2011/11/28

22 スタッフ全員の上質なサービス


22 法律事務所のブランディング5-スタッフ全員の上質なサービス

法律事務所のマーケティング・弁護士のマーケティングの観点から考えたとき,事務所内のブランディングも必要です。
今回は,来所された相談者,依頼者に向けてのブランディングの第2回です。

前回は,弁護士の業務という側面からの相談者,依頼者に向けてのブランディングでした。
しかし,相談者,依頼者に提供する法律事務所の法的サービスは,弁護士の提供する法律事務だけではありません。ソフト面でいえば,弁護士だけではなく,事務局スタッフの対応もありますし,ハード面でいえば,事務所や相談室の作りなどもあります。
これら全てをトータルして,「原総合法律事務所は違う。特別だ。」という信頼感と差別化を進めなければなりません。

まず,事務局スタッフの対応については,このブログの冒頭で,「スタッフ全員の上質のサービス」というキーワードにふれたことがありました(02参照)。

事務所に問合せの電話がかかったとき,最初に電話に出るのは事務局です。この第一印象は決定的に重要です。悩み事を持って,でもおそらくは弁護士に相談するのに不安を残して,ようやく電話をかけてきた人に,電話をかけてよかったと思わせなければなりません。
一般的なビジネスマナーをふまえた電話対応はいうまでもありません。
加えて,トラブルに巻き込まれ,気持ちの沈んだ方からの電話ですから,少しでも気持ちが前向きになるように,明るく対応することが必要です。
「先生のところは,誰が電話に出ても感じがいいですよね。」と言われるようにならなければなりません。

事務所に来られた相談者の方とも,まず受付で対応するのは事務局です。
「どんな事務所だろう。どんな弁護士だろう。」という不安を抱いて来られている相談者ですから,マナーをふまえた対応はもちろんですが,加えて,少しでも不安を減らせるよう,丁寧な,笑顔での対応が求められます。
このとき,電話を受け付けた事務局が対応すると,相談者もホッとされるようで,最近,原総合法律事務所では,できる限り電話を受けた事務局が受付対応をするように心がけています。
その後,相談室に誘導するのも事務局ですし,お茶を出し,相談カードの記入をお願いするのも事務局です。ここでの対応にも,同じような配慮が必要です。

これらの電話や受付,相談室での対応について,事務所内で指導する組織作り=マネジメントの体制が必要ですが,この業界は,ビジネスマナーについては,疎いところもあるので,外部の研修を受けることも必要でしょう。
ちなみに,実は,もっとビジネスマナーを知らないのは,弁護士だったりします。
そこで,原総合法律事務所では,弁護士も含めた全所員対象に,外部から講師を招き,事務所内でビジネスマナーの研修をしたこともあります。

さらに,特に電話での問合せの際,重要なのは,法律相談,受任につなぐという目的意識です。
事情を聞いた上で,法的な解決の方向を助言できるのは弁護士なのですから,弁護士の法律相談につながなければ,電話をかけてもらった意味がありません。
ところが,法律事務所に電話をかけてくる人は,法的トラブルを抱え,混乱したり,怒りのため感情的になったり,不信感に囚われていたりします。そういった方からの電話ですから,気持ちのいい電話であるはずがありません。前回,弁護士の対応としてもふれましたが,事務局も,そんな電話を受けて,面倒くさいと思ったり,やりたくないと思うと,すぐに相手方に伝わってしまうものです。何よりも,そんな気持ちでは,問合せを相談につなぐことなどできません。
問合せの電話が相談の予約につながっていないケースが目立つようなら,事務局に対して,問合せを法律相談につなぐ目的意識の徹底が検討されなければなりません。まさに,マネジメントの課題というべきで,ここから先は,マネージャーのマネジメントのブログのテーマです。

2011/11/25

21 法律事務所内のブランディング(法的トラブルからの「更生」)


21 法律事務所のブランディング4-事務所内のブランディング(法的トラブルからの「更生」)

法律事務所のマーケティング・弁護士のマーケティングの観点から考えたとき,そのブランディングは,外へ向けたものだけではありません。事務所内のブランディングも考えなければなりません。
それは,来所された相談者,依頼者に向けてという意味と,事務所のスタッフ自身に向けてという意味があります。

今回は,まず,来所された相談者,依頼者に向けてのブランディングの第1回です。
なのに,サブタイトルが法的トラブルからの「更生」???と思われた方,最後まで読んでいただければ,何となく感じは伝わるかと思います。実は,これ,2~3日前に思いついたフレーズです。

以前,「人を介しての広報」(13)でふれましたが,原総合法律事務所では,そのマーケティング戦略上,全ての依頼者,更には相談者も「キーマン」と位置付けています。受任に至った人はもちろん,受任に至らなかった人も,また何かあれば気軽に原総合法律事務所に来てもらえるような,更に周囲に困った人がいれば原総合法律事務所を紹介してもらえるような事務所になることを目指しています。

それまで原総合法律事務所のことを知らない人を,原総合法律事務所までアクセスさせることは容易ではありません(もちろん,そのための努力は続けています。)。
しかし,一度,原総合法律事務所の法的サービスを受けた人は,そこで満足,納得を得ていれば,リピーターになってもらえますし,周囲にも原総合法律事務所を紹介してもらえます。
不特定多数の人たちに広報するよりは,ずっと効率的,効果的な広報です。

そのためには,事務所に来られた相談者,依頼者に向けてのブランディングが考えられなければなりません。

ここでのキーワードは,相談者,依頼者の満足であり,納得です。
結果として勝ったのか,負けたのかにかかわらず,相談者の望む結果にそったアドバイスができたのか,できなかったのかにかかわらず,満足,納得を得ることは可能ですし,満足,納得を提供しなければなりません。仮に,結果として勝ったとしても,また,相談者の望む結果にそったアドバイスができたとしても,相談者,依頼者に不満が残り,納得が得られなければ,その相談者,依頼者は,二度と原総合法律事務所には来ないはずです。
勝ち負けでいえば,半分は負けるわけですから,負けるにしても,正当に負けて,負けることに納得してもらわなければ,その相談者,依頼者は,もう原総合法律事務所はもちろん,どんな弁護士のところも訪れないでしょう。

最近,弁護士の仕事は,経済的な結果ではなく,法的トラブルから「更生」してもらうことだと認識を新たにしているところです。
勝ち負けにかかわらず,弁護士の法的サービスを受けることで法的トラブルから「更生」できた人は,また法的トラブルに遭えば,法律事務所に来てくれるのです。

では,そのためにどうすればいいかといえば,何かテクニックやマニュアルがあるわけではありません。
もちろん,法的知識やノウハウが豊富であることは前提ですが,その上で,上から目線ではなく,真摯に話しを聞き,持てる知識やノウハウを総動員して,解決方法を考えることです。それでも「だめ」であれば,相談者,依頼者は,ほとんどの場合納得するというのが,24年近くに及ぶ経験の教訓です。
面倒くさいとか思ったり,やりたくないとか思うと,すぐに相談者,依頼者には伝わるものです。そういう気持ちで対応をされれば,相談を受けても,依頼しようとは思わないでしょう。
また,マニュアル類で要領よく答えたり,書面を書くと,不思議とその「手抜き感」が相談者,依頼者に伝わるものです。

やはり,問題はモチベーションであり,真摯さであり,謙虚さだと再確認しています。圧倒的な努力がないところに信頼は生まれませんし,ブランディングはできません。法律事務所のマーケティングは,テクニックの問題ではないのです。逆に,新人であっても,圧倒的な努力があれば,テクニックどうのこうのという問題ではなく,経験を積んでいく中で,自然にブランディングされていくのです。

ちなみに,そうやって真摯に対応していると,依頼を受けたときには,問題があるようにも思われた依頼者が,変わっていくこともありました。まさに,法的トラブルからの「更生」です。

2011/11/20

20 法律事務所ブランディングのよくある質問


20 法律事務所のブランディング3-ブランディングのよくある質問

法律事務所のマーケティング戦略(弁護士のマーケティング戦略)に関わって,私がパネリストを務めた日弁連第17回弁護士業務改革シンポジウム第1分科会の打合せや当日のパネルディスカッションで出された質問です。
法律事務所(弁護士)のマーケティングやブランディングについて,本質的な点に関わる疑問だと思います。

Question
若手でもなく,既に多くの事件を扱っていたのに,更にブランディングし,マーケティングに取り組もうとしたのはなぜですか。

Answer
原総合法律事務所が,ブランド化を議論し,マーケティングの視点を確立したのが,2008年ですから,私が弁護士になって20年,独立してからも16年が経っていました。
既に,消費者問題や高齢者関係,また医療過誤や交通事故については,かなりの経験も積んでいましたし,信頼も得ているという自負もありました。
しかし,まだまだ,原総合法律事務所の法的サービスを届ることができていない市民,中小企業が多かったわけで,そこに私たちの法的サービスを提供するための取組みが必要だと考え,そのためにブランディングやマーケティングの視点を取り入れたのです。

Question
都市部と地方で,どちらがブランディングが難しいでしょうか。

Answer
地方で,基本的人権の擁護や社会正義の実現という弁護士の使命をふまえ,真摯に業務に取り組めば,自然に信頼を得て,ブランディングできます。地方の方が,ブランディングは容易です。
確かに,その地域の人口を弁護士数で割ると,弁護士1人当たりの人口は地方の方が多いのでしょうが,法律事務所,弁護士の絶対数が少ないので,「特定」の弁護士が目立ちます。例えば,メディアに載る機会も地方の方が圧倒的に多いのです。また,口コミを通じて「特定」の弁護士の業務に取り組む姿勢が,より容易に広がります。
「大勢」の中に埋没せず,「特定」の弁護士の存在感が示せる地方の方が,ブランディングが容易なのは明らかでしょう。(ただし,逆に,「特定」の弁護士のマイナスイメージも容易に広がり,なかなか忘れられないのが地方です。)

Question
一つの法律事務所がマーケティングを進めると,他の法律事務所との間で「顧客の奪い合い」になるではないでしょうか。

Answer
全ての法的トラブルを弁護士が扱っているのであれば,ある法律事務所が「顧客」を獲得すれば,他の法律事務所の「顧客」が減ることになり,「顧客の奪い合い」になるのはそのとおりでしょう。
でも,現実には,日弁連等の統計を持ち出すまでもなく,法的トラブルを抱えながら,弁護士にたどり着かない市民,中小企業は多いのです。これまで弁護士にたどり着いていなかった市民,中小企業に弁護士の法的サービスを提供するのは,新たな「顧客の創造」であって,「顧客の奪い合い」でないことはいうまでもありません。
そして,原総合法律事務所は,まさにこれまで弁護士の法的サービスを受けたことがない層に弁護士の法的サービスを届ることをマーケティング戦略の目的とし,そのためにブランディングを進めているのです。

Question
大々的に広告をうち,多くの事件を受任している法律事務所で,事件処理が丁寧でなかったり,不適切ではないかと思うところがあるのを見ると,マーケティングやブランディングにはマイナスイメージがつきまとうのですが。

Answer
マーケティングは,顧客の満足を目的としますし,ブランディングは,顧客の信頼を前提とするのですから,事件処理が丁寧でなかったり,不適切では,そもそもマーケティングとはいえませんし,もちろん,ブランドにもなり得ません。
私たちが進めるマーケティングは,法的サービスを必要とする市民に適切な法的サービスを提供しようとする仕組みで,その結果,市民の信頼を得ているのが,私たちが考えるブランディングされた法律事務所です。

2011/11/18

19 ブランドのアピール(法律事務所の場合)


19 法律事務所のブランディング2-ブランドのアピール

前回,法律事務所のブランディング編1で,事務所の軸=理念(ストーリー)に貫かれた実践の歴史(ヒストリー)が,法律事務所のマーケティング戦略上,ブランディングに不可欠なことをお話ししました。
事務所の理念がはっきりしなかったり,軸がぶれていたりすれば,もちろん,そんな法律事務所はブランドにはなり得ませんし,圧倒的な努力に裏打ちされた実践の歴史がなければ,そんな法律事務所もブランドにはなり得ません。

しかし,理念実践の歴史があれば,ブランドとして十分かといえば,原総合法律事務所にとっては,まだ不十分です。
それは,原総合法律事務所のマーケティング戦略の基礎となる理念が,「いつでも,どこでも,だれにでも 上質な法的サービスを。」広く市民,中小企業に提供することだからです。
原総合法律事務所のブランドを広く市民,中小企業に浸透させなければなりません。
そこにはアピールの工夫が必要となります。

この点は,既に広報に関わって既に数回に分けてふれたことがあるので,ブランディングという観点からのまとめです。

まず,ブランディングに重要な広報は,以前,06 広報を考える1-効果のとらえ方で分類したタイプⅠのかなり間接的な広報です。直接的に相談や依頼に結びつくわけではないけれども,原総合法律事務所の存在を地域に行き渡らせるための広報,例えば,テレビ・ラジオのCM,新聞・広報誌の広告,電車・バスの広告等がそれです。
これら媒体は,一定期間は継続的に行わなければ,効果はありません。
そこで,費用とのバランスを考えることになりますが(そこで,何といっても高額なテレビは除外されます。),経験的には,地方では,市の広報誌ラジオのCMなどがお勧めかと思います。特に,ラジオのスポットのCMは,地方では,移動に車を使うことが多く,結構聞かれています。また,こういったスポットのCMを流していると,パブリシティというおまけで番組枠がもらえたりします。原総合法律事務所では,今は月1回ですが,5分間の「ラジオ法律相談」の枠を持っており,これも結構聞かれています。

ところで,各種の新聞や広報誌などに広報を打つ場合,気をつけなければならないのが,07 広報を考える2-統一されたイメージで言ったように,イメージを統一することです。
各媒体毎に広告代理店が異なるため,業者任せにすると,デザインやキャッチコピーがバラバラになり,同じ法律事務所と認識されないおそれがあります。なかなか業者にはイメージが伝わらず,経験的には,案を数回手直ししないと思ったイメージには仕上がってこないものです。ここは,安くないお金を出すわけですから,手間をかけてでも,校正を重ねるべきです。
最近は,ロゴマークは持っている法律事務所も増えてきましたが,更に進んで,広報のデザインを統一するわけです。具体的には,フォント,色調,背景に具象を使うのか,抽象を使うのか,曲線を使うのか,直線だけにするのか等を制限します。
そして,文字情報は,できる限り少なくすべきです。この手の広報は,どうせ読み流されるだけで,熟読されるものではありません。極論すれば,事務所名さえ記憶に残すことができれば,後は,HPや電話帳から検索可能です。
さらに,具体的に表現するのは難しいのですが,感性,センスが統一されていることも必要です(このあたりは,デザインの優れた広告等を見て,自らの感性,センスを磨くしかありません。)。

この方向を徹底すると,<番外編3>のイメージポスターになるわけですが,さすがに,原総合法律事務所でも,このイメージポスターは,まだ事務所内に貼り出しているだけで,外には貼り出していません。しかし,いずれは,これに近いものは試してみたいと思っています。
ちなみに,最近の原総合法律事務所の広報のイメージが,このイメージポスターに集約されていると説明すると,その感性,センスを分かってもらえるでしょうか。

そして,このイメージポスターの手法は,実はブランディングという観点からは他の広報媒体でも有効なのではないかと考えています。
世のブランドと言われる商品やサービスを見ると,一方でその商品やサービスの内容をストーリーをもって説明する広報もあれば,他方で,ほとんど文字情報を含まないイメージだけの広報もあります。(このあたり,マネージャーのブログでもふれています。→NO61 イメージ作りのススメ
このイメージだけの広報は,インパクトをもって人の意識にその商品やサービスを残すという意味で,ブランディングにとっては有効な手段だと思えます。
ただ,法律事務所では,そのような広報を行っている例は,見当たりません。
確かに,実践の歴史=ヒストリーがなければ,イメージだけの広報を行っても,むしろ軽薄な印象を与え,逆効果でしょうが,既に実践の歴史のある法律事務所であれば,イメージだけの広報に踏み切ることも考えていいと思います。

そこで,原総合法律事務所では,まず,イメージポスターを作ってみましたが,同様の手法の他の広報も考えています。その際は,ブログ上でもお知らせしたいと思います。

2011/11/13

業革シンポジウムを終えて

<コラム編4>業革シンポを終えて

日弁連第17回弁護士業務改革シンポジウムで得たことは,今後の原総合法律事務所のマーケティングに生かし,その結果は,このブログでご報告することになると思いますが,まずは取り急ぎの感想です。

第一に,このシンポジウムを通じて,確信したのは,マーケティングは人権課題だということです。
原総合法律事務所の場合,その理念は,「基本的人権の擁護と社会正義の実現」を軸に,「いつでも,どこでも,だれにでも 上質な法的サービスを。」届けようというものですから,そのマーケティング戦略も当然に「基本的人権の擁護と社会正義の実現」を目指すものでした。
しかし,考えてみれば,全ての弁護士が,「基本的人権の擁護と社会正義の実現」を使命としているのですから,そこでまっとうなマーケティング戦略を考えれば,「基本的人権の擁護と社会正義の実現」が軸となるのは当然です。意識的か,無意識的かの違いはあれ,第1分科会の基調報告はもちろん,各パネリストの発言も,「基本的人権の擁護と社会正義の実現」が軸にあったと感じました。
そのことを再認識させられたのが,懇親会での宇都宮日弁連会長とのちょっとした会話でした(ちなみに,そのときの様子は,マネージャーのブログを→「シンポジウム(「ぼんやり振り返り」)のススメ」)。宇都宮会長も,第1分科会を一部ご覧になっていたようで,業務改革やマーケティングの文脈で語られる過払いが,一連の最高裁判決以前の消費者問題を人権課題と位置付け取り組んできた弁護士たちの戦いの成果であることを話しておられました。それは,同じように,当時,困難だった過払事案に取り組んできた原総合法律事務所の思いでもありました。(その関係で,宇都宮会長とは以前から面識があったわけです。)
そこで,これからは,マーケティングが人権課題であることを明確に意識し,打ち出していきたいと思います。

第二に,しかし,依然として,弁護士にマーケティングの意識は薄いということ。それなりの意識を持って参加されたと思われる第1分科会の皆さんにとっても,刺激的を通り越して,衝撃的な内容だったかもしれません。
とりわけ,他の弁護士のパネリストが全員50期代という中で,40期の私には,経験をふまえた原則的な発言が求められていると理解しました(原則的というのは,前で述べた,マーケティングも「基本的人権の擁護と社会正義の実現」の視点で取り組まなければならないということです。)。
しかし,その発言は,「普通」の弁護士の認識とはかなりかけ離れたものになっていたようです。原総合法律事務所の中で業務していると,あまりに当たり前なことで,「普通」の弁護士の認識との違いに気がつかないというのが本当のところです。
このシンポジウムが転機になったといわれれば嬉しいのですが。

第三に,やはり,日弁連のレベルはすごいということ。
第1分科会以外の気になる分科会の基調報告書を読んでいるところですが,まずは第10分科会です。高齢社会対策本部が担当した分科会で,「高齢社会におけるホームロイヤーの役割~高齢者へのトータルな支援を目指して~」というタイトルの分科会です。
その問題意識は,高齢者の財産管理,財産承継(遺言など)に弁護士が十分な対応をしていない現状をふまえ,福祉・医療専門職や専門機関の連携の司令塔的役割を弁護士が担い,高齢者をトータルかつ継続的に支援する「ホームロイヤー」を広めようというものです。
実は,原総合法律事務所でも,同じ問題意識から,新しいマーケティング戦略として,原総合法律事務所を核とした各専門家のネットワークを作ろうと考えていたところでした。「ホームロイヤー」は,まさに原総合法律事務所のいう「かかりつけ弁護士」です。
それをマニュアル化し,弁護士会として広げようという議論が始まっていたことは知りませんでした(長崎県弁護士会の会長に就いた後,日弁連の高齢者の委員会や高齢社会対策本部から離れてしまったもので。)。
また,最後についているケーススタディも使えそうです。

取り急ぎの感想でした。

2011/11/12

業革シンポジウム参加のお礼


<お礼編>日弁連弁護士業務改革シンポジウム参加のお礼

先ほど,昨日の横浜での日弁連第17回弁護士業務改革シンポジウムを無事終え,長崎に戻ってきました。

シンポジウムで得たことは,今後のこの法律事務所のマーケティングのブログに生かしていくとして,まずはブログを借りてのお礼です。
第一分科会「小規模法律事務所におけるマーケティング戦略~さらなる依頼者志向へ~」のパネリストとしての参加でしたが,シンポジウムを支えた運営委員の皆さん,パネルディスカッションをコーディネートしていただいた橋本先生,皆川先生,パネリストとして刺激的なお話しをうかがえた元榮先生,大山先生,堀先生,大木様,ありがとうございました。このシンポジウムで,また,法律事務所のマーケティングやマネジメントの新しい試みの種を見付けたような気がします(法律事務所のマネジメントについては,こちらで)。
そして,何よりも,パネリストに推していただいた(だけではなくて,交代していただいたのですが)小松先生,本当にありがとうございました。小松先生とつながることができたのが,原総合法律事務所の転機でした。(小松先生のシンポの記事です→参加者約2000名で第17回弁護士業務改革シンポ開催1

また,シンポジウムに参加された皆さん,お疲れ様でした。
かなり先鋭的な話しと思われたかもしれませんが,できれば,このブログを最初から読み返して,もう一度考えてみていただければ幸いです。「基本的人権の擁護と社会正義の実現」を徹底するために,法律事務所のあり方を考えていけば,法律事務所も変わっていかざるを得ないと考えています。
何人かの方からは,会場で直接感想もうかがいましたが,もっと感想を聞かせていただければ幸いです(このブログにはコメントできないので,原総合法律事務所のHPにある「お問い合せ」フォームをご利用ください。)。

ということで,弁護士のマーケティングのブログは,まだまだ続きます。

2011/11/06

18 法律事務所ブランディングの基礎


18 法律事務所のブランディング1-ブランディングの基礎

弁護士アクセス編「もっと身近な弁護士であるために」をいったん中断して,法律事務所のブランディングについて考えてみることにします。
11月11日の日弁連弁護士業務改革シンポジウム第1分科会にパネリストとして参加予定であることはアナウンスしましたが,事務所のブランディングもテーマなので,実はそのための準備です。)

原総合法律事務所では,2007年ころ,事務所のビジョンを考えるようになり,既に事務所の「ブランド化」を話題にしていたことをお話ししました。このブログの冒頭でしたが(02),「法律事務所にブランド???」と思いませんでしたか。
しかし,従来から,地域の有力な法律事務所は,その意識はなかったと思いますが,既に「ブランド」でした。
そう言われればそうかもしれないけれど,やっぱり法律事務所とブランドは馴染まないと思われた方,今回のブログは,そういう方が対象です。

ブランディングにも様々な意味付けがなされているようですが,差別化された価値の創造というのが共通項でしょうか。要するに,「ここは違うよなぁ。」と思わせることです。
「原総合法律事務所は違うよなぁ。」と思わせることで,原総合法律事務所の理念である「いつでも,どこでも,だれにでも 上質な法的サービスを。」広く市民に提供できるようになるわけです。更にいえば,「弁護士は違うよなぁ。」と思わせることができれば,全体としての弁護士へのアクセスが改善されるはずです。
弁護士,法律事務所(更には弁護士会,日弁連)のブランディングが必要な理由がここにあります。

そのために私が重要だと思っているのは,ストーリーヒストリーです(このフレーズ,さっき思いついたので,多分,本来の概念とは違います。念のため。)。

まず,ブランドにはストーリー=軸が必要です。事務所のビジョン・理念です。
そして,そのビジョン・理念の実践の歴史ヒストリーが必要です。

このブログでは,原総合法律事務所のビジョン・理念については,繰り返しふれてきたところですが,「実践の歴史」については,詳しくお話ししたことがありません。
そこで,原総合法律事務所がどのようなブランディングを行ってきたか,まず,「実践の歴史」を振り返ってみたいと思います。

原総合法律事務所は,1992年の設立以来,当初は,消費者関係の事件が業務の中心でした。地縁,血縁がないところでの開業でしたから,顧問や依頼者からの紹介の事件は少なく,法律相談センターからの受任や先輩弁護士からの紹介が主でした。
そのような事件の中には,結構,事実関係が面倒で,法律構成が難しく,でも少額の消費者関係の事件が数多くありました。例えば,クレジットの名義貸しだったり,先物取引だったり,過払いだったり(最高裁の判断が積み重ねられる前の過払い事件は,次々に出される未登載の下級審判決をフォロー,整理し,新しい法律構成も求められる「重たい」事件でした。),商工ローンだったり(日栄の引直し計算は独特でしたし,手形の取立てを止めるのも大変でした。商工ファンドの根保証も熾烈な主張,立証を繰り返していました。),そして破産・個人再生などです。
その「実践の歴史」の中で,原総合法律事務所は,消費者問題について,差別化,専門化し,消費生活相談員との信頼も築いていきました。

次いで,2000年ころから,高齢者関係の委員会に所属し,高齢者に関わる専門職や福祉関係者,行政とのネットワークにも積極的に参加し,高齢者関係の事件も扱うようになってきました。
その間,2008年度には日弁連高齢者・障害者の権利に関する委員会副委員長も経験する「実践の歴史」の中で,福祉に関わる機関や個人との信頼も築いてきました。

また,弁護士になった当初から,医療過誤にも患者側で積極的に取り組んできました。
この10年くらいは,事務所独自で医学文献を揃え,データベースにもアクセスできる環境を作り,また,医師との関係も作っていく「実践の歴史」の中で,医療過誤についても信頼を築いてきました。
その結果,最近は,常時10~15件の医療過誤を扱っています。

その医学的な蓄積を前提に,交通事故にも被害者側で取り組んできましたが,特に,傷病との因果関係や治療の必要性など,原総合法律事務所の知識と経験が有効です。
そこで,2011年8月,交通事故専門の相談窓口をスタートし,県や市の交通事故相談員との勉強会なども行い,ここでも差別化と信頼を得つつあります。その結果,最近は,交通事故だけで月に10~20件の新件相談を受けています。

そして,私のこれまでの弁護士業務のかなりの部分を占めたのが,原爆症認定訴訟です。私が弁護士になった1988年,長崎原爆松谷訴訟が提訴されますが,この事件で,2000年,最高裁がはじめて原爆症認定訴訟で被爆者勝訴の判断を示し,その後の集団訴訟の被爆者勝訴の流れを決定づけたのです。私は,20年余にわたり,この原爆症認定訴訟に関わり,最後は長崎弁護団の事務局長として,訴訟の実務面を取りまとめました。
この事件の中心にいたことは,被爆地長崎では特別な意味を持ち,信頼,そして事務所のブランディングにおいても意味がありました。

このような事務所の軸=理念(ストーリー)に貫かれた実践の歴史(ヒストリー)が,原総合法律事務所の現在のブランド力を支えているのです。

しかし,このブランド力も,広く市民,中小企業に伝わらなければ,原総合法律事務所の理念である「いつでも,どこでも,だれにでも 上質な法的サービスを。」広く市民,中小企業に提供できることとはなりません。
そこには,アピールの工夫が必要となります。
(続く)

* 平行して,マネージャーのブログでも,現在,ブランディングがテーマになっています。ご参照ください。こちら→オフ編ながらのブランディングのススメ同ver2同ver3

2011/11/03

法律事務所のイメージポスター?


<番外編3>法律事務所のイメージポスター?

以前,原総合法律事務所では,ポスターを作っていることを,その写真と一緒に紹介しました(08)。
「法律事務所にポスター???」と思われた方も多いかと思いますが,要は,見た人に事務所のイメージを残すことです。そのイメージが残っていれば,いつか法的トラブルに遭ったときに,事務所のことを思い出して,相談してみようかとなります(広報の効果「タイプⅠ かなり間接的」なやつです。06)。
とは言いつつ,そこら中に貼り出す勇気はなく,JR長崎駅前広場に貼り出しただけでした。でも,乗降客は多いので,結構目にとまっていたようです(「ポスター見ました。」と言われることがありました。)。



あわせて,最近は,広報のイメージを,よりシャープなものとし,色調をよりシンプルにグレー基調にしていることを紹介しました(08)。それも,インパクトを狙ってのことです。

この方向を徹底すると,イメージポスターにたどり着きます。
法律事務所のイメージポスターなど,聞いたことがないと思いますが,これも法律事務所のマーケティングの一手法です。
実際には,こんな感じです。


漢字版も並べて貼ると効果的です。



今のところは,事務所内の受付や相談室に貼り出しているだけですが,一部には好評です。ポスターなど,どうせ見過ごされるのが宿命の広報媒体ですから,一部でも好評であれば,目的は十分達しています。
かつ,このポスターのセンスに共感する人は,多分,原総合法律事務所の「熱い」ファンになってもらえる人と思ってもいるのです。結構,こういった感性は,選択(いくつかの法律事務所からどれを選ぶか)のポイントです(少なくとも私の場合は。)。
そこで,現在,原総合法律事務所のHPも,このポスターのイメージに変更中です。

ロゴをブランドイメージにする例は法律事務所でも出てきましたが,原総合法律事務所では,更に進んで,全ての広報のデザインもブランドイメージに位置付けています。

まさに,イメージだけのブログでした。

(追記 2011/11/04)
マネージャーの法律事務所のマネジメントのブログでも,その狙いがテーマになっています。→「オフ編ながらのブランディングのススメ