的人権の擁護と社会正義の実現」を求められている特別な仕事です。しかも,その仕事は弁護士だけが独占しているのです。
そうであれば,私たちは,弁護士の法的サービスが届いていない人に私たちの法的サービスを届ける努力をすべきではないか。そのために,当事務所は,事務所の規模を拡大し,十分な法的サービスを提供できる体制を作らなければならないと考えたのです。
私たちの事務所は,多重債務を含む消費者問題や医療過誤(患者側),行政訴訟(住民側),高齢者問題等に積極的に取り組んでいましたが,この分野では,まだまだ弁護士の法的サービスを必要とする人に法的サービスを提供できていないという実感がありました。特に,長崎県内であれば,当事務所のある県南地域に比べ,県北地域では,これらニーズへの対応は不足しているように思っていました。そこで,事務所の規模を拡大し,これらニーズに対応できるサービスを作り(マーケティングの視点),サービス提供の基盤となる組織を作ろうと考えたのです(マネジメントの視点)。


2007年7月,現在の事務所に移転し,弁護士5人くらいまで,事務局12人くらいまでは入ることのできるスペースを確保しました。その後,2007年12月には弁護士4人の体制となっています。
さらに,県北地域にも事務所を置くために,2008年8月,事務所を法人化し(弁護士法人佳朋設立),2009年1月,佐世保事務所を開設しました。


結論です。
私たちがまず確立しなければならないのは,形だけのマーケティング論やマネジメント論ではなく,確固とした事務所ビジョン(理念)です。ここがぶれることがなければ,後は考えて実行することだけです。そうすれば,自ずとその事務所なりのマーケティングやマネジメントができあがってくるはずです。


長いプロローグになってしまいましたが,このような視点から,法律事務所のマーケティングを考えていこうというのが,このブログの目的です。主な対象は,もちろん法律事務所を運営している弁護士ですが,中小企業の経営者の皆さんにも参考になるのではないかと思っています(中小企業の経営者の皆さんに,原総合法律事務所のマーケティングをテーマにお話しする機会もあるのですが,結構,好評です。)。
次回以降,具体的に原総合法律事務所ではどのようなマーケティングをしているのか,お話ししたいと思います。
ちなみに,マネジメントについてですが,私たちの事務所では,弁護士でないマネージャーが組織を統轄しています。どうして,そのような体制をとっているのかについては,改めてお話しする機会があると思いますが,実際のマネジメントについては,マネージャーのブログがあるので,そちらをぜひ読んでみてください。