26 もっと身近な弁護士であるために6-もう一度考える「即日相談」
「即日相談」の重要性については,このブログの冒頭で強調しましたし(04 全ては新件相談のために-即日相談に応じる覚悟,05 即日相談実現のための意識改革とテクニック),アクセスの時間的な障害としてもふれました(14 弁護士へのアクセスを障害するもの,16 様々な相談の形)。また,私がパネリストとして参加した昨年(2011年)11月11日の横浜での日弁連弁護士業務改革シンポジウムでも,その重要性をお話ししました。
その後,仙台の小松先生が,このブログや日弁連シンポでの私の発言を契機に,平成24年の目標として,即日相談を原則とすることを明らかにされました(法律相談体制充実強化策-お客様要望最大尊重と事前準備)。それに答えて,マネージャーがマネジメントのブログで,現在の原総合法律事務所の即日相談のシステムを紹介したところ(NO117 即日相談のススメ),さらに,小松先生から「必見」とのお褒めの言葉をいただきました(法律相談体制充実強化策-桐・スカイプ等フル活用充実回答)。小松先生には,2日にわたり原総合法律事務所の実践を取り上げていただき,マネージャーともどもお礼申し上げます。
(2012/01/08追記 その後,マネージャーのブログで,更に即日相談を取り上げています。→NO119 即日相談のススメVer.2,NO121 即日相談のススメVer.3)
そこで,もう一度,弁護士・法律事務所へのアクセス改善のために,即日相談は避けて通れない課題であることを再確認し,いくつかの疑問に答えることが今日のテーマです(かなり長文です。)。
ところで,マネージャーもふれているところですが,即日相談の発想自体は,マネージャー,事務局長が率いる事務局からのものです。往々にして,弁護士は,従来の弁護士の仕事のやり方に染まりきっていて,新しい,自由な発想は苦手です。ここは,もっとも身近な「市民」である事務局の発想に謙虚に耳を傾ける姿勢がぜひとも必要です(そのような事務局のマネジメントがマネージャーのブログの課題です。)。
さて,そこで,即日相談がなぜそれほど重要なのかということですが,既にお話ししたとおり,それがマーケティングの手法として最も有効であったし,マネジメントの観点からも弁護士・事務局の意識改革を迫るものであったからです。
<マーケティングの視点から>
弁護士・法律事務所の「敷居が高い」,「ハードルが高い」と言われる一つの大きな要因が,相談の予約が何日も後でなければ入らないという点にあります。このことは,原総合法律事務所に相談に来られた相談者にヒアリングした結果から明らかです。
トラブルを抱え,せっぱ詰まってはいるけれど,法律事務所に電話することには不安も感じ,ようやく決心して電話をかけたのに,自分の希望は聞いてはくれず,弁護士の都合で何日も後の相談しか受けられないというのでは,相談に来なくてもいいというのと同じことでしょう。
そういう方の中には,わざわざ仕事を休んで,今日は弁護士の相談を受けようと電話をかけてこられる方も多いのです。即日相談を行うようになって,経験的に,夜間相談や土曜相談の需要は多くないことが分かりました。本当に困っている人は,仕事が終わった後や仕事が休みの日に相談に行こうと思うのではなく,仕事を休んで相談に行こうと思うのです。
そうして即日相談に応じるようにすると,問合せの電話をほとんど全て相談に結びつけることができます。これも原総合法律事務所の即日相談実践の結果から明らかです。
さらに,即日相談に応じる法律事務所は珍しいので,すぐにその情報が広がり,例えば,他の法律事務所からも,行政の窓口からも,「今日相談を受けたいのなら,原総合法律事務所に行ってみれば。」と紹介してもらえるようになります。
そうすると,即日相談の次の段階として,飛び込みの相談にも応じる必要が出てきます。こういった他の窓口で原総合法律事務所を紹介された方は,その窓口を訪れたその足で原総合法律事務所にやって来ます。事前に電話をかけようとはされないのです。これも原総合法律事務所の実践の結果から導いた教訓ですが,即日相談の次は飛び込み相談です。
その結果が,例えば,マネージャーのブログでも紹介されていますが,1月5日の仕事始めの日,全く事前の予約はなかったのに,即日相談が5件入ったという実績に表われています(NO118 やっぱモチベーションでしょう!のススメ)。年末年始にかけて訴状の送達を受け,慌てて相談に来られた方もいました。年末年始の帰省時に親族と相談し,帰省中にと相談に来られた方もいました。その中には,もちろん飛び込み相談もありました。即日相談,飛び込み相談をお断りしていれば,この5件の相談はなかったのです。
<マネジメントの視点から>
しかし,即日相談に応じるには,弁護士・法律事務所の都合を優先するのではなく,相談者の都合を優先するという意識改革が必要です。
事務局レベルでいえば,何度もふれたところですが,問合せの電話に対し,「○日の○時であれば,時間をお取りできます。」と答えるのではなく,「今日でも相談をお受けできますが,ご希望の日時はおありですか。」と答えなければなりません。
弁護士レベルでいえば,既に法廷の期日や打合せの予定が入っていれば仕方がありませんが,起案の都合を優先することなどあってはなりません。法的サービスを独占する地位を与えられている弁護士は,市民の法的ニーズに答えるべき責務を負うと自覚すべきです。
<いくつかの質問>
さて,ここで,私のブログや業革のシンポでの話しを聞いた方からの質問です。
即日相談に応じるようにすると,相談が殺到し,自分のキャパを超えてしまいそうで怖いとの感想を何人かの方から伺いました。
確かに,相談数は増加しますが,それは経験と工夫でどうにかなるものです。原総合法律事務所の場合,問合せの電話があった際,電話を受けた事務局が聞取りを行い,直ちにデータベースに入力し,相談前に弁護士が相談概要を把握することができます。必要であれば,裁判例,文献等も確認した上で,相談に臨めるので,相談時間も短縮できますし,弁護士の負担も軽くなります。そのために,典型的な事件の類型については,聞き取るべき項目を整理してあり,その項目にそって,聞取りを効率的に行っています。
即日相談の相談者は,事件として受任しても,事件単価の低い場合が多いのではないかとの質問も受けました。
確かに,事件単価の低い事件も多いのですが,そもそも,事件単価の高い事件だけをつまみ食い的に受任しようという考え方はいかがかと思います。そして,事件単価の低い事件も相当数受任していれば,その中に事件単価の高い事件も一定割合で受任できるというのが,実感です。
即日相談や飛び込み相談は,ハードな案件が多いのではないかとの質問もありました。
しかし,経験的には,顧問先や以前の依頼者など紹介者のある相談者と紹介者のいない相談者で,相談の傾向に差があるとは感じていません。
最後に,既に即日相談の実践例は原総合法律事務所にあります。皆さんは,その実践例をふまえ,自分なりにアレンジすれば,原総合法律事務所が最初に取り組んだときよりは幾分容易に即日相談を実現できるのではないかと思います。
私たちは,即日相談が法律相談の常識になることが,弁護士の「敷居」,「ハードル」を下げ,弁護士全体の「顧客の創造」につながると考え,様々な形で発信を続けています。より良い法律相談のあり方について,一緒に考えていきたいと思いますので,皆さんからのご意見や疑問などもお寄せいただければ幸いです(このブログにはコメントできないので,HPのお問い合せフォームをご利用ください。→こちら)。