04 全ては新件相談のために-即日相談に応じる覚悟
新件相談をどれだけ重要と考えるかは,事務所によって温度差があるようです。
原総合法律事務所の場合は,事務所の理念が,「法的サービスにアクセスできていない市民,中小企業に対し,…法的サービスを提供すること」にあるのですから,想定される相談者・依頼者は,それまで全く法律事務所との関係がない人であって,まず新件相談から始まる人です。新件相談は,決定的に重要です。
これに対し,従来のオーソドックスな法律事務所は,顧問を中心に業務しており,相談者・依頼者は,顧問先であったり,顧問先から紹介された人が多かったのではないでしょうか。
そこでは,マーケティングといっても,せいぜい顧問先の維持や開拓であって,わざわざマーケティングを意識する必要もなかったのかもしれません。
しかし,私の場合は,地縁・血縁のないところで弁護士を始めたので,顧問先などあるはずがありません。当然に,顧問をもたない人の新件相談から事件を受任しなければなりませんでした。
さらに,今は,もっと積極的に,原総合法律事務所は顧問に依拠しないという立場を明確にしています。それは,事務所の理念に沿わないからです。事務所の軸をぶらさないために,理念は断固として貫き通すべきです(02参照)。
そうはいっても,以前の牧歌的な時代なら,先輩弁護士から事件を紹介してもらうこともできたし,弁護士会の法律相談センターなどで新件相談を受けることができたのではないか,ところが,ここ数年,弁護士が増える一方で,弁護士会の法律相談センター等の相談数は減少し,厳しい時代になったのだと言われるかもしれません。
そうです。そこにこそ,弁護士・弁護士会のマーケティングの弱さが象徴的に表われていると,私は見ています。
現実に,弁護士の法的サービスを受けることができれば,もっと適切な解決にたどり着けたのに,弁護士にアクセスできなかったばかりに,その権利,利益を害されている市民,中小企業は,まだまだ多いのです。そういった市民,中小企業が弁護士にアクセスできるようにすることが,まさに原総合法律事務所のマーケティングの目的です。
そこで,原総合法律事務所のマーケティングの取組みが,どのような結果を出しているかです。
現在,原総合法律事務所では,長崎事務所に3人,佐世保事務所に2人の5人の弁護士で,1日平均4件の新件相談を受けています。少数の弁護士会や法テラス経由の新件相談もありますが,ほとんどは,この数年の事務所独自のマーケティングの取組みを通じての結果です。マーケティングを位置付けて取り組む以前は,せいぜい,以前の依頼者や関係者から聞いたからという新件相談が週に数件あったくらいでしょうか。
原総合法律事務所のマーケティングの取組みは,狙いどおりの成果を上げつつあると考えています。
このように新件相談を増やすために何をしたかが,一番興味のあるところかと思いますが,結局は,前回(03)のブログで上げた試みの全てが,この新件相談を増やす結果につながっているのです。
広報の重要性は,広く認識されてきたところだと思いますが,前提として,「いつでも,どこでも,だれでも」相談を受けられる体制を作ることがとりわけ重要だというのが,この間の原総合法律事務所の取組みの教訓です。
具体的には,まず実行すべきは,「即日相談体制」です。
皆さんの事務所では,相談の問合せの電話が入ったとき,「では,○日後の○時なら時間をお取りできます。」とか答えていませんか。原総合法律事務所では,「今日でも相談をお受けできますが,ご希望の日時はありますか。」と答えます。せっぱ詰まっている方もおられるでしょうし,いろんな都合を抱えた相談者の希望に応じられないようでは,まず,入り口の段階で,ユーザー目線ではありません。原総合法律事務所では,「サービス業の視点」をキーワードの一つにしていますが,顧客の都合より自分の都合を優先するサービス業などあり得ないでしょう。
確かに,弁護士1人では,即日相談体制は難しいかもしれません。しかし,弁護士が2人以上いるのなら,あとは,即日相談にも応じるという覚悟だけです。その覚悟もないようでは,新件相談を増やす前提がないというのが,今日の結論です。