2011/10/30
17 弁護士費用から考える
17 もっと身近な弁護士であるために4-弁護士費用から考える
前回,法律事務所のマーケティングに関わって,「法律相談」を考えるにあたって,最後に無料相談にふれました。
今回は,無料相談以外の弁護士費用(弁護士報酬)全体について,弁護士へのアクセス(障害)の視点からまとめて考えてみます。
ここでも,やはり,これまで弁護士を利用したことのない市民・中小企業が,弁護士費用をどのように考えているかが検討の視点になるべきです。
一番,よく聞くのが,「弁護士に頼んだら,いくらかかるのか見当がつかず,怖くて頼めない。」という声です。
もっとも,2004年4月1日の弁護士法改正以前は,各弁護士会に報酬基準があったわけですし,その後は,各事務所で報酬基準を作成しています。また,日弁連でも「目安」を作成しています。そして,最近では,各事務所がHPなどで報酬基準を公表しています。
そこで,私も,弁護士費用が分からないと言われるたびに,「事務所ごとに報酬基準を決めて,HPなどで公表しているんですけどねえ。」と弁解しつつ,ちょっと調べれば分かることなのにと思っていたのが正直なところでした。
しかし,誰からも繰り返し同じことを言われるということは,まだ弁護士側の取組みが不十分なのだろうと考え直しました。
そこで,HP上での説明は,従来の報酬基準を詳しく説明するものに加え,2011年7月,分かりやすく説明するページを追加しました。そこでは,具体的なケース毎の弁護士費用の目安も,典型的なものに限ってですが,載せています。今後は,更に具体的なケースの数を増やすことや,主な事件類型の説明のページ,よくある質問などのページから,この具体的な弁護士費用の目安のページに飛ぶリンクをはることなどを進めなければいけないと思っています。
そして,HPにこの分かりやすい説明のページをアップするのと同時に,「弁護士費用ガイド」というリーフレットも作り,相談室内に置くのはもちろん,各種のセミナー等で配布するようにしました(というか,このリーフレットをHP上にアップしたのが,上記の分かりやすく説明したページです。)。
この「弁護士費用ガイド」というリーフレットは好評で,各種リーフレットのうち,一番減りが早いと思うのが,実はこの「弁護士費用ガイド」だったりします。
また,2007年7月,現在の事務所に移転したときには,各相談室の相談者の正面の壁に相談料を掲示するようにしました。こんなことでも,相談者には意外なようで,「相談料がはっきり書いてあるんですね。」という声も耳にします。
ちなみに,それまでは,相談が終わり相談料の話しをすると,「相談にお金がかかるとは思わなかった。」という人がときどきいましたが,予約の電話の際,相談料がかかることを告げ,加えてこの掲示をするようになって以降,そのような人はいなくなりました。
次に,「相談したら,依頼しなければいけないのでは。」という誤解の声も聞くことがあります。相談料だけでは終わらないと思えば,それは確かに相談に行くのもハードルが高いでしょう。
そこで,そんな誤解にも対応するよう,弁護士費用ガイドには,次の流れを冒頭に書き込んでいます。
① まず,相談をする。
② 弁護士費用の見積書を受け取る。
③ 見積書を持ち帰って,依頼をするかどうか検討する。
日弁連の「弁護士の報酬に関する規程」では,見積書は,「申し出があったとき」に作成すればいいことになっていますが(4条),原総合法律事務所では,必ず見積書を作成し,弁護士費用を確認してもらった後に受任を受けることにしているのです。
この見積書も依頼者にとっては意外なようです。
そして,もちろん,「弁護士費用は高くて払えない。」という声もあります。
そのためにあるのが,まず,法律扶助です。原総合法律事務所では,法律扶助にも積極的に対応しているので,かなりの数を受けています。
原総合法律事務所のHPでも,法律扶助については詳しく説明していて,このページは,実は原総合法律事務所のHPの中でも良く読まれているページの一つです。それだけ法律扶助のニーズは高いということですが,よくあるのが,法テラスの事務所に行かなければ法律扶助を利用できないという誤解です。そこで,これらのよくある誤解についても,原総合法律事務所のHPでは冒頭のQ&Aを追加しています。
ただ,現行の扶助は,最近,例外も制度化されましたが,原則は償還なので,どうしても着手金や報酬金の基準が低額に過ぎます。着手金や報酬金の適正化は,重要な課題です。
また,原総合法律事務所では,独自に着手金等の分割もケースに応じて受けています(例えば,破産等については,こちら)。
ただ,分割計画は,きちんと守ってもらわないと信頼関係が壊れますから,支払が遅れたときの督促など,担当者を決め,マニュアル化しておくことが必要です。報酬金の長期の分割については,銀行の自動引落も利用したことがあります。
最近,急に増えているのが交通事故被害者の弁護士保険(権利保護保険)の利用で(毎月のように,この保険を利用した依頼があります。),これは,確実に弁護士へのアクセスを容易にしています。そこで,原総合法律事務所のHPでも,その説明をするようにしました。
ところが,この保険は,契約者の家族も対象となったり,乗車中の事故でなくても対象となったりするにもかかわらず,使われていないことが少なくないようにいわれています。そこで,原総合法律事務所では,交通事故の被害者の相談では,家族の自動車保険も含めて確認することにしています。