03 summary:原総合法律事務所のマーケティング戦略
そもそも,「マーケティング」とは何なのでしょう。
様々な定義がなされているようですが,私たちにとっては,事務所の理念・ビジョンを実現するための考え方の枠組みに過ぎません。
そのような実践的な視点から見ると,マーケティングを次の3つの要素から捉えるのが,有益だと思っています。
(a) 消費者が真に求める商品・サービスを作り,
(b) その情報を消費者に届け,
(c) 消費者がその商品・サービスを得られるようにする活動。
日本では,宣伝,広報(つまり,(b)の側面)に単純化して受け取られる傾向があるようですが,もちろん,それでは,事務所の理念・ビジョンを実現するには不十分です。
そこで,原総合法律事務所のマーケティング戦略が,この3つの側面において,どのようにまとめられているかです。
再度確認しておくと,原総合法律事務所の理念・ビジョンは,
「法的サービスを独占し,そのサービスの提供にあたって,『基本的人権の擁護と社会正義の実現』を求められる弁護士として,法的サービスにアクセスできていない市民,中小企業に対し,上質な法的サービスを提供できる事務所であること」
であり,
「いつでも,どこでも,だれにでも 上質な法的サービスを。」
というものでした。
これを,上記の3つの要素にあてはめ,私たちは,2008年8月,原総合法律事務所のマーケティング戦略を,次のようにまとめました。
(a) 質の高い法的サービスを作り,
(b) 質の高い法的サービスを提供できるという情報を広く法的ニーズをもっている人のところに届け,
(c) 法的ニーズのある人が,「いつでも,どこでも,だれでも」相談を受け,依頼できるようにする。
このように枠組みを作っておくと,新しい試みを打ち出すとき,それが事務所の理念・ビジョンに適合しているかの検証が容易になります。つまり,軸がぶれません。
また,その3要素に照らして,事務所が実践していることを書き並べてみると,どこが弱いのかが分かり,どこに力を入れるべきかも見えてきます。
そこで,原総合法律事務所が行っているマーケティング活動をこの3要素に分類してみましょう。読めば一目瞭然なのもあれば,これは何だというのもあると思います。振り返ってみても,この数年で,私たちは,実にいろんな試みをしてきたと思います。そして,今も平行して現在進行形のプロジェクトがあります。
次回以降は,まず,これらのうち,特徴的なものを紹介していこうと思います。
(a) 質の高い法的サービスを作るために
<弁護士レベル>
・弁護士の研修(外部研修,所内研修)
・弁護士の専門化(当面は,医療過誤,交通事故)
・文献・データベースの完備(図書館に行く必要がないだけの最新版の文献,医学論文データベースとの契約等)
・裁判事案についての共同担当制
・所長・先輩弁護士による指導・支援の徹底
<事務局レベル>
・事務員の研修(外部研修,所内研修。ただし,法律知識の習得は重視しない。)
・マニュアルの整備
・秘書会議の充実
・接遇スキルの向上
<弁護士・事務局を通じて>
・マナー研修
・危機対応マニュアル(ハード面を含めて)
・精神的に問題をもった人の対応に関する研修
(b) 質の高い法的サービスを提供できるという情報を広く法的ニーズをもっている人のところに届けるために
・HPの充実(圧倒的な情報量と分かりやすさ),ブログの位置付け
・リーフレット作成(事務所紹介,事件別,報酬ガイド等)
・ガイドブック作成(多重債務,相続・遺言等)
・DVD作成(プロモーションビデオの意味も持たせて)
・メディアでの広告(自治体広報誌,新聞,ミニコミ,ラジオ等)
・ラジオ番組への出演
・ラジオ番組とタイアップしたイベント
・記事としての掲載(ニュース性をもたせる工夫)
・キーマンを介しての紹介
・非顧問型,準顧問型,顧問型利用企業社員への広報
・非顧問型,準顧問型,顧問型利用企業での社員セミナー(「弁護士の取説」等)
・会議室を利用した各種セミナー
・実践型連続セミナー
・会議室の無料貸出し
・関連士業とのネットワーク
・行政との連携(勉強会の開催等)
(c) 法的ニーズのある人が,「いつでも,どこでも,だれでも」相談を受け,依頼できるようにするために
・佐世保事務所(更にその後の支店構想)
・各種無料相談(扶助取扱,事務所独自の無料相談,特に交通事故専門相談窓口での3回無料相談)
・着手金・報酬金の低額化・分割支払(ただし,適正な価格の堅持)
・事務所内当番制(即日相談体制)
・事務所内夜間・土曜相談
・出張相談
・電話・テレビ会議相談
・公民館セミナー(無料相談会付き)
・無料相談券の配布
・メンバーズカードの作成,配布